2010-04-28

見仏記 ゴールデンガイド篇 : いとうせいこう・みうらじゅん

 久しぶりの『見仏記』。マイナーには走らず、マニアックを封印し、メジャーどころにしぼる「ゴールデンガイド篇」・・・と、奈良・京都からスタートした旅だけど、そんな看板を放り出して?お二人は曇天の会津若松を実にしんみりと彷徨ったりするのだ、結局。

 そして、今回の見仏はこれまでになく宗教的。かつてのハシャギっぷりは影をひそめ、男40代、それぞれに噛みしめるものがありながらの旅。

 とめどない妄想も暴走するイメージもやや抑え気味。己が思考渦巻く世界から仏を見るのではなく、ただ仏の世界に身を委ねる。見仏スタイルも、発想・発信から受信へとシフトしているようだ。

 旅の終わり、黄金の夕日に照らされる二人。次の旅はどんなものになるのかなぁ。

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genre : 本・雑誌

2010-04-24

[増補]書を読んで羊を失う : 鶴ヶ谷真一

 私の本とのつきあい方といえば、ページを開いてから閉じるまでのエンターテイメントとして楽しむという風で、読みながら、又は読み終えた後で内容をゆっくりじっくりかみしめるというとこは疎かだし、書物自体への愛情、興味、所有欲や、その書物を書いた人の人となりなどへの関心も薄い。読み終えた本はバッサバッサとブックオフ行きだったりする。

 そんな自分の淡白で貧弱な本との関り方が残念にも恥ずかしくも思えてくる、人に愛された書物と書物を愛した人との間に生まれた数々の深く、愛しく、豊かな物語を丁寧に辿るエッセイ。

 以前、出雲の小泉八雲記念館で、八雲が使っていた机のレプリカを見たのだが、その机は一般的な机よりも天板の位置がかなり高く、目の悪い八雲はその背の高い机に本を置き、目を擦り付けるようにして読んだという。愛しいといえば良いのか、切ないといえばいいのか、少し胸が痛むように懐かしく、豊かで幸せな・・・このエッセイを読んでいるときに私の胸を満たしていた心持ちを何と言えば良いのかわからないが・・・、それはあの八雲の机を見たときにわきあがって来た気持ちとよく似ている。

 「ページのめくり方、東西」「出会い」「すれ違い」「草木の名」「失われた本」「本占い」「記憶術」「近視」「多読」「精読」「盲目」「シンデレラの変貌」・・・ 古今東西、人と書物の間の愛すべき逸話たち。とても上質な時間を与えてくれた一冊。

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genre : 本・雑誌

2010-04-21

人間豹 : 江戸川乱歩

「ハハハ……、やっと分かったか。お察しの通りだよ。
    君をこんな目に合わせる人間は僕の外にはありゃしないよ。


 んんん~~~・・・ 是非とも本仁戻さんの絵柄で吐いてもらいたい台詞だ。

 押えきれない興奮と悦びをもって相手を追い詰め、自分の足下に屈服させる ~ そんなことをする自分が相手にとっての唯一無二の存在であるという自負と陶酔。危険で挑発的な言葉の中にひとすじ流れる甘美な震え。

 穂村弘氏のエッセイ「来たれ好敵手」『整形前夜』収録)で引用されていたこの台詞に見事胸を撃ち抜かれ、たまらず手に取った『人間豹』。ああ、いったい・・・稀代の名探偵・明智小五郎と、彼をかつてない窮地に追い詰める殺人鬼・恩田の間で、どんなに妖しく危険な感情が人知れず交わされ、ゆらめいていることだろうか・・・。不埒な妄想を膨らませながら、二人のプライドと命を賭けた火花散る駆け引きを読み進めたけど、変装・人形・秘密の探偵道具を駆使した戦いはうっすらとバカバカしさが漂い・・・ムフムフするようなアヤシイゆらめきはなかったぁ。残念だ。

 美女を攫っては無残に殺し、町を恐怖に落としいれ、明智を絶体絶命のピンチに追い込む犯罪者・恩田父子。しかし、そのあまりに着地点の見えない行動に、明智探偵の相棒・中村警部には『よっぽど、豹の好きなおやじだと見える。』っていう、あんまりな一言を吐かれちゃうんだ! そもそも、人間豹・恩田って、ただの毛深くて、歯並びの悪いだけの男なのか、何か暗い出生の秘密でもあるのか? そのへん放ったらかしですから、ただのぬいぐるみマニアなアブナイ親子にしか見えない。

 で、しかも、ず~っと豹押しできておいて最後は虎なのかよ!(その真相のズッコケぶりが凄い)っていう・・・。まあ、それも乱歩風味。

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genre : 本・雑誌

2010-04-17

整形前夜 : 穂村弘

「貴様、変装しているんだな。分かったぞ、貴様明智だろう。明智小五郎だろう」

「ハハハ……、やっと分かったか。お察しの通りだよ。君をこんな目に合わせる人間は僕の外にはありやしないよ。」    『人間豹』 江戸川乱歩


 ・・・なんという・・・。あぁ、これは、なんという・・・。

 パラパラとページを捲っている段階で、目に飛び込んできたこの言葉・・・「来れ好敵手」というエッセイ(乱歩の全集に寄せられたものらしい)の中で引用された『人間豹』のこの一節に、もう・・・胸を撃ち抜かれてしまったのだよ。

 殺人鬼・恩田とそれを追う探偵・明智小五郎の間に交わされる台詞の、何と危険で甘美なことか! 

 この台詞を目にしてしまった後では・・・、穂村氏には申し訳ないが、他の言葉はもう随分とうっすらとしか見えないのだよ。


 ・・・とは言っても、やはりドキンとさせられるのは、穂村氏が持つ「世界」の感覚。ただ『生き延びる』ためだけの現実=『生活世界』に違和感を感じ続ける『異次元への憧れマニア』穂村氏には、はっきりと存在が感じられるもう一つの世界があるらしい。穂村氏に限らず、『生活世界』とはズレた世界をまとっている人がいる。私には見えようのない世界だが。

「フィリップ・マーロウ」には「しっかりしていなかったら、生きていられない。やさしくなれなかったら、生きている資格がない」(『プレイバック』)という有名な台詞があるが、私はそれに加えてもうひとつ、「桃色の虫」が見え、幻の「鐘」が聞こえなければ、「生きている意味がない」と思うのだ。



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2010-04-14

百けん先生 月を踏む : 久世光彦

 久世氏が夢想する昭和二十二、三年頃、小田原・・・古寺の仏具小屋に棲みついた百けん先生と、小坊主・果林の奇妙な日々。

 山腹の<経国寺>、海に近い<抹香町>の娼家<碇屋>、饂飩を食わせる食堂<達留満>の間を行きつ戻りつしながら百けん先生が書く、流れ出た夢のような作中作には、内田百間のシュールと久世光彦の感傷が入り混じる。

 長い別れの予感に似た不吉さを湛えた、怖いような懐かしさと倒錯気味な幸福感に、少し・・・胸をかきむしられるような気がする。

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genre : 本・雑誌

2010-04-10

スプーンマン 上 : 浅田寅ヲ

 南に行こう・・・。俺の友達レインは15歳の時に、教室にいた同級生を銃で皆殺しにした。それ以来俺たちはいつか南に行くことを夢見て旅を続けてる。


 「上」とあるが「下」は無い。未完なのは残念だが、この純粋すぎるハートを持つ三人 ~ 子供のような大人と、大人のような子供と、二人を守っているようで守られてる保護者は、結末を迎えるよりも、いつまでも旅の途中であってくれた方がいいのかもしれない。

 いつもながら、画面に同調するまでに少し時間がかかる。でも一瞬、フッと波長が合った瞬間に、静まり返った部屋の中に流れるTVの砂嵐の音が、その部屋の空気感がまざまざと感じられてビクッとする。 

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genre : 本・雑誌

2010-04-07

こどもの一生 : 中島らも

 同名の芝居の脚本を小説化したもの。瀬戸内海に浮かぶ亀島。この小さな島にはサイコセラピーのクリニックがあり、5人の患者が治療を受けている。ここでは薬と催眠により、精神的な傷を負っていない10歳児の状態に戻って暮らすという治療法が試みられている。10歳児に戻った“こども”たちは架空の人物「山田のおじさん」をつくりあげる遊びを思いつき熱中するが・・・

 “ピンポーン”  

 ある台風の夜、チャイムが鳴り・・・ そこには「山田のおじさん」が・・・
 

 “最初面白くて後半怖い”という情報が事前にインプットされていたせいか、前半のギャグの部分から一転ホラーになっていくその落差は、期待していたほどではない・・・というか・・・

 確かに後半は怒涛のB級ホラー的に怖い。でも、“楽しく、笑いに満ちた”部分であるはずの前半も薄ら怖いのだ。

 レジャーランド建設用地の下見のためにこの島に来たはずの三友と柿崎が、クリニックを訪ねた途端に患者になっていること。患者の食事に必ず入っているキノコ。絶対怒らない看護師・井出ちゃん。10歳のいじめっ子と化した三友の、同じく10歳児化した患者EMIちゃんに対する嫌がらせのエグさ加減。いじめっ子・三友を“せいしんてきにいためつける”ための手段として他の子供達が考え出した「山田のおじさんごっこ」。どれもうっすらといや~な感じを出していて、間に挟まれたギャグにもとても楽しく笑う気になれないのだけど・・・。みんな本当にここで笑うんだろうか? 芝居で見ると印象が違うのかな?

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2010-04-03

新釈 走れメロス 他四篇 : 森見登美彦

 読む毎に“一筋縄じゃいかんなぁ”という思いが強くなる森見登美彦氏。

 『山月記』『薮の中』『走れメロス』『桜の森の満開の下』『百物語』・・・すべて、京都に住む腐れ大学生の話として書き直される。各話に登場する学生たちは互いにいくつかの出来事を共有する、うっすら顔見知りな間柄である。

 そんな学生達の極小の世界のふとした暗がりに、果てしない宇宙が口をあけているのがちらりと見えるような気にさせる。う~ん、森見マジック。

 自負と懐疑の中で大文字山へ走り、遂には天狗へと姿を変じた孤高の学生。自主制作映画「屋上」の真相は薮の中。二人の偏屈者の間の阿呆すぎる友情。満開の桜の下の何やら正体の定かでない怖ろしさ。百物語に集まった人々を見る血走った目。

 苦悩、絶望、焦燥、友情、滑稽、孤独、恐怖。

 文豪たちの短篇より森見氏が抽出したエッセンスが偏屈学生たちの七転八倒にまみれて、口あたりは優しいが味は濃厚。

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