2009-11-28

天王船 : 宇月原晴明

 松永久秀を西方の暗殺秘術を受け継ぐ妖人として、異形の戦国史を描いた長編「黎明に叛くもの」の外伝となる短篇集。

「隠岐黒」
 秘術「波山の法」を修め、暗殺者として都に生きる庄五郎と久七郎・・・少年の日の斉藤道三と松永久秀。

「天王船」
 津島天王祭の宵祭、天王川に現れた妖しき船。おびただしい数の提灯の光に照らされ、煌びやかに浮かび上がる船上に舞う異形のもの。

「神器導く」
 信長の死の影に、死して尚蠢く松永久秀の思惑。秀吉の「中国大返し」の裏に秘められた真実。小早川隆景が魅力的に描かれる。

「波山の街-『東方見聞録』異聞」
 フビライ・ハーンの身近に仕えたマルコ・ポーロが、華南の街で目にした戦慄の光景。波斯の暗殺秘術を伝える果心の一族と、微笑みを浮かべたまま殺戮する美しく残忍な少女人形。


 表題作「天王船」 ~ 少年・信長と妖人・久秀の出会いを描いたこの幻想的な一編は、夢のように美しく、通り魔のように不穏。

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2009-11-25

黎明に叛くもの : 宇月原晴明

 松永久秀 - 『信長より過激、道三よりしたたか ― 戦国一婆娑羅な悪党』という謳い文句から想像するのは、妖しく禍々しく都に跳梁する美オヤジの姿だったが・・・。遥か西方より伝わる妖術・波山の法を操り、綺羅星の如き乱世の英雄達を相手に策をめぐらす華奢で小柄な美ジジイは、まるで一人遊びに興じる幼子のようにかわいらしく、無心。

 同じ波山の法を伝える兄弟子・斉藤道三が久秀を評して語った傍若無人~傍らに人無きが若し~という言葉が、久秀の純粋さと孤独をピタリと言い当てている。

 傍若無人・・・人を人とも思わぬ悪辣非道というのではない。自らが王である自らの内なる世界の他に世界があることを認め得ぬ、ただ自らの世界に遊ぶいたいけな幼子。

 金髪碧眼美少女の如き傀儡・果心のみを伴に(友に)独り戦場を駆ける姿はいじらしくすらある。


 他を圧倒して世に輝く日輪・信長の光に否応もなく飲み込まれようとする運命を、最期まで認めなかった久秀。その生は、己のみを自らの主人とし、自らの光のみを恃みとして、昇り来る日輪に叛き続けた明けの明星。

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genre : 本・雑誌

2009-11-21

乱世、夢幻の如し : 津本陽

 ん・・・思っていたよりつまんない。

 顔が良くて性格がえげつない男、乱世の梟雄・松永久秀の生涯!な訳だし、「乱世、夢幻の如し」なんて大仰なタイトルついてるし、相当ギラギラ、ギトギト、油っこい話を期待していたんだけども・・・ 意外にも淡白というか、一本調子というか・・・。

 何年何月、どこぞの武将とどこぞの武将が戦って、焼き討ち、殺戮、略奪、狼藉。昨日の敵は今日の友、今日の友は明日の敵ってなもんで、同盟と裏切り寝返りを繰り返し、今度は敵味方のメンバー入れ替わって、やっぱり焼き討ち、殺戮、乱暴狼藉。ストーリーの2/3くらいは敵味方入れ替わり立ち代りの戦闘の記録が延々書き連ねられる。

 戦国時代ってそういうもんだと言ってしまえばそうかも知れないけど・・・あまりにも描写が一本調子で飽きる。

 実際、久秀の時代は目先の利得を争っての、仁義も思想もない戦闘が繰り返されていただけなのかも知れないなぁ。時代が大きく転換するのはもう少し後のこと。この小説も、信長が登場したあたりから俄然展開がダイナミックになってくるもの。

 やはり信長の露払いなのか・・・松永久秀。

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2009-11-18

果心居士の幻術 他 : 司馬遼太郎

 越後の上杉、甲斐の武田に仕えたものの、謙信にはその技をむしろ気味悪がられ、信玄には結局命をとられてしまった飛び加藤(「飛び加藤」)。松永久秀の下で信長の命を狙った果心居士(「果心居士の幻術」)。石川本願寺の戦力となった雑賀の鉄砲衆(「雑賀の船鉄砲」)。信長を脅かす武田方の忍者・知道軒道人と家康が放つ服部半蔵(「忍者四貫目の死」。

 特異な戦闘力と不思議な術を持ち、戦場で活躍・暗躍する忍や鉄砲衆だが、その姿を語る話はドラマチックでもヒロイックでもなく、しょぼしょぼとして泥臭い。

 時代は戦国の乱世。戦場は血なまぐさく、残酷、非情。しかしシバリョー描く異能の忍たちには、どこかあっけらかんとした明るさ、のほほんとした可笑し味がある。白々と天日に晒されたような乾いた感触が残った。

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2009-11-14

耽美主義 : 本仁戻

~ 美。 最高にして至上のもの。 ~

『ヴィスコンティの映画のように』
 美に絶望し美を捨てた作家・宝条紫乃と、作家の美を崇拝する青年。

『ロマンティック』
 刹那的で破滅的な若き子爵と、美しいドイツ人執事。

『浄められた夜』
 罪に裏打された愛を抱きあう義兄と義弟。

 善悪も、生死も、愛も憎しみも超えて、ただ美しいものを渇望し、美に耽り、蹂躙され、美しいものに捧げられることを望むもの。

 「耽美主義」・・・あとがきには、「この人きっと中二病なんだわ」とでも思ってくれと書かれているけど、このタイトルで通す気迫に寄り切られそうです。

 しかし、私としては、完全に美の彼岸にイッっちゃった耽美主義者よりも、一線を越えられない臆病者の方が愛しいのです。

 だから、子爵の「皆殺しだ!」も素敵ですが、美を求めて美を得られず、美を捨てて美につきまとわれる、下半身の偽悪者・紫乃さんがイイのです。

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2009-11-11

夢幻紳士 回帰篇 : 高橋葉介

 '80年代に「メディウム」等に連載されていた「夢幻紳士 怪奇篇」のリメイク。

 「新装版 夢幻外伝」のあとがきに

 全て今の絵で描き直してみたら、どんな作品になるか自分でも見てみたいものです。
 もっともそんな仕事は来ないでしょう。「同じアイディアで、楽にもう一仕事したいだけだろ?」と言われるだけですね。


 と冗談めかして書かれていたことを、本当にやってしまったのですね。

 同じネタで書くわけだから、かなり趣向を変えて楽しませてくれるのだろうと期待していたんだけど、絵柄以外はわりと“そのまんま”で少しがっかり。

 『吸血鬼』『木精』『蜘蛛』『幽霊船』はわずかに設定や雰囲気、話の運びを変えてあるけど、海を漂う船の幻想性を強調して、長く見てきた夢の終わりを告げるエピソードとして、巻末に置かれた『幽霊船』以外は・・・

『吸血鬼』
 「怪奇篇」・・・“吸血鬼”から、犠牲になった“ご婦人”を取り返すために、妖しげな婆さんの作った水晶玉を使用。さらに、取り返した“ご婦人”を依頼人である少女に返した後、少女から「鬼!」と言われるような振る舞いをしている魔実也氏。

 「回帰篇」・・・魔実也氏自身の能力で、“ご婦人”を取り返してます。キメ台詞「馬鹿め お前に出来る事は僕にだって出来るのだ!!」

『木精』
 木精にとりつかれた男の死の話であるけれども・・・
 「怪奇篇」・・・男と魔実也の間にほんの数回ではあるけど交流あり。

 「回帰篇」・・・男の死は、男と魔実也が出遭ったその日の出来事になってる。

『蜘蛛』
 「怪奇篇」・・・美しく怖ろしい蜘蛛女から危うく救われたいたいけな少女が、実は蜘蛛へと育っていく芽をその身に秘めている。

 「回帰篇」・・・最初から少女の方が蜘蛛女よりも一枚上手。

 ・・・どれも、リメイク前の雰囲気の方が好きなのです。

 魔実也氏のキャラクターにしても・・・「怪奇篇」の魔実也氏は、魔物に限りなく近いけれど、恩師も先輩も友人もいて、現実の青年としての存在感もある。基本的に女には甘いが、きまぐれに鬼畜である。一方、「回帰篇」では、魔実也氏の現実的な生活感を感じさせる部分がかなり削ぎ取られていて(『沼』の中で、「怪奇篇」にはあった魔実也氏と宿の女中の会話 ~沼に向かう魔実也氏は、自殺を疑われて、宿代を前払いさせられている~ が削られているのも、その為だろうな、ページ数の都合もあったかもしれないけど。)何だか実体のない、闇と夢から生まれたような男。これは好みもあるけれど、存在の色っぽさでも「怪奇篇」の魔実也氏に軍配が上がる。

 まぁ、何だかんだ言って、「メディウム」掲載当時の絵が一番好きだっていうのが、「回帰篇」に満足できない理由なんだけど。

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2009-11-07

お変わりないか お姫様たち!! ~ 夢幻紳士 迷宮篇 : 高橋葉介

 「幻想篇」の後日譚。迷宮というよりも、少々迷走しているような・・・。

 「あの男が憎い。あの男が欲しい。ああああ 憎い。生かしておけぬ。」 夢幻魔実也に向けられる激しい殺意! 感染する殺意に追い詰められる夢幻紳士! 

 夢幻魔実也の命を狙う張本人は誰なのか?! 身に覚えがありすぎて、狙われてる本人にさえその正体が分かりません。魔実也氏困惑気味。

 人の夢を渡り歩き、絡まる謎の源へ~ 夢の少女の力を借りて(裏切られたりもされつつ)遂につきとめた悪意の正体! 夢の奥底に蟠る邪悪な怪物を八つ裂きに引き裂いて、お姫様たちも大喜びのちょっとダークな大団円。

 ・・・なのだけど

 女の子たちが心の中で思いさえすれば、いつでもどこでも何度でも、彼女たちの夢に現れ、彼女たちの望む通りの振る舞いをする魔実也氏。魔実也氏が人の夢を渡り歩いているんじゃなくて・・・ 女の子たちの夢の迷宮に魔実也氏の方が閉じ込められちゃってるんじゃないか? まぁ、女性に甘い魔実也氏なら、気まぐれにそのくらいのサーヴィスはしてくれるのかしらん?


 帯に書かれた「夢幻魔実也 完結!」の文字に胸がキュンと切なくなる。女の子なら謎めいた黒衣の騎士といつまでも一緒に行きたいと思うものさ。それでも、これでしばしお別れ。次にまた、あの名乗りが聞ける時まで。

「僕の名は夢幻魔実也というのですよ」

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2009-11-04

僕の名は夢幻魔実也というのですよ ~ 夢幻紳士 逢魔篇 : 高橋葉介

 「幻想篇」のラストシーン ~ 「僕の名は夢幻魔実也というのですよ。」・・・すっかり本来の姿を取り戻した“僕”に向かって、黒衣の男が名乗りをあげる。あの、ミステリアスで美しい男が自分にも名乗ってくれないものだろうか・・・ その誘惑にひかれて、怪しのものたちが魔実也のもとに現れる。自殺女に、首かじりの妖怪に、先見をする女芸人「手の目」・・・。

 料亭の座敷にとぐろを巻いて、酒をちびりちびりとやりながら、次々とやってくる妖怪変化を“ぎゃふん”と言わす。「逢魔」の「魔」は「魔実也」の「魔」。

 いつもは妖艶な流し目か冷たい笑いで事に当たる魔実也氏が、胸ペッタンコであきらかに守備範囲外の「手の目」にペースを乱されて、人らしい表情を垣間見せるのが面白い、人でなしのくせに。


 百鬼夜行は一夜の夢。また誰かの夢の中へと、夢幻魔実也は去っていくのであります。

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