2009-05-30

GOEMON

「GOEMON」 監督:紀里谷和明

 信長役の橋之助さんが・・・よ、予想以上にカッコイイ!!!!!

 西洋風の甲冑を纏う姿、無造作っぽく計算されたヘアスタイル、穏やかな目に漲らせた底知れない強さ。王者の気品と風格、鬼神の殺気、威圧感! テレビ・舞台・・・これまで見た橋之助さんの中で一番カッコイイ。惚れ惚れ。

 人の顔や体の何処をどう隠して、どういう風にプロポーションを作るとキャラクターとして色っぽくなるか・・・橋之助さんだけでなく、登場人物たちの衣装、実に細かく計算されてる感じ。俳優陣も、衣装に負けぬ堂々たる見栄えの人たちばかり。特に、千利休・平幹二朗・・・存在感が独特で、何かもう、画面に映るだけで震えがくる。

 作り物っぽい景色は大好きなので、国籍も時代もミックスされたような空間にはワクワクさせられたんだけど・・・ 細部は細かく描き込まれてるものの、その映像によって全体としてどんな世界観を構築しようとしているのか・・・私には解りづらかった。


 肥大する欲のままに突き進む者。己の弱さの為に、大きな悲しみに遭う者。自分の活きる場所を見つけられずにいる者。そんな者達のあふれる中で、自由を求めた五右衛門。大盗賊石川五右衛門の正体、真の姿を新たに描くことで語りなおされる、織田信長、豊臣秀吉、石田三成、徳川家康らの天下取りの戦い。

 歴史と虚構が縦横にからまる。人々が幸せに暮らす、戦の無い世界への願い。未来へ託す希望。~前作「CASSHERN」では、「人はなぜ争うのか」というテーマの提示のされ方があまりにもストレートすぎると感じられる部分もあったけれど、「GOEMON」は、戦国の世を舞台としたことで、テーマがストーリーの中に自然に溶け込んだんじゃないかなぁ?

 でもね、私は「CASSHERN」の方が好きだなぁ。

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2009-05-27

THE CODE/暗号

「THE CODE/暗号」  監督:林海象

 そもそものきっかけは佐野史郎だった。映画「帝都物語」で異様な存在感を振り撒いていた佐野史郎に一撃で夢中になってしまい、彼の初主演作だという「夢みるように眠りたい」を探し求めたのだ。それ以来、林海象作品のファンにもなった。「二十世紀少年読本」「ZIPANG」「濱マイクシリーズ」・・・。


 「探偵事務所5」シリーズはネット配信分もあまり見ていなかったのだが・・・林海象監督の映画、やっぱり好きだ。
 
 品の良いノスタルジーと、鼻の奥にツンとした哀しさを残す可笑しみ。


 暗号解読のプロセスをじっくりと楽しませてくれる話かと思っていたが、暗号を解くことよりも、「暗号解読者(もしくは人類)にとって暗号とは何か」という問題がキーになっていたようだ。

 ヒロインの稲盛いずみ、とても奇麗だったけど、不幸を笠にきたワガママ女ぶりには、ちょっと感情移入できない。むしろ、女優より睫長くてバッサバサの菊之助に見蕩れる。

 古風でありながら何処と無く人工的な感じもする菊之助の容貌は、林海象作品に良く似合う。(古風かつ人工的という同じ理由で、鰐淵晴子、佐野史郎も林作品にはやはり欠かせないと思う。)

 菊之助も良いのだけれど、私が胸をギュっとつかまれたのは宍戸錠!

 隠しようもないほどに老いていて、動きに覚束ないところはあるし、目にも往時の(と言っても、私は氏の往時を知らないが)強さは無い。それでも、白いスーツを着込んで、ガンベルトを腰に巻き、あくまでも格好良い男を演じるのだ。スクリーンの中と外を超越した存在・・・「エースのジョー」というプライドと使命を背負った老俳優の放つ残照の前では、若い役者たちの光も翳んでしまう。

 物悲しいけれど、輝いていて、愛しい・・・林海象作品のテイストを一身に背負ったような役だった。

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theme : 映画感想
genre : 映画

2009-05-23

千利休 : 清原なつの

 清原なつのさんの漫画は、しみじみしているけど激しくて、ユーモアがあって好きなのです。

 茶人・千宗易(利休)の伝記漫画ですが、茶道の知識も経験も無い私は、茶の湯の側から見た戦国時代のお話として読みました。茶の湯と権力ががっちりからんだ時期ですから、戦国武将たちの攻防・興亡のストーリーとしても面白く読めます。

 戦国時代の茶人のトップまで上り詰めた宗易。時の権力者の最も近いところに居て、彼自身ガッツリ権力と金を握っていたんですよね。あっさり、すっきりとした絵で描かれるので、あまりあからさまな感じはしませんが、宗易のギラギラした野心、強烈な自己実現欲は怖ろしいほどです。

 私が死ねば私の茶は終わるよ
 戦国の茶は終わる

 私が生きた戦国時代は 自分の才覚で
 身分という宿命からさえも自由になれた時代だ
 私は私の美意識にしたがうことにした



***

 この漫画、信長がとても魅力的に描かれてます。堂々たる権力者。美男子で着ている小袖や袴の柄もお洒落。『信長公記』の記述を元に清原氏描く馬揃えでの信長の扮装 ~ 眉をきれいに引き、錦の小袖に紅緞子の肩衣。腰まわりは白い毛皮と牡丹の造花で飾り、襟には梅の枝を刺しての馬上の行進。 ~ この扮装が似合っていた!というなら、「信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス」に云う、美少女のような信長っていうのにも頷けます。

 それに比べて秀吉にはちょっと冷たい?清原氏。前半なんて特に、サル顔っていうレベルじゃなくて、ただのサルです。もう少し人間あつかいしてあげて下さい。

 しかし、さらに酷い扱い受けてるのが光秀。何か恨みがあるとしか思えない仕打ち。ただの不細工で凡庸な男になっちゃってます。信長や秀吉に関しては、権力者としての胸の内を吐露させたりしているんですが、光秀に関しては彼が何を考えていたかなんてお構いなし。バッサリです。余程の信長贔屓なのか、清原氏。

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genre : 本・雑誌

2009-05-20

江南行 : 佐々木泉

 帯に「静謐で優しい三国志コミック」とあった。魯粛を主人公に、じっくりと呉の国、呉の人々を描いた漫画。

 魯粛といえば・・・アクの強い諸葛亮、曲者劉備、頑固な孫権、プライドの高い周喩の間で、散々苦労させられ気を揉まされた良く気のつく好人物ってイメージだったんだけど・・・ ここでは彼自身かなり型破りな自由人で、周囲を困惑させたりしてる。周喩との交流が微笑ましくも熱い。

 周喩は気の強い人物ではあるものの、見た目はほっそり女顔の佳人。兵士達の畏敬と憧憬と信頼を集める武将というよりも、兵らを慰め、また鼓舞する女神的なキャラになっちゃってる気が・・・。ちょっと女性的すぎるんじゃないかという違和感が拭えない。
 
 あくまでも呉が中心なので、諸葛亮の出番もちょっぴり。まったく底意地悪そうじゃない諸葛亮っていうのは私のイメージ外だったなぁ。この孔明は周喩に意地悪しそうにないし、周喩も孔明の意地悪で憤死しそうには見えないなぁ。

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theme : マンガ
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2009-05-16

信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス : 宇月原晴明

 口伝に曰く『信長公は両性具有(ふたなり)なり』と

 
 何だか魔術(マジック)を見せられているみたい。

 シリアの太陽神・バール信仰、<渡りの神)牛頭天王、黙示録、神話に語られる剣と石、信長に纏わる伝承、俗説・・・・・・。西方から流れてくる妖しげなモノどもに、東洋の東の果て・日本の戦国時代を掛け合わせると、何と! 美少女の姿をした信長が現れる。

 片や物語、片や論文 ~ 散在するピースを、物語を紡ぐ為に組み上げるか、真実を見つける為に配置していくか、という明らかな違いはあるけれど、ばらばらに散らばっていたピースが定められた場所に嵌っていくに従って、ひとつのストーリーが立ち上がってくるあたり、梅原猛の古代史に関する論文を読んでる時の感覚に似ている。

 
 バール=牛頭天王信仰を介して、信長に重ねられるローマの少年皇帝ヘリオガバルス ~ 統一と破壊の異常な情熱を持つ二人の王。そしてその情熱の残滓は、20世紀ヨーロッパに現れた、もう一人の“統一と破壊の王”へ。

 古代シリア、ローマ帝国、キリスト教世界、天竺から中国を経た仏教思想・・・ユーラシア大陸の歴史~時を、場所を自在に往還して物語は語られるのだけど、残念ながら私には西洋への関心と知識が決定的に欠けている為、多分その物語の半分くらいしか楽しめていない。ひたすら、異様な信長像を中心に描きなおされる戦国武将たちの戦いの顛末のみ貪り読んで、脳内モニターに映し出す。


 美しい少女のような信長・・・っていうのは、私の妄想力の限界を超えているが、毘沙門天の化身・堅物の謙信が、第六天魔王・信長に誘われた夢幻の中で殺される場面は、うっとりするような妖しい美しさ。

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2009-05-13

ごくらくちんみ : 杉浦日向子

 たたみいわし、とうふよう、にがうるか、じゅんさい、にこごり、ひずなます・・・数々の珍味と、それに合わせる種々の酒、酒器。そこに添えられる短いストーリーは、どれも少し辛口だ。

 時は否応無く流れる。“ずっとこのままで”と願ったものも、ゆっくりと形を変えていく。やがて動くことを止め、手の届かない所に行ってしまうもののある中で、生きているものは『それでも腹が空き、排泄し、眠くなる。』

さまざまの事思ひ出す桜かな(芭蕉)。
つまらん句だ。どこでも毎年桜は咲く。


 自分の為の肴と酒を選ぶことができるのと同じように、苦い時間を過ごす術を知っている人たち。

 ちょっぴり寂しいけれど、しっかり強い。

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2009-05-09

サクリファイス : 近藤史恵

 凄まじいスピードの中で、勝ちを競う競技でありながら、“勝たないこと”が求められ、讃えられるレースがある。
 
 有望な陸上選手でありながら、大きくなりすぎた“自分が勝つ事”の意味に嫌気がさし、自分が勝つためではなく、他の選手を勝たせる為に走ることができる自転車レースの世界に転身した白石。彼が共に走る、チーム・オッジのメンバー ~ 自分以外のエースを決して認めず、かつて有望な新人を事故を装い潰したという噂のある、チームのエース・石尾。次のエースを狙える立場にいる新人・伊庭。石尾のアシストとして働く先輩選手たち。

 忠実に石尾のアシストをしつつ、好成績をマークする白石。そんな白石に目をかけているらしい石尾。上を目指すことに貪欲な伊庭。石尾の周囲で渦巻く、アシストメンバー達の感情。

 チームメンバー達の心理的なサスペンデッド状態がストーリーの緊張感を後半までひっぱる。そして、起こってしまう悲劇。


 あまりメジャーとは言えないサイクルロードレースという競技の世界に読者を誘い込むドラマ作りや、二転三転する「サクリファイス」の真の意味・・・上手い!と思うが、読みやすい反面、もっと深いところまで見せて欲しいという欲求不満が残る。

 競技者に、完全な自己犠牲と、一方でその犠牲を全て踏みつけていく精神的負担を強いるサイクルロードレース ~ この上なく過酷でありながら、競技者を捕らえて放さないこの競技こそ、物語の主役と言ってもいいんじゃないだろうか? この競技の魅力、美しさと怖ろしさが、もっと、しっかり深いところまで描かれていれば、「サクリファイス」とは何だったのか、なぜ彼は「サクリファイス」となることを選んだのか・・・そういうところの意味がもっと際立ってきたのではないかと思う。

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2009-05-06

廃帝綺譚 : 宇月原晴明

 「安徳天皇漂海記」より連なる四つの短編。

 西海に沈んだ安徳帝の体を包み守る琥珀色の玉。その玉と同じ蜜色の光を放つ小珠を伝える大陸の皇帝たち。元最後の皇帝・順帝、明二代皇帝・建文帝、明末の崇禎帝。遥か昔に棄てられ流された日本の古の神の肉が変じたと伝えられる、蜜色に光る玉を介して、時も場所も超えてつながりあう廃帝たちの物語。

 追われ、流され、廃され・・・悲しみ、疲れ、荒ぶ皇帝たちの側にあって、夕日にも似た蜜色の光を溢れさす小さな玉。溢れる光の中に、廃帝たちは己の魂の求める場所を見たか・・・。


 「安徳天皇漂海記」から続く、この長い幻想譚を締め括る後鳥羽院の物語が特に良い。

 兄宮・安徳帝の身を包んだ真床追衾(まとこおうふすま)=水蛭子(ひるこ)の大玉に対する、淡島の小珠を手にした後鳥羽院。

 伊邪那岐・伊邪那美の第一・第二の御子として生まれながら、神の数に数えられることなく流された水蛭子、淡島、二柱の兄弟神のイメージを底に流し、神器と共に海に沈んだ安徳帝を背景に置きつつ、神器無くして即位した後鳥羽帝の、寄る辺のない心を幻想の中に描き出す。

 全てを失った後鳥羽院が、最後に拠り所とした歌をもって、実朝~日本の王として、荒ぶる安徳帝の魂を引き受け、自らの首をもって鎮めた鎌倉三代将軍に応えるクライマックスは、もう・・涙がほとばしります。


 この壮大な幻の物語・・・単なる絵空事 ~ 摩訶不思議な幻想譚、荒唐無稽な夢物語だと割り切ってしまうことができない。顕かには語られない秘められた歴史、秘められた物語としての真実味が胸を突く。

 教科書では何気なく目にしていた実朝・後鳥羽院の海の歌が、こんなにも荒々しい生命力、生々しい息づかい、哀しみを帯びた清々しさをもって迫ってくるとは!!!

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2009-05-02

安徳天皇漂海記 : 宇月原晴明

 最後の頁を閉じてしばし放心の後、号泣。 「実朝ォォォォォォ~!!!」

 第一部「源実朝篇」を読みながら、ふと、皇なつきさんが岡本綺堂の戯曲を元に描くところの「修善寺物語」~頼家の姿が頭をよぎる。皇なつきさんの手による二代将軍頼家は、気高く、激しく、そして、あわれに哀しかったけれど、この物語に描かれる三代将軍実朝の姿は、それに勝るとも劣らず美しく哀しい。

 自らの身の負った罪と、将軍とは名ばかりの己の無力さに苛まれながらも、この国を守ろうとした若き王。

 その実朝が自らの首を捧げて鎮めんとした荒ぶる魂。壇ノ浦の戦に敗れ、西海に沈んだ後も琥珀色の玉に包まれ、変わらぬ姿のまま生きつづける幼帝。

 第二部は「マルコ・ポーロ篇」。怨恨・絶望・無念・悲哀を呑んで、大海を漂う安徳帝の魂は、遥か大陸、クビライ・カーンの夢に現れ、滅び行く南宋の幼皇帝と交感する。


 一瞬の間に見た幻とも、遥かな神代から続く壮大な叙事詩ともつかぬ物語。妖しく輝く光に幻惑され、現と幻の間を大きくうねる大海の波に巻かれ、辿り着いたその先・・・

 しばしの放心。そして号泣。

 「実朝ォォォォォォゥ~~~~!!!!!」

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