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2008-07-30

博士の愛した数式 : 小川洋子

 小川氏の小説はしん・・・としている。光、色彩、匂いはふんだんに描かれ、鮮やかに感じることができる。もちろん街の音や人の生活音もあるはずなんだけど、なぜか生々しい音が耳に聞こえてこない。無声映画を見ているように、耳ではなく目で音を感じているような・・・。

 これまで読んだ作品では、その静かさが何か冷たく怖ろしいものに感じられたのだけど、本作の静かさは、明るさと暗さが混ざりながらも、決して冷たくはない。大きな声を出すと消えてしまうものを見つめる眼差しのような、真摯な静かさ。

 事故の後遺症のため80分間しか記憶が保てない数学者。彼が住む離れを訪れる家政婦とその幼い息子。ひっそりと存在するこの世の真実を書きとめた数式をちりばめながら描かれる三人の交流。

 
 純粋なものに触れたとき、どうして心はこんなにも柔らかく、無防備になるのか?

 これまで見えていなかったものを発見する驚きと喜び、それによって生まれた新しく、豊かな意味に浸されるという祝福。

 発見されていなくても、記憶されていなくても、間違いなくこの世界に在るものの存在を想うことの、祈るような美しさ。

 博士と義姉が築いてきた想いは今、どこにあるのか?

 博士は何故、記憶を保てない人として物語に登場してきたのか?


 次から次に色んな想いがわいてきて、とてもひとつの言葉でまとめることが出来ない。すばらしい頭脳を持つ数学者なら、この想いも一つの数式で表してしまうだろうか?

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theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

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