2008-03-26
甘い蜜の部屋 : 森茉莉
藻羅という女には不思議な、心の中の部屋がある
あまりに印象的な冒頭の一文。少女・モイラと父・林作の、何人も入り込めない精神的密室での交わりは香り高く、ねっとりと蠱惑的な肌触りを持つが、並の精神しか持たない人には少々毒気がきつく悪酔いしてしまう。
魔的な美を持った少女・モイラと、思慮深く穏当な人柄の陰に悪魔の知性を持ったその父・林作。二人の悪魔が思うさまその力を振るい、善良な人々を引き裂き、踏みにじり、貪り尽くす。
何ものにも傷つけられない、一点の曇りもなく無垢な悪魔・モイラの無邪気な眼差しが、心のままの言動が周囲の人間を苦悩に落としいれ、破滅させていく様。そうして一人の人間を屠る度にさらにその力を強大にしていく悪魔・モイラのおぞましくも抗い難い美しさをもった姿。悪魔の誘惑と薄々はわかっていながら身を差し出し、蹂躙されることに苦しみと共に倒錯した喜びを感じる男達。悪魔の絶対的な力に魅せられ、額づく僕たちの心理。
繰り返し、執拗に描かれる、道徳や良心が何ほどの価値もなく悪魔の前に跪いてしまう世界は、ちょっとしたダーク・ファンタジーにも匹敵する。
・・・実はアジアン・ダーク・ファンタジーコミック「新暗行御史」と同時進行で読んでいたため、感想がかなり影響受けてしまってます。恐るべし「新暗行御史」。
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