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2007-07-25

人間失格 : 太宰治

 学生の頃から、夏の文庫フェアの時期になると、なぜか「人間失格」が読みたくなり、文庫を購入→結局読まずじまい→古本屋に売る→一年後の文庫フェアでまた読みたくなる→買う→以下ループ・・・ということを何年も繰り返していたのですが、今年遂に読みました。集英社文庫です。小畑健の表紙につられました。出版社の思惑に面白いように乗ってしまう私です。

 え~、私事ばかりで恐縮ですが、最近、好きな人のタイプに“恥じらいのある人”という項目が加わりました。自分が“間違っているかもしれない”ことを恐れている人にはどこか恥じらいがあります。その恥じらいがある限り、どんなに孤高の高みを目指そうと、どこかで切っ先が鈍ってしまうのか、あと一歩突き抜けることが出来ず、境界線付近でうろうろしている人を見ると、好ましいと思ってしまいます。

 「人間失格」の大部分を成す、葉蔵という男の手記。「恥の多い生涯を送ってきました。」で始まるこの手記に「恥」と「恥じらい」が似て非なるものであることを感じました。

 自分の心情、行動と世間との差異の中に生じる恐れが「恥じらい」で、世間並でない自分の心情、行動の醜さを自分で断じたものが「恥」であるように思います。外を見ずにはいられない視線から生まれる「恥じらい」。内に向けた目が生む「恥」。自分の行動を恥と断じる人の心には、恥じらいの入り込む余地は無いのではないか?などと私は思うのですが・・・。

 自分にとっては、世間や他人というものが、まったくわからず、怖ろしいものであると言い、常にお道化ることでそういうものに対処してきたと葉蔵は自嘲的に語りながら、そこにあるのは実は世間や他人への恥じらいではなく、お道化を演じる自分の内へ向けての「恥」という言葉。どこまでも自分自身に向けられた目。自意識の化け物。

 自意識の中で完結しようとする男には、私はもう何の手の出しようもなく、ただ、“あぁ~・・・”と鑑賞するしかないのです。

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