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2006-06-15

リンウッドテラスの心霊フィルム : 大槻ケンジ

『リンウッド・テラスの心霊フィルム―大槻ケンヂ詩集』

 ある時、たまたまつけたラジオで大槻ケンヂがしゃべっていました。その時は大槻ケンヂなんていう人も、彼がボーカルをつとめている筋肉少女帯というバンドのことも知らなかったのですが、中原中也の「曇天」を語ったり、自分のラジオ番組に「猟奇のコーナー」なんか作ってUFOや精神世界の不思議をしゃべりまくる彼に、あっという間にはまってしまいました。

 自分の中にぐちゃぐちゃ、どろどろとわけもわからない色々な衝動を抱えながらそれを表現する術を持たず、自閉的で暗い少年期を過ごしたという彼が吐き出すアブナイ言葉は、“私の感性はそこらへんの人とはちょっと違うのよ!”なんて思っている(その実、見かけも中身もとりたてて秀でているものなんてなかったのですが)私のような女の子にはとっても魅惑的だったわけで・・・。(当時はそんな女の子たちがはいて捨てるほどいましたね。その中にはもちろん、本当に秀でた感性を持った方もいたでしょう。)私の青春時代には熱に浮かされたように大槻ケンヂを追いかけた何年間かがありました。

 改めてこの詩集をパラパラとめくってみると、やはり大槻さんは詩人として稀有な才能を持っていて、“普通じゃない女の子になりたかったけど、やっぱり普通でしかない”私の胸をちくちくと刺します。この“ちくちく”は自嘲的な苦味をもって、熱にうかされたようだった少女時代へのノスタルジーと、やっぱりまだどこかにある特別な感性へのあこがれを刺激して、なんとも痛きもちよく、切なく、なさけないのです。

 この詩集の巻末には、稲川方人氏、大塚英志氏による「大槻ケンヂ論」が寄せられています。一度手放してしまっていたこの詩集をもう一度買い直したのは、大槻さんの詩はもちろんのこと、このお二方の評論をもう一度読みたいと思ったからでもあります。

「いつか行ったサーカスを」 稲川方人 
 的確でしかも美しく流れる言葉で、大槻ケンヂと、私もその片隅に身をおいていた、筋肉少女帯をとりまく空間を論じる稲川氏の目線が暖かくて、それだけで大槻ファンとしてはちょっと目頭があつくなってしまいます。熱病にかかったように大槻ケンヂと筋少を追い掛け回していた時期が終わって、懐かしくその頃を思い出している今を、稲川氏の言葉は予言していたようで、なおさら心に染み入ります。

「笛吹き男のいいわけについて」 大塚英志 
 大槻ケンヂは言葉巧みに子供たちをありもしない「約束の地」へと誘う「笛吹き男」であり、しかもそのことに自覚的であるという論旨。子供たちを欺くための罪を背負った言葉・・・それが大槻ケンヂの詩であり、大槻ケンヂと筋肉少女帯に躍らされ、そしていずれそれを忘れ去っていくことは少年少女にとって大人への通過儀礼だと。氏の他の評論を読んでも感じることですが、いささか論理に強引なところはあると思います。でも、確かに大槻ケンヂや、筋少のもとを去っていくことで大人になっていった子供たちも多かったであろうことを思うと、彼の筋少での活動にはそんな「笛吹き男」としての一面も確かにあったのかなぁと思わせます。



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