2016-02-06

母のおすすめ本

 「わりとおもしろかった」と言って、母が貸してくれた本。

『幕末 維新の暗号 群像写真はなぜ撮られ、そして抹殺されたのか』 加治将一

 読み始めて数ページ・・・わざとなのか何なのか、ハナからやけに挑発的というか喧嘩腰な調子に鼻白む。作中で探偵役をつとめる歴史小説家・望月とその賛同者以外は皆とるにたらない愚か者か、性格の悪い嫌なヤツと決めてかかったような語り口に嫌気がさし、何度か「読まなくてもいいんじゃない?」と思ったのだけど、面白いからと貸してくれた本を読まずに返すのも悪いかと思い頑張った。

 坂本龍馬、勝海舟、西郷隆盛、小松帯刀、大久保利通、桂小五郎、高杉晋作、岩倉具視、伊藤博文・・・錚々たるメンバーが一堂に会しおさまっているという一枚の写真に秘められた謎、隠された真実を歴史小説家・望月が暴く!。

 ・・・いわば、『信じるか信じないかはあなた次第』という話なんだと思うけど、信じるも信じないも、写真に写っている人物の真贋については結局、似ている、似ていないの印象論の域を出ていないし、証拠や根拠として提示されるものには予めある結論を想定した上でのバイアスが強くかかりすぎていて、「それを証拠だといわれてもなぁ・・・」っていう。

 真実味溢れる歴史ミステリーとして読むには、そうと思わせる根拠や論理の積み重ね、舞台装置の作りこみが粗い。荒唐無稽な歴史エンターテイメントとして読むには愛嬌が足りない。




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2015-09-19

量子力学はこうなっている! : 久保謙一

『量子力学はこうなっている! -やっぱり物理は面白い-』 久保謙一

 古典物理がちんぷんかんぷんなのに「量子力学」なんて無謀っ!!!

 そりゃ、わかってる。わかってるけど・・・。10年以上も前、京極夏彦の『魍魎の匣』を読んだ時から「量子力学」には興味があったのだ。そりゃ、まぁ・・・科学的というよりはむしろオカルティックな興味がね・・・。

 箱の蓋をあけるという行為が箱の中身を決定づけてしまう。観察をするという行為そのものが観察される対象に干渉する。当時、量子力学の世界から漏れ聞こえてくる話には京極夏彦の小説同様ゾクゾクするような不思議さ、あやしさがあったのだ。

 うん、でも、まぁ・・・「量子力学」はもちろんオカルトではなくて、本書には量子の世界の不思議な現象が解明されて、合理的に理解できるようになっていく過程が書かれているんだけどね。不思議なもの不可解なものにゾクゾクしてしまう私なぞと違って、理系の人ってのは不思議なことが不思議ではなくなることにゾクゾクするんだろうな、きっと。

 「量子力学」なんて難解で不思議な分野を扱っているのに、とても読みやすく解りやすく書かれた本だった。・・・と言って、私に「量子力学」の何たるかが理解できたわけじゃないけど。多分、色んなレベルでの理解ができるように書かれているのだろう。ある程度物理の素養がある人はそのレベルで、理系素人であってもそれなりのレベルで・・・。私も・・・一っ番初歩の初歩の初歩の初歩の、も~ぉ最低のとこのレベルではあるけれども「量子の世界ってこんな感じ」ってとこにちょっとだけ触れたような気はする。あくまで、気はするだけ・・・か。

 さて、ひと夏かけてとりくんだ「理系本」、ここで一旦ひと区切りとします。何かが身についたのか、まったく何の成長もなかったのか・・・よくわかりませんが、中学・高校の理科ぐらいはちゃんと勉強しとけばよかったとしみじみ思う夏でした。(もう秋だけど)

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2015-05-02

吸血鬼と精神分析 : 笠井潔

『吸血鬼と精神分析』 笠井潔

 物凄いタイトルにびっくりして思わず手に取ってしまったのだけど失敗した。これ、すでに数作出ているシリーズもののミステリーの中の一作だった。

 前作を読んでなくてもこれ単体でちゃんと楽しめるのだけど、探偵役の矢吹駆や主要人物であるナディア、その父のモガール警視と相棒バルベス警部にあまり思い入れのないまま読み始めなきゃいけないのは仕方がない。特に矢吹青年はかなり特異なキャラクターであるようなので、彼の推理の流儀を楽しむためにはもちろんこのシリーズに馴染んでいた方が良いのだろう。

 要塞化したアパルトマンで射殺されたルーマニアの亡命将校の事件に続き、週末ごとに発見される全身の血液を抜かれた女性の死体。事件関係者と矢吹青年の間で哲学的、宗教的、精神分析学的談義が繰り広げられる。これが作品の中でかなりのボリューム(印象としては半分以上~2/3くらい?)を占めていて、興味深くはあるのだけどそっち方面の知識のない私には少々読むのがしんどい。そもそも現象学に則った矢吹青年の推理、事件の把握の仕方というのが私には体感できないし、彼の言っていることが妥当なのかどうかも私にはわからない。

 途中で何度か「無理かも・・・」と思いながらも、頑張ってこれを読み終えればご褒美的な何か・・・驚くべき事件の真相を知る興奮だとか、夢中になれるキャラクターや、作品、作家との出会いとか・・・が得られるかもしれないと思って完走したのだけど、それが得られたかどうかは・・・



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2014-08-09

幻想怪奇譚の世界 : 紀田順一郎

『幻想怪奇譚の世界』 紀田順一郎

 「夏だし、何か怖いもの読もう」と思い立ったのだけど、「怖いもの」といっても一体どのあたりに手を付けようか? という思いもあって(数年前の夏にはイギリスのゴシック短編集を読んでみたものの、ちっとも怖さを理解できず大失敗!ということもあったので)、まずはガイド的なものを。

 文庫や全集の解説として書かれたものが多く、第一章は日本の作家、作品について ~ 小泉八雲、泉鏡花、夢野久作らの作品世界や、乱歩、海野十三、小栗虫太郎ら推理小説やSFと幻想怪奇的なものがないまぜになっていた時代の作家たちについての解説、「百物語」という怪異を生む、体験する「場」についての考察など。

 第二章はルイス・キャロル、H.G.ウェルズ、ガストン・ルルー、アルジャノン・ブラックウッド、アーサー・マッケン、サマセット・モーム、H.P.ラヴクラフトら海外の作家が生んだ幻想怪奇の作品空間についての分析 ~ その背景、成り立ち、特質。

 第三章に翻訳もの短篇を三作品収録。フリードリヒ・フーケ「ウンディーネ」、アルジャノン・ブラックウッド「とびら」、ウォルター・デ・ラ・メア「なぞ」。お伽噺のようだったり、SF的だったり、純然たる怪異だったりと味わいは異なるのだけど、やたらとデコデコ飾り立てず、さらりと描き出された怪異と不思議の感触は、岡本綺堂の怪談の肌触りにも似ているなぁと思った(まぁ、翻訳ものだから原文の味わいはまた別かもしれませんが)。

 んで、この夏、「怖いもの」は何を読もうか・・・ですが、本書にはまったく関係なく、上田秋成の『雨月物語』にしようかと。(この夏には無理かもだけど、本書で興味を持った海野十三「深夜の市長」もいずれは・・・) 



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2014-05-10

荒木飛呂彦論―マンガ・アート入門 : 加藤幹郎

『荒木飛呂彦論 マンガ・アート入門』 加藤幹郎

 『ジョジョ』の読者ならば多分みんな直観的に解っていることを、あえてことさらに解りにくい言い回しで語った本。

 多くの『ジョジョ』ファンがいちいち言語化していないことを、評論という形で言葉にしたということには意味があるかもしれない。だが、内容云々以前に、言わずもがなな修飾、形容詞の数々や、カッコ書きでの補足の多用、意図不明なひらがな表記の使用など、表記や文体の問題で非常に読みづらい。

 この読みにくい評論に書かれていることの中から私が読解できたのは、

 ・荒木飛呂彦の長編漫画『ジョジョの奇妙な冒険』は、
  パート毎に様々な変奏を奏でながら、ドラマ的にも、
  視覚的表現の上でも、例えば「波紋」などの共通
  する主題に貫かれている。
 ・『ジョジョ』に描かれるドラマは単純な二項対立を
  超えた、複雑で重層的なものである。
 ・ドラマの内容とも連関したコマ割り、人体の表現が、
  漫画史において革新的である。
  そして、その漫画表現は絵画、映画など他の芸術の
  潮流を踏まえたものである。
 ・だから、荒木飛呂彦は素晴らしい。

 という、荒木飛呂彦ファンなら皆解ってるであろうことだけだった。それにしたって、作品の解釈、論の展開は恣意的で、ただこれだけのことを語るための根拠や例証の提示さえ十分であるとは思えない。

 もしも、この評論を入試の読解問題に採用する学校があったら、私はその学校落ちるな・・・。

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2014-05-03

ふがいない僕は空を見た : 窪美澄

『ふがいない僕は空を見た』 窪美澄

 もどかしい思いと様々な鬱屈を抱えてある町に暮らす男女の姿を、それぞれの視点から描いた短編連作。

 「ふがいない僕」たちにとって、世の中にはどうにもならないことや、怖いことがありすぎて、何だかちょっとホラーを読んでる気分になりかけてた上に、現実にも、第2編の「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」を読んでいるあたりで、自分の不甲斐なさを痛感させられる出来事があり、しばらくそのダメージから回復できずにいた。

 ・・・・・・世のちゃんとした大人というものは、周囲への気配りと自己主張を良いバランスで両立させて、きちんと自分の立ち位置というものを築いているのですね。そうした「ちゃんとした大人」であるために、彼らは一歩社会に出たら何事にも気を抜かずに相対しているのだなぁ。それがかなりの努力を要するものであることは、堂々と、楽しそうにしている彼らの姿からも垣間見えたのだけど、大人である彼らの姿はカッコ良かった。それにひきかえ、周りに気をつかわせてばかりいる私の不甲斐なさよ・・・。

 ・・・話が横にそれた。そんなこともあって、再認識してしまった私自身の不甲斐なさ、立ち位置の不安定さを、うっかり登場人物たちの不安定さに重ねてしまうのが嫌で、先を読み進めることができなくなってしまった。特に、「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」の主人公は、ひととおりの理屈は捏ねてみるものの、なるたけものを考えずに済む楽な選択を繰り返した結果、とても危うい安穏の中にいる主婦で、家でだらだらとマンガを読んでいるその姿には私自身を投影する要素がたっぷりあったので。

 しばらく鬱々としていたが、何とか気をとりなおして、この小説も最後まで読んだ。世の中には「ふがいない僕」らの手にあまることがたくさんあるけれども、それでも、より良く生きていこうとは思うのだ。




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2014-03-08

しらない町 : 鏑木蓮

『しらない町』 鏑木蓮

 人が「生きた」「生きている」ということを精一杯肯定しようとするかのような優しい小説だった。

 映画監督になるという夢に指先すら届かないままアルバイトに明け暮れる青年・門川。アパートの管理人として、帯屋史朗という老人の孤独死を目の当たりにした門川は、帯屋老人の遺品の中に、ある女性の姿を生き生きと写し取った8ミリフィルムと、謎めいた言葉を記したノートを見つける。

 帯屋老人の残した謎を追うミステリーの味わいを帯びてストーリーは進むが、そこからしみじみと溢れ出すのは、人が生きるということへの祈りに似た想い。

 一人孤独に亡くなった老人も、一生口にすることのできない秘密を抱えて人生を送る人も、かなわぬ夢を追い途方に暮れる若者も・・・自分の人生を生きた、全ての人の生は肯定されてあれかしという想い、祈り、願い。そして、人には誰しも人との関係を紡いで生きていく力があるはずだと語りかけてくるかのようなストーリー。本当に優しい。





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2013-11-23

少女が知ってはいけないこと : 片木智年

『少女が知ってはいけないこと』 片木智年

 蛇の言葉に誘われて禁じられた知恵の実を口にしたエヴァ。禁じられた壺を開き、人類に災厄をもたらしたパンドラ。神話に語られる「始原の女性」たちが犯した「罪」によって、人は人として生きるという宿命を課せられた。

 少女の禁じられた好奇心が満たされたとき、人は何を得て、何を失ったのか。知ることを禁じられていたものの正体とは何なのか。また、エヴァをそそのかした蛇とは何者なのか。

 エデン神話、愛の神エロスと夫の姿を盗み見たことで苦難に落とされた少女の神話「エロスとプシュケ」の物語の系譜に連なるおとぎ話や文芸をひもときながら、「楽園を追われた」人々のその後、「知ってしまった」人類の心の中で繰り返される「人類としての自立」と「自然への回帰」の葛藤を読みだしていく。


 ・・・自ら語り出した問いの中でもやもやしつづけている著者に巻き込まれて、すごくモヤモヤする。そもそも「知る」ことを禁じたのは誰なのか? 「知ること」が「罪」であり、「知ること」によって「呪われた」と思ったのは誰だったのか?・・・とかね。




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2013-11-16

江戸の敵をなぜ長崎で討つのか―江戸人107の謎 : 北嶋廣敏

『江戸の敵をなぜ長崎で討つのか―江戸人107の謎』 北嶋廣敏 

 もう、ずいぶん前のことになるが、東京で一人暮らしをしていた頃、西武池袋線東長崎駅近くにある友人の下宿部屋にしょっちゅう入り浸っていた。ある日、その友人が真顔で私に言った。「『江戸の敵を長崎で討つ』の『長崎』ってここのことだよ。」

 “え、いや、その『長崎』って、出島のある、あの『長崎』のこと・・・だよね” “え? でも何? その真顔。もしかしてマジ?” “そうか、江戸時代なら東長崎のあたりだって江戸のかなり外れになるのか? 江戸からどっかの街道に出て逃げようとしてるあたりを捕まえて敵を?” ・・・激しく混乱した。何のことはない、かつがれたのである。


 本書によると、もとは『江戸の敵を長崎が討つ』と言ったのだそうだ。文政二年、見世物興行の人気を競って、江戸の職人は上方に負け、江戸を負かした上方の人気を、長崎からやってきた見世物の人気が凌駕したことから生まれた言葉だとか。

 江戸の言葉、江戸の町、江戸の職業、江戸の暮らしにまつわる107の江戸雑学を、江戸川柳に詠まれる楽しい江戸の光景なども紹介しながら、1ネタ見開き2ページ程でテンポよく読ませる。読みながら、「てやんでぃ べらぼぅめぇ」とか言っちゃう。




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2013-09-07

つぎはぎ仏教入門 : 呉智英

『つぎはぎ仏教入門』 呉智英

 仏教はどれほど深く、どれほど先鋭なものなのか。それを知るための第一歩に本書がなることを願っておきたい。


 世俗の要求に応えるうちに釈迦の教えとは随分かけはなれたものになった仏教。そのように変質してしまった仏教をこそ仏教として信じている人々。そのような仏教のありかたをきちんと批判できない評論家や社会。そういう状況にツッコミを入れ、仏教をとりまく様々な誤解を明らかにし、仏教とは何かを改めて問う~そういう意味での「入門書」。


 我が子にラーフラ=障り・束縛という名までつけて、家族を捨て家を出る釈迦の姿はショッキングだ。そのあまりの孤独、苦悩の深さ、そしてその苦悩から去るためにとった行動の妥協のなさを思うと、金縛りにあったような心地がする。

それ(家族なるもの)をかくも強く拒む身勝手さは、常識的な社会倫理を超えており、それ故にこそ人々を圧倒する不条理な魅力がある。


 仏教はそもそも穏健な社会とは相容れない思想だからこそ、社会にあっては救われない苦悩を救う力がある。

 でも、社会人であり、家族を捨てることもできない私は、どのように仏教に向きあえば良いのだろう? ・・・なんて思うと、みうらじゅんさんはやはり、現代において実に素朴に仏教の思想を実践している方なんじゃないかと思うのだ。


みうらじゅん『マイ仏教』感想…http://neconohitai.blog71.fc2.com/blog-entry-554.html




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