2012-03-10
弦と響 : 小池昌代
『弦と響』 小池昌代
悪魔的なエネルギーと存在感を放つファーストバイオリン・鹿間五郎、美貌のセカンドバイオリン・文字相馬、大柄で才能豊かなビオラ・片山遼子、静かな情熱を秘めたチェロ・伊井山耕太郎 ~ 日本を代表する弦楽四重奏団として長らく活動してきた鹿間四重奏団が間もなく迎えるラストコンサート。メンバーの妻、かつての恋人、スタッフ、記者、マネージャー、鹿間カルテットの音楽を愛し、または偶然にラストコンサートの会場に足を運ぶ客たち。鹿間四重奏団の最後の日 ~ 交叉するさまざまな想い、人生。
音楽を物語る作者の言葉は愛情と畏れに満ちて豊かだ。たくさんの修辞が施されているわけではない。使われている言葉はむしろシンプルである。しかし、「切ない」「美しい」という日常にあふれた言葉に、これほどドキドキしてふるえたのは随分久しぶりのことだ。
おそらく、ひとつのシンプルな言葉が、その本来の持てる力をもっともまっすぐに発揮するような空間が、それまでに紡がれた言葉の連なりによって作り出されているのだ。愛情をこめて生み出された空間にすっと置かれたその言葉は、驚くほど豊かに、また清新に響く。
開演を待つ間の静かな熱を帯びたざわめき、そしてコンサートが終わったあとのホールに残る余韻・・・ 作者の言葉は、訳もなく泣きたくなるような切なくあたたかい感触を身体の内に呼び起こしてくれた。
静かに降りしきる雪の中、鹿間四重奏団のラストコンサートが始まる。
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悪魔的なエネルギーと存在感を放つファーストバイオリン・鹿間五郎、美貌のセカンドバイオリン・文字相馬、大柄で才能豊かなビオラ・片山遼子、静かな情熱を秘めたチェロ・伊井山耕太郎 ~ 日本を代表する弦楽四重奏団として長らく活動してきた鹿間四重奏団が間もなく迎えるラストコンサート。メンバーの妻、かつての恋人、スタッフ、記者、マネージャー、鹿間カルテットの音楽を愛し、または偶然にラストコンサートの会場に足を運ぶ客たち。鹿間四重奏団の最後の日 ~ 交叉するさまざまな想い、人生。
音楽を物語る作者の言葉は愛情と畏れに満ちて豊かだ。たくさんの修辞が施されているわけではない。使われている言葉はむしろシンプルである。しかし、「切ない」「美しい」という日常にあふれた言葉に、これほどドキドキしてふるえたのは随分久しぶりのことだ。
『聴いたあとには何も残らない。しかし記憶のなかには時が流れ去ったという、切ない感触の跡が残る。』 (「セカンドバイオリン」)
『なんという美しい響きがこの世にあるのか』 (「ファーストバイオリン」)
おそらく、ひとつのシンプルな言葉が、その本来の持てる力をもっともまっすぐに発揮するような空間が、それまでに紡がれた言葉の連なりによって作り出されているのだ。愛情をこめて生み出された空間にすっと置かれたその言葉は、驚くほど豊かに、また清新に響く。
開演を待つ間の静かな熱を帯びたざわめき、そしてコンサートが終わったあとのホールに残る余韻・・・ 作者の言葉は、訳もなく泣きたくなるような切なくあたたかい感触を身体の内に呼び起こしてくれた。
静かに降りしきる雪の中、鹿間四重奏団のラストコンサートが始まる。
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2012-02-04
幸田露伴集 怪談 ― 文豪怪談傑作選
『幸田露伴集 怪談―文豪怪談傑作選』
若い頃見た映画というのは強烈に刷り込まれているもので、私の中の明治・大正の文学者のイメージには、映画『帝都物語』(原作:荒俣宏、脚本:林海象、監督:実相寺昭雄)で活躍する彼らのキャラクターがガッツリかぶっている。泉鏡花はタロットをめくる玉三郎さんで、寺田寅彦は地下都市構想を熱く語る寺泉憲であり、幸田露伴は魔人・加藤に奇門遁甲の陣で挑むオカルティスト・高橋幸治なんである。
んでまぁ、そのイメージを抱いたまま、この『幸田露伴集 怪談―文豪怪談傑作選』に突入。
怪談、奇談、ダークファンタジーに東洋オカルトうんちく。漢籍の知識が随所に織り込まれた、最近ではあまり出会うことのない、異様に一文が長い文体には悩まされたが、かまわず読み続けていると、あるいは近づき、あるいは遠のき、自在にゆらゆらとゆれる語りのリズムに心地よく脳が馴染んでくる。怪しいもの満載ながら洒脱な語り口~すっきりとした香気漂う読後感。
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若い頃見た映画というのは強烈に刷り込まれているもので、私の中の明治・大正の文学者のイメージには、映画『帝都物語』(原作:荒俣宏、脚本:林海象、監督:実相寺昭雄)で活躍する彼らのキャラクターがガッツリかぶっている。泉鏡花はタロットをめくる玉三郎さんで、寺田寅彦は地下都市構想を熱く語る寺泉憲であり、幸田露伴は魔人・加藤に奇門遁甲の陣で挑むオカルティスト・高橋幸治なんである。
んでまぁ、そのイメージを抱いたまま、この『幸田露伴集 怪談―文豪怪談傑作選』に突入。
怪談、奇談、ダークファンタジーに東洋オカルトうんちく。漢籍の知識が随所に織り込まれた、最近ではあまり出会うことのない、異様に一文が長い文体には悩まされたが、かまわず読み続けていると、あるいは近づき、あるいは遠のき、自在にゆらゆらとゆれる語りのリズムに心地よく脳が馴染んでくる。怪しいもの満載ながら洒脱な語り口~すっきりとした香気漂う読後感。
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2011-09-03
恋する物語のホモセクシュアリティ : 木村朗子
『恋する物語のホモセクシュアリティ―宮廷社会と権力』 木村朗子
中世の宮廷物語に、それほど男同士、女同士の関係が描かれていたなんて。
本書を読んでみようと思ったのは、実は『平家物語』を読んだことがきっかけで・・・。『平家物語』では、男と女の関係よりも、男同士の関係の方がベタベタしてるというか・・・何だか男同士の関係への執着の方が強いんじゃないか?と感じられたので、その訳の一端でもわかるかな?と期待して読んでみたのですが・・・
帝の子を産むことが権力の奪取に直結する宮廷社会。しかしそこには、男女の差に先立って階級差が存在し、性の関係においては「子を産む/産まない」ではなく、「権力を生む/生まない」ということが問題とされる。そのような「権力を生む性」のシステムを持つ宮廷社会の中に描かれる様々なセクシュアリティ。そこではセクシュアリティは個人のアイデンティティに関わるような固定されたものではなく、システムのどの位置に配置されるかによって、その機能、意味に流動性を持つ。
・・・う~ん、実は私、「ジェンダー」「セクシュアリティ」という言葉を字面では見たことがあっても、その意味するところをきちんと体得できていないのだ。つまり、私にはピンとこないことが多かったってこと。
本書で試みられたのは、宮廷社会を舞台にした物語に描かれた様々なセクシュアリティをとりあげて、男女/男同士/女同士の関係とそこに垣間見える欲望について、なんらかの結論を導き出すということではなく、「ジェンダー」や「セクシュアリティ」にまつわる研究のフィールドに、「男/女」の別や「ホモ/ヘテロ」の差を個人のアイデンティティーに関わって固定されたものとしてとらえない新たな視点を持ち込むことであったようだ。
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中世の宮廷物語に、それほど男同士、女同士の関係が描かれていたなんて。
本書を読んでみようと思ったのは、実は『平家物語』を読んだことがきっかけで・・・。『平家物語』では、男と女の関係よりも、男同士の関係の方がベタベタしてるというか・・・何だか男同士の関係への執着の方が強いんじゃないか?と感じられたので、その訳の一端でもわかるかな?と期待して読んでみたのですが・・・
帝の子を産むことが権力の奪取に直結する宮廷社会。しかしそこには、男女の差に先立って階級差が存在し、性の関係においては「子を産む/産まない」ではなく、「権力を生む/生まない」ということが問題とされる。そのような「権力を生む性」のシステムを持つ宮廷社会の中に描かれる様々なセクシュアリティ。そこではセクシュアリティは個人のアイデンティティに関わるような固定されたものではなく、システムのどの位置に配置されるかによって、その機能、意味に流動性を持つ。
・・・う~ん、実は私、「ジェンダー」「セクシュアリティ」という言葉を字面では見たことがあっても、その意味するところをきちんと体得できていないのだ。つまり、私にはピンとこないことが多かったってこと。
本書で試みられたのは、宮廷社会を舞台にした物語に描かれた様々なセクシュアリティをとりあげて、男女/男同士/女同士の関係とそこに垣間見える欲望について、なんらかの結論を導き出すということではなく、「ジェンダー」や「セクシュアリティ」にまつわる研究のフィールドに、「男/女」の別や「ホモ/ヘテロ」の差を個人のアイデンティティーに関わって固定されたものとしてとらえない新たな視点を持ち込むことであったようだ。
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2011-07-23
弁慶はなぜ勧進帳をよむのか―日本の精神文化と仏教 : 小峰彌彦
『弁慶はなぜ勧進帳をよむのか―日本の精神文化と仏教』 小峰彌彦
歌舞伎と仏教・・・興味をひかれる2つが並んだタイトルに思わず飛びついたのだけど、これは・・・ちょっと残念だった。
「勧進帳」「道成寺」「卒塔婆小町」といった、歌舞伎や能で良く知られた演目を題材に、芸能の中に盛り込まれた仏教的なものを明かにし、そこに見える日本人の精神文化を探るという内容なのだが、
伝統芸能=日本人の代表的文化=日本人の心を表すもの
↓
芸能の中には仏教の諸宗派、また道教、陰陽道などのモチーフが混ざり合って存在している
↓
日本人の精神文化には仏教を中心として多様な宗教を習合する宗教的寛容性が根付いている
と説くには、論考が不十分であるように思える。だって、著者が本書でやっているのは、芸能の中に見られる仏教的要素を指摘、解説することだけだもの。劇中に仏教的なものを盛り込んだ作者の意図、演じられるドラマの文脈の中でその仏教的なものがどのように機能しているのか、その芸能を観る人たちにどのように受容されたのか・・・そのあたりについては「他に優れた論考がある」と言うばかりで、著者自身の考えはほとんど書かれていない。著者が語っているのは『弁慶はなぜ勧進帳をよむのか』ではなくて『弁慶は山伏の扮装をして勧進帳を読む』ということだけなのではないか?
仏教的なものが、歌舞伎や能といった芸能の衣装、台詞、作劇に取り入れられていることを指摘するだけでは、土産物屋や飲食店で見かける「テレビ(雑誌)で紹介されました!」って張り紙の文句とあまり変わらないような気がするんだけども・・・。
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歌舞伎と仏教・・・興味をひかれる2つが並んだタイトルに思わず飛びついたのだけど、これは・・・ちょっと残念だった。
「勧進帳」「道成寺」「卒塔婆小町」といった、歌舞伎や能で良く知られた演目を題材に、芸能の中に盛り込まれた仏教的なものを明かにし、そこに見える日本人の精神文化を探るという内容なのだが、
伝統芸能=日本人の代表的文化=日本人の心を表すもの
↓
芸能の中には仏教の諸宗派、また道教、陰陽道などのモチーフが混ざり合って存在している
↓
日本人の精神文化には仏教を中心として多様な宗教を習合する宗教的寛容性が根付いている
と説くには、論考が不十分であるように思える。だって、著者が本書でやっているのは、芸能の中に見られる仏教的要素を指摘、解説することだけだもの。劇中に仏教的なものを盛り込んだ作者の意図、演じられるドラマの文脈の中でその仏教的なものがどのように機能しているのか、その芸能を観る人たちにどのように受容されたのか・・・そのあたりについては「他に優れた論考がある」と言うばかりで、著者自身の考えはほとんど書かれていない。著者が語っているのは『弁慶はなぜ勧進帳をよむのか』ではなくて『弁慶は山伏の扮装をして勧進帳を読む』ということだけなのではないか?
仏教的なものが、歌舞伎や能といった芸能の衣装、台詞、作劇に取り入れられていることを指摘するだけでは、土産物屋や飲食店で見かける「テレビ(雑誌)で紹介されました!」って張り紙の文句とあまり変わらないような気がするんだけども・・・。
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2011-06-08
ちくま日本文学28 梶井基次郎
梶井基次郎 (ちくま日本文学 28)
「檸檬」
当時兄は高校生くらいだったと思う。普段それほどおしゃべりではない兄が、「梶井基次郎の『檸檬』は凄いんで。檸檬で丸善を爆破するんよ。」と、私には訳のわからんことを少し興奮気味に話してきた。
そんな兄の姿が何だか忘れられず、「檸檬」が収録された梶井基次郎の文庫を私が初めて読んだのはいつのことだったのだろう? 文中にははっきりと「私」が暮らしているのは京都の町であることが書かれているのに、私は今まで、それを東京の憂鬱な青年の話だったと記憶違いしており、お茶の水の丸善が檸檬の爆弾で爆破されるイメージをずっと持っていたのだ。
しかし、「檸檬」を「凄い」と言ったあの頃の兄は、心にどんな憂鬱を抱えていたのだろう。
「鼠」
「戯れに遁してやった鼠」に向かって語りかける「俺」の言葉が、どこまでも他人事で気楽な“戯れ”であるために、鼠の味わった絶望的な恐怖がとても黒々として見える。
「愛撫」
猫の耳を「切符切り」でパチンとやってみたい・・・なんと言う危険な思いつき。
「Kの昇天」
悲しくて、透明で、不吉な、現実を離れた美しさ。初めて梶井基次郎の文庫を読んだ時、一番印象に残った掌編だが、私はここでも妙な記憶違いをしていた。Kが月へ登っていった後の浜辺には、Kの義眼が残っていた・・・と、そういう風に覚えていたのだ。
「母親」
『~そして恐らくはこの間まで私は母をおそれていた。どこまでも母は私をおさえつける人であった。』
私の母への感情も概ねこのようなものであった。しかし、私は作中の「私」のように母を失望させることができなかった為に、そして作中の「母」のように、母が私を諦めることがない為に、私は、「私」とは違う形で母を裏切りながらも、母に詫びる気持ちにまだなれないでいる。
「奎吉」「大蒜」
ダメさの限りを尽くした挙句に進退窮まり、遂にいたいけな弟の貯金を騙し取ろうとする兄の心。(「奎吉」)
新任の柔道師範に「大蒜」という渾名をつけて得意になっていた少年が、だんだんと恐ろしい想像に取り付かれ・・・。(「大蒜」)
非常に限定された場面を切り取り、ミニマムな世界の中で起こる感情の変化を克明に写し取るうちに、切迫した悲壮感が同時に滑稽にも見えてくる。何だか町田康の小説と似てると思った。
その他、収録作の多くに「分身」の感覚が満ちている。風景の中に移植された感情。感情の中に棲む風景。幽霊のように、自分から抜け出た「分身」を自らの視界の中にくっきりと見る。いつしか分身と入れ替わった自分が、抜け殻になった自分を見つめ返す。
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「檸檬」
当時兄は高校生くらいだったと思う。普段それほどおしゃべりではない兄が、「梶井基次郎の『檸檬』は凄いんで。檸檬で丸善を爆破するんよ。」と、私には訳のわからんことを少し興奮気味に話してきた。
そんな兄の姿が何だか忘れられず、「檸檬」が収録された梶井基次郎の文庫を私が初めて読んだのはいつのことだったのだろう? 文中にははっきりと「私」が暮らしているのは京都の町であることが書かれているのに、私は今まで、それを東京の憂鬱な青年の話だったと記憶違いしており、お茶の水の丸善が檸檬の爆弾で爆破されるイメージをずっと持っていたのだ。
しかし、「檸檬」を「凄い」と言ったあの頃の兄は、心にどんな憂鬱を抱えていたのだろう。
「鼠」
「戯れに遁してやった鼠」に向かって語りかける「俺」の言葉が、どこまでも他人事で気楽な“戯れ”であるために、鼠の味わった絶望的な恐怖がとても黒々として見える。
「愛撫」
猫の耳を「切符切り」でパチンとやってみたい・・・なんと言う危険な思いつき。
「Kの昇天」
悲しくて、透明で、不吉な、現実を離れた美しさ。初めて梶井基次郎の文庫を読んだ時、一番印象に残った掌編だが、私はここでも妙な記憶違いをしていた。Kが月へ登っていった後の浜辺には、Kの義眼が残っていた・・・と、そういう風に覚えていたのだ。
「母親」
『~そして恐らくはこの間まで私は母をおそれていた。どこまでも母は私をおさえつける人であった。』
私の母への感情も概ねこのようなものであった。しかし、私は作中の「私」のように母を失望させることができなかった為に、そして作中の「母」のように、母が私を諦めることがない為に、私は、「私」とは違う形で母を裏切りながらも、母に詫びる気持ちにまだなれないでいる。
「奎吉」「大蒜」
ダメさの限りを尽くした挙句に進退窮まり、遂にいたいけな弟の貯金を騙し取ろうとする兄の心。(「奎吉」)
新任の柔道師範に「大蒜」という渾名をつけて得意になっていた少年が、だんだんと恐ろしい想像に取り付かれ・・・。(「大蒜」)
非常に限定された場面を切り取り、ミニマムな世界の中で起こる感情の変化を克明に写し取るうちに、切迫した悲壮感が同時に滑稽にも見えてくる。何だか町田康の小説と似てると思った。
その他、収録作の多くに「分身」の感覚が満ちている。風景の中に移植された感情。感情の中に棲む風景。幽霊のように、自分から抜け出た「分身」を自らの視界の中にくっきりと見る。いつしか分身と入れ替わった自分が、抜け殻になった自分を見つめ返す。
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2011-02-23
私だけの仏教 ~あなただけの仏教入門 : 玄侑宗久
『私だけの仏教~あなただけの仏教入門』 玄侑宗久
釈尊以来、先人たちによって長い時間をかけて蓄積されてきた、生きる智慧、真理を悟り何ものにも囚われない自由な精神に到るための膨大な方法論とツール。一生かかっても到底学びきれるものではない、この膨大な仏教の財産の中から、あくまでも“私”が“実践”するのに適した「私だけの仏教」を見つけ出すための、現代の社会生活の中で“実践する”仏教への手引書。
生・老・病・死・愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五蘊盛苦 ・・・ 普通に生活していれば普通に直面する辛くて苦しくて怖いこと。そこから解放される方法があるなら、そりゃあ解放されたいですよ。
「私だけの仏教」をアレンジするもととなる大量の素材についての解説 ~各宗派の特徴的な思想、「大乗」「小乗」「顕教」「密教」「自力」「他力」という言葉の語るところ~ や、「私だけの仏教」を作り、実践する際に必ず自分に課すべき基本的な戒め、心得ておくべき態度についてのお話に耳を傾けながら思うのだけど・・・
これって、まるでみうらじゅんさんの本のタイトルじゃない?! 『親孝行プレイ』に、『ぜったい好きになってやる!』ってね。
「法(真理)」「慈悲」「智慧」など、仏教において大切だと考えられていることは人間関係の「和」の中にしか生まれないものであるから、「『私だけの仏教』の目指すものも、決して『孤独な仏教』などではない」。そのことをしっかり心して欲しいという著者の言葉には、「私だけの」という文句に人間関係からの逃避の可能性をちょっと期待してた私は、ガツンと釘をさされた気がしてしおれてしまっていたのだが、そこにまた、みうらじゅんさんが、先を歩いていく姿を見せてくれたのだ。
辛いことも、嫌なことも「そこがいいんじゃない!」(『さよなら私』)と唱えながら雑多な人間関係や面倒事の中にとびこんでいこうとするみうらじゅんさんは、何と立派な仏教者なんだろう。
「私だけの仏教」はゆっくり時間をかけてつくればいい。とりあえずは、私も「そこがいいんじゃない!」を唱えながら行こうと思う。
「そこがいいんじゃない!」を繰り返し唱えたって、きっとウザい人はウザいし、嫌なことは嫌だし、怖いもんは怖い。すべてから自由な心なんて程遠い。
それでも・・・
『おそらく、不可能なことを目指す人間の姿は、美しいのである。』という、思わずよろめきたくなる著者のキメ台詞が、私の旅立ちを促してくれるのである。
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釈尊以来、先人たちによって長い時間をかけて蓄積されてきた、生きる智慧、真理を悟り何ものにも囚われない自由な精神に到るための膨大な方法論とツール。一生かかっても到底学びきれるものではない、この膨大な仏教の財産の中から、あくまでも“私”が“実践”するのに適した「私だけの仏教」を見つけ出すための、現代の社会生活の中で“実践する”仏教への手引書。
生・老・病・死・愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五蘊盛苦 ・・・ 普通に生活していれば普通に直面する辛くて苦しくて怖いこと。そこから解放される方法があるなら、そりゃあ解放されたいですよ。
「私だけの仏教」をアレンジするもととなる大量の素材についての解説 ~各宗派の特徴的な思想、「大乗」「小乗」「顕教」「密教」「自力」「他力」という言葉の語るところ~ や、「私だけの仏教」を作り、実践する際に必ず自分に課すべき基本的な戒め、心得ておくべき態度についてのお話に耳を傾けながら思うのだけど・・・
「観音様から学びたいのは、この方があらゆることを『遊び』としてなさっている、ということだ。~略~『遊び』というからには、ご自分が楽しんでいるということだろう。」
「どうせ食べなければいけないなら、せめてマズイとは思わないで食べ終えたい。」
これって、まるでみうらじゅんさんの本のタイトルじゃない?! 『親孝行プレイ』に、『ぜったい好きになってやる!』ってね。
「法(真理)」「慈悲」「智慧」など、仏教において大切だと考えられていることは人間関係の「和」の中にしか生まれないものであるから、「『私だけの仏教』の目指すものも、決して『孤独な仏教』などではない」。そのことをしっかり心して欲しいという著者の言葉には、「私だけの」という文句に人間関係からの逃避の可能性をちょっと期待してた私は、ガツンと釘をさされた気がしてしおれてしまっていたのだが、そこにまた、みうらじゅんさんが、先を歩いていく姿を見せてくれたのだ。
辛いことも、嫌なことも「そこがいいんじゃない!」(『さよなら私』)と唱えながら雑多な人間関係や面倒事の中にとびこんでいこうとするみうらじゅんさんは、何と立派な仏教者なんだろう。
「私だけの仏教」はゆっくり時間をかけてつくればいい。とりあえずは、私も「そこがいいんじゃない!」を唱えながら行こうと思う。
「そこがいいんじゃない!」を繰り返し唱えたって、きっとウザい人はウザいし、嫌なことは嫌だし、怖いもんは怖い。すべてから自由な心なんて程遠い。
それでも・・・
『おそらく、不可能なことを目指す人間の姿は、美しいのである。』という、思わずよろめきたくなる著者のキメ台詞が、私の旅立ちを促してくれるのである。
![]() | 私だけの仏教 あなただけの仏教入門 (講談社プラスアルファ新書) (2003/05/21) 玄侑 宗久 商品詳細を見る |
![]() | 親孝行プレイ (角川文庫) (2007/04) みうら じゅん 商品詳細を見る |
![]() | ぜったい好きになってやる! (ちくま文庫) (2009/01/07) みうら じゅん 商品詳細を見る |
![]() | さよなら私 (2009/09/03) みうら じゅん 商品詳細を見る |
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2010-10-20
さよならキャラバン : 草間さかえ
『さよならキャラバン』 草間さかえ
アオリには「超絶技巧派作家が描く魅惑の作品集!」なんてあるし、amazonのレビューはみな絶賛と言って良いようなものばかりだし・・・“これは、よっぽど・・・”と思って購入したのだけども・・・。
・・・ん? ・・・んん? 読み終えた時には首がかなりの角度に傾いでた。
比良坂町という町を舞台にした小品集なんだけども、ちょっといい話の連続に、どうもハラが痛くなってくる。そこに描かれる日常の暖かさも、日常と不思議が同居するような世界観も、特に目新しいわけでもなく、すでにあちこちで描かれているようなものだし、使い古されたネタであってもやっぱり感動させてしまうほどの何かがあるようにも思えないし。
それぞれの小品に盛られたエピソードの中には、もっとストーリー本筋としっくりくる話なかったかなぁ・・・なんて違和感感じるものもあるし、相性の問題といえばそれまでなんだけど、この方の絵は私には伝わりづらいし。特に人物の表情 ~ 何でこの場面でそんな表情を? その表情はどういう感情から来てるの?
一番解せないのは表紙イラスト・・・amazonの画像じゃ、ちょっとわかりづらいけど、何で少女はあんなに険しい顔をしているの? 何で男(この男性、てっきりオジサンと言ってもいいトシのサラリーマンだと思っていたら、何と高校生であった)は少女を見ていないの?(見ようによっては、少女の胸の谷間あたりを見ているようにも思えるけど)
・・・と書きながら、実は私は不安なのだ。絶賛されている作品に良さを見出せないなんて・・・私自身に何か重大な問題があるんじゃないかと。
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アオリには「超絶技巧派作家が描く魅惑の作品集!」なんてあるし、amazonのレビューはみな絶賛と言って良いようなものばかりだし・・・“これは、よっぽど・・・”と思って購入したのだけども・・・。
・・・ん? ・・・んん? 読み終えた時には首がかなりの角度に傾いでた。
比良坂町という町を舞台にした小品集なんだけども、ちょっといい話の連続に、どうもハラが痛くなってくる。そこに描かれる日常の暖かさも、日常と不思議が同居するような世界観も、特に目新しいわけでもなく、すでにあちこちで描かれているようなものだし、使い古されたネタであってもやっぱり感動させてしまうほどの何かがあるようにも思えないし。
それぞれの小品に盛られたエピソードの中には、もっとストーリー本筋としっくりくる話なかったかなぁ・・・なんて違和感感じるものもあるし、相性の問題といえばそれまでなんだけど、この方の絵は私には伝わりづらいし。特に人物の表情 ~ 何でこの場面でそんな表情を? その表情はどういう感情から来てるの?
一番解せないのは表紙イラスト・・・amazonの画像じゃ、ちょっとわかりづらいけど、何で少女はあんなに険しい顔をしているの? 何で男(この男性、てっきりオジサンと言ってもいいトシのサラリーマンだと思っていたら、何と高校生であった)は少女を見ていないの?(見ようによっては、少女の胸の谷間あたりを見ているようにも思えるけど)
・・・と書きながら、実は私は不安なのだ。絶賛されている作品に良さを見出せないなんて・・・私自身に何か重大な問題があるんじゃないかと。
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2010-08-07
二つの月の記憶 : 岸田今日子
『二つの月の記憶』 岸田今日子
可愛らしくて、少し危険で、エロティックで・・・
大人が秘密の物語を隠した小部屋にそっと招き入れられ、濃く匂う美しい色をした果実を供されているような・・・
しかし、最後の秘密までは見せてくれない。
うふふふふふ…… という密やかな笑い声とともに扉は閉じられる。
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可愛らしくて、少し危険で、エロティックで・・・
大人が秘密の物語を隠した小部屋にそっと招き入れられ、濃く匂う美しい色をした果実を供されているような・・・
しかし、最後の秘密までは見せてくれない。
うふふふふふ…… という密やかな笑い声とともに扉は閉じられる。
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2010-02-24
天神のとなり : 五條瑛
天神のとなり / 五條瑛
大学准教授の職も、信用も、友人も失った鏑木。今はヤ○ザに飼われ、面倒な事件の謎解きに使われる日々。泥だらけの川底に沈んだ暮らしを自ら嗤いながらも、泥の中の居心地よさを感じ始めている鏑木の周りには、同じく訳ありの男たち。
互いの痛みには触れないように、あくまでもそっけなくコーティングした深情け。惰情と諦めの中にちらりとよぎる、守ってやりたいものへの思い。明日なんてないくせに、他人の未来を心配しちゃったりして・・・。
泥の中の男たちの関係が、何だか妄想的なまでに優しい。
中でも、鏑木の助手をつとめたりもするプールバーのアルバイト店員・長身イケメンの京二と鏑木の関係はもう、“優しい”どころか“甘い”といっても過言じゃない。
助手として有能なのはもちろん、食料の買出しから身の回りの世話まで、やけにかいがいしく鏑木の面倒を見る京二。男には懐の深いところを見せるのに女にはひどく厳しい。鏑木に対する悪意のある言葉を耳にすると、なぜか機嫌が悪くなる。
一方、若い京二の将来を気遣いながらも、やっぱり京二の存在に癒されちゃってる鏑木。上等そうな京二のジャケットにそっと触れてみたり、京二が女と逃げたんじゃないかと思ってもの凄く取り乱したり、自分のマフラーで京二の涙を拭ってやったり。うひゃあ。
しかし・・・男の世界の優しさの割りに、女には異常に手厳しい。金に汚いか、男に寄りかかるしか生きる術を持たないか、どんなに頑張っても不幸な女しか出てこない。なぜだ?
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大学准教授の職も、信用も、友人も失った鏑木。今はヤ○ザに飼われ、面倒な事件の謎解きに使われる日々。泥だらけの川底に沈んだ暮らしを自ら嗤いながらも、泥の中の居心地よさを感じ始めている鏑木の周りには、同じく訳ありの男たち。
互いの痛みには触れないように、あくまでもそっけなくコーティングした深情け。惰情と諦めの中にちらりとよぎる、守ってやりたいものへの思い。明日なんてないくせに、他人の未来を心配しちゃったりして・・・。
泥の中の男たちの関係が、何だか妄想的なまでに優しい。
中でも、鏑木の助手をつとめたりもするプールバーのアルバイト店員・長身イケメンの京二と鏑木の関係はもう、“優しい”どころか“甘い”といっても過言じゃない。
助手として有能なのはもちろん、食料の買出しから身の回りの世話まで、やけにかいがいしく鏑木の面倒を見る京二。男には懐の深いところを見せるのに女にはひどく厳しい。鏑木に対する悪意のある言葉を耳にすると、なぜか機嫌が悪くなる。
一方、若い京二の将来を気遣いながらも、やっぱり京二の存在に癒されちゃってる鏑木。上等そうな京二のジャケットにそっと触れてみたり、京二が女と逃げたんじゃないかと思ってもの凄く取り乱したり、自分のマフラーで京二の涙を拭ってやったり。うひゃあ。
しかし・・・男の世界の優しさの割りに、女には異常に手厳しい。金に汚いか、男に寄りかかるしか生きる術を持たないか、どんなに頑張っても不幸な女しか出てこない。なぜだ?
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2010-02-06
夢源氏剣祭文 : 小池一夫
夢源氏剣祭文 / 小池一夫
父に捨てられ、母に逝かれた幼女・・・父を求めて都に向かう旅の途中、鬼に出会い、自らもいずれ鬼となる運命を背負った茨木。茨木の運命の旅を縦糸に、袴垂保輔、平将門、藤原純友、安倍晴明、藤原兼家・道長父子、源頼光、渡辺綱、金太郎らの活躍、想いを織り込んで描かれる、都に跋扈する鬼ども~目に見える鬼(権力)と、目に見えない鬼(権力によって鬼へと変じたもの)の物語。
頼光と、四天王に数えられる綱、金時の折り合いが悪いっていうのが何とも面白い。権力に使われる武士である頼光に対して、権力に屈しない己の意志と強さを持つ綱、そして、鬼に近い心情を持つ金時。物語に新味を加える対比となっている。
錚々たる人物たちによる壮大な物語。豪華な中にも太い筆でザクッザクッと描いたような、素朴で伸びやかで御伽噺のような大らかな味わいがある。
ここに細密な装飾を施したら、また違った味わいの絢爛豪華な絵巻が生まれるんじゃないか・・・という思いに応えるように、皇なつきさんによる漫画化がなされたが、こちらは掲載誌の休刊により未完のまま中断されている様子。ぜひ完結させていただきたいなぁ。
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頼光と、四天王に数えられる綱、金時の折り合いが悪いっていうのが何とも面白い。権力に使われる武士である頼光に対して、権力に屈しない己の意志と強さを持つ綱、そして、鬼に近い心情を持つ金時。物語に新味を加える対比となっている。
錚々たる人物たちによる壮大な物語。豪華な中にも太い筆でザクッザクッと描いたような、素朴で伸びやかで御伽噺のような大らかな味わいがある。
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