2017-10-07

戦国24時 さいごの刻 : 木下昌輝

『戦国24時 さいごの刻』 木下昌輝

 豊臣秀頼、伊達輝宗、今川義元、山本勘助、足利義輝、徳川家康・・・六人の男たちの死の直前の24時間~「さいごの刻」を奇想を織り交ぜて描く。

 刻まれる時の緊迫感、周知の歴史の一場面によりダークな色合いを加える作者の奇想を味わうだけでも充分なのだが、「最期の24時間」しか描かれていないことで、妄想力豊かな読者には事ここに至るまでのドラマをあれこれと思い描く楽しみもあるだろう。

 いやむしろ、ここに到るまでの時間を妄想させるためにこそ、最期のときの24時間だけが書かれたのか。

 六篇の中では足利十三代将軍・義輝の最期の姿が美しい「公方様の一ノ太刀」がいちばん好き。





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2017-04-23

天下一の軽口男 : 木下昌輝

『天下一の軽口男』 木下昌輝

 これ、芝居で見たいなぁ~。

 大坂難波村の漬物屋次男坊・彦八の笑いにかけた人生。

 手習い小屋を追い出されてばかりだが、村の子供相手の滑稽芝居では大人気をとり「難波村一の御伽衆」を自称していた少年時代。若くして江戸に出て踏み出した笑話の芸人としての第一歩と味わった大きな挫折。失意を抱いて舞い戻った大坂で、世間の人にもまれ支えられ、様々な縁を得て名人と呼ばれるまでになった日々。幼い日に誓った約束を果たすため「最高の舞台」の待つ名古屋へと旅立つ年老いた彦八。

 何だか歌舞伎の舞台で演じられてる様子が目に浮かぶんだぁ~。いっぱい笑わされて、いっぱい泣かされて、最後にはいろんなものが洗い流されてぽっかりと心と体が軽くなっている。そんな気持ちの良い芝居を見せてもらえるような気がするんだぁ~。

 それに、彦八をとりまく人々・・・

 太閤秀吉を抱腹絶倒させ「天下一のお伽衆」と呼ばれながら、「笑いで人を救う」という悲願を果たせぬまま世を去った初代安楽庵策伝和尚。策伝和尚の名と心を受け継ぎやがて彦八と出会うことになる飛騨高山藩士・田島藤五郎~笑いを愛する心に反して笑いの才はまったくないが文武に秀でた飛騨の麒麟児。彦八の大切な幼馴染であり心から笑わせたいと願う少女・里乃。彦八とは同郷の出である仕方咄の創始者・役者のように整った容姿をもつ鹿野武左衛門。嫌味な敵役・伽羅小左衛門と四郎斎。彦八が育てた弟子たち~訳ありの青年・梅春と、がさつで図々しいが師匠思いの彦蔵。

 色んな想いを抱えて生きるこの実に魅力的な人々を、いきいきと強かに爆ぜる彦八の生き様を、役者の生の肉体で見せてほしいんだぁ~。彦八の話す心地よい上方言葉を、役者の肉声で聴かせてほしいんだぁ~。そして、人々が暮らす町の賑わいと喧騒を舞台の上に見せてほしいんだぁ~。

 さて、彦八は誰が演ってくれるのかなぁ~。
 



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2016-07-09

人魚ノ肉 : 木下昌輝

『人魚ノ肉』 木下昌輝

 人魚の血を飲むと不老不死となり、肉を食むと妖となる。

 少年の日、岡田以蔵、坂本龍馬、中岡慎太郎の三人は土佐の浜で人魚の死骸を見つけ、その肉を食った以蔵と龍馬は三日三晩狂い続けた。以蔵が隠し持った人魚の血と肉はその後、新選組の手に渡り、隊士たちを妖異の世界へ引きずり込んでいく。

 時代小説というよりはキャラクター小説の類かもしれない。坂本龍馬、平山五郎、沖田総司、安藤早太郎、佐野七五三之助、沼尻小文吾、近藤勇、斎藤一、岡田以蔵ら幕末を彩る有名志士や新選組隊士たち・・・ 史実や物語として語られる彼らの人物像をリンクさせつつ、「人魚の肉」によって彼らが味わうこととなった残酷でグロテスクな物語が語られる。

 幕末モノの物語なり、実録なり、小説なり、マンガなり、ゲームなりを楽しんだことのある者にとっては馴染の深いキャラクターたちが、怪異に見舞われ、妖へと身を変じ、残酷な運命に苛まれ狂う姿に、あまり大っぴらには口にできないような嗜虐的で暗い興奮を覚える。




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2016-05-14

宇喜多の捨て嫁 : 木下昌輝

『宇喜多の捨て嫁』 木下昌輝

 こういうのが読みたかったんだぁ~~っ!

 城主にまつわる黒い噂を少し控えめな調子で記した展示板を岡山城の天守閣で目にした時から、その城の主であった宇喜多直家には、もやもやした暗い興味を感じ続けていて・・・

 「直家の話が読みたいっっっ!!」 とにかく直家を主役にした小説を探して読んだ上田秀人『梟の系譜 宇喜多四代』での直家は私の期待に反した「いい人」で、「う~ん・・・、そういうんじゃなくて・・・」とぶすぶす燻る不満を託っていたのだ。 
 
 あ~でも、この直家は・・・いい。とても、いい。哀しく、妖しく、禍々しく、業の深い「悪人」だ。

 謀略のための捨て駒ならぬ「捨て嫁」として美作の後藤家に嫁ぐ直家の四女於葉の視点から直家の悪辣で非情な姿が語られる「宇喜多の捨て嫁」を皮切りに、誰とも知れぬ怪しい声が幼少の八郎(後の直家)に語りかける「無想の抜刀術」、妻を娶った直家の小さな幸せとその無惨な結末「貝あわせ」、主家である浦上宗景、その嫡男松之丞と直家の想い、情念がからみあう「ぐひんの鼻」「松之丞の一太刀」、直家の謀に自ら身を投じ直家の楽士となった室津浦上家家老・江見河原源五郎が石山城下で目にしたもの…「五逆の鼓」。宇喜多直家が身を置く濃い闇を、いくつかの時、いくつかの視点で切り取って描く。

 宇喜多直家はいかにして戦国の梟雄となったのか。

 妖しく、狂おしい圧を感じる時代小説に出会えて嬉しい。


≪蛇足≫
 戦国の武将が「逆に・・・」なんていう言葉遣いをするのが少し気になったりはしたが、そんなの問題じゃないと思えるほどの圧力のある小説だった。

 直家の両脇を固める二人の武闘派家老~顔中傷だらけの槍遣い岡平内、刀のような鋭い目つきに大太刀を得物とする長船又三郎、軍学に明るく聡明な富川平右衛門、色仕掛けの暗殺もやってのける美貌の刺客・岡剛介。この主従の絵面にもゾクゾクする。もし彼らが戦国ゲームのキャラクターだったら・・・数多の女性を虜にするんじゃないか。


『梟の系譜 宇喜多四代』感想…http://neconohitai.blog71.fc2.com/blog-entry-647.html

 ↓表紙絵が山本タカト氏であるのも嬉しい。



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