2016-10-22

青蛙堂鬼談 : 岡本綺堂

『青蛙堂鬼談 - 岡本綺堂読物集二』 岡本綺堂

 「青蛙堂主人」を名乗る好事家に招かれた男女が一つずつ怪談を語るという体裁で十二のお話しを収めた『青蛙堂鬼談』と、附録として「梟娘の話」「小夜の中山夜啼石」の二篇。

 タイトルは「鬼談」となっているが「奇談」とも「綺談」とも呼べそうな、不可思議で怖ろしい、とともにどこか風雅の香りのする怪談集。

 往来の多い渡し場のある利根川の岸に立つ座頭(「利根の渡」)。夏~秋~初冬と移っていく信州の山の季節感(「兄妹の魂」)。上野広小路の道端に薄い蓙をひいて夜店を出す落ちぶれた浪人風の男(「猿の目」)。満州の戦地の村の柳(「窯変」)。竹藪が繁り狸や貉の棲家であった明治半ばの新宿あたりの様子(「黄い紙」)。月夜に冴える笛の音と月光に照らされる芒の河原(「笛塚」)。泣き弱ったこほろぎの声がきこえ、九月の末でも火鉢をひき寄せたいくらいの夜寒がしみる白河の旧家の奥座敷(「龍馬の池」)。

 情景の描写が鮮やかで艶めかしく、昔の歌や物語の舞台になった土地に心が旅するような楽しみもある。




FC2 Blog Ranking
スポンサーサイト

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

2016-06-25

修善寺物語 : 岡本綺堂

修善寺物語 : 岡本綺堂

 もう随分昔の話・・・多分、私が中学か高校生だった頃、皇なつきさんの漫画で『修善寺物語』を初めて読み、あまりにドラマティックであまりに美しいその物語にたいそう心をゆさぶられ、ぜひとも原作を読みたいと思ったのだ。(「岡本綺堂」という作者の名前もとても幽婉なものに見え、魅惑的だった。)

 今のようにネットで手軽に本を探すことのできない当時のこと、市内の大きな書店に行って「岡本綺堂の『修善寺物語』はありますか?」とたずねてみたのだけど、絶版となっていたようで取り寄せなどでも入手できず、そのまま何年も経ってしまった。

 十年ほど前、神田の古本屋めぐりをした際に函入りの旺文社文庫版を入手。昭和42年発行、当時の定価120円。(購入価格は900円)

 一幕三場の戯曲。それほど長いものではないけれど、その中に面打ちの名人・夜叉王の尋常ではない己の技への執着ぶり、鎌倉の二代将軍・頼家の悲劇、頼家と夜叉王の娘・桂の恋などがぎゅうと凝縮されています。

 特に夜叉王の娘・桂がとても魅力的。一場では、職人としての生活に埋もれようとしている妹・楓やその婿・晴彦を蔑み、自分は貴人の側に仕える事を夢見る上昇志向の強い鼻持ちならない女という印象が強いのだけど、念願かなって将軍頼家に仕えることとなった後の二場では、静かな宵の風景の中で二人が心を通わせる気配が描かれ、その後三場の悲劇へとなだれこむ。

 何度打っても死相が現れる頼家の面。

 北条によって夜襲をかけられる頼家の館。

 頼家の面をつけ身代わりをつとめる武者姿の桂。

 娘の断末魔の顔を手本に写す夜叉王。

 一場・二場を受けて劇的に展開する三場は読み応えあります。今度は芝居で見たい。


 

FC2 Blog Ranking

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

2016-06-11

岡本綺堂読物集(一) 三浦老人昔話 : 岡本綺堂

『三浦老人昔話 岡本綺堂読物集(一)』 岡本綺堂

 私が子供の頃には「世界最長寿の男性」泉重千代さんがまだご存命でいらして、テレビに映る彼の人を見ながら「江戸時代の人が生きている・・・」と思うと、子供心に「歴史」と「日常」、「現実」と「昔話」の境がゆらぐような不思議な感じがしたものだ。(しかし、今では重千代さんはもう少し後の生まれではないかという説が有力であるらしい。)

 江戸の残り香の薄れゆく中、三浦老人が明治の若者である「わたし」に語って聞かせる「昔話」もまた、「歴史」と「日常」、「現実」と「幻想」の境に揺蕩いつづけているものであるような気がする。その「昔話」からは目の前の現実の生々しさは拭い去られ、哀しみも、残酷さも、恐ろしさも、可笑しみも、洗い晒したようにさらりとしているが、江戸を生きた老人のある生活感の中で語られる話には、どれだけ時が過ぎようと消えることのない生きた人の感触のようなものがある。その感触はいつも「歴史」と「日常」、「現実」と「幻想」の狭間にあって、ふとした隙に私たちの肌をなでていくのではないか。




FC2 Blog Ranking

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

プロフィール

やぶからねこ

Author:やぶからねこ

FC2ブログランキング

FC2ブログランキング

ブログランキング
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村 漫画ブログへ
カテゴリー
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
検索フォーム
カレンダー
10 | 2017/11 | 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
魂に喰い込んでます
月別アーカイブ
Powered By FC2ブログ

Powered By FC2ブログ
ブログやるならFC2ブログ