2015-06-20

MM9 : 山本弘

『MM9』 山本弘

 今、わたしたちが暮らしているのと変わりない、ただし、海から、山から、空から、地中から、「怪獣」が出現する世界。「怪獣」が人間社会にもたらす被害は地震や台風などの自然災害と同列に扱われ、有数の「怪獣大国」である日本においては、「気象庁特異生物対策部」略して「気特対」がその対策にあたっている。

 人智を超えた怪しいものが人間世界に侵入し人々をパニックに陥れる「怪獣小説」としても、「気特対」職員たちの日々の活動と奮闘ぶりを描いた「お仕事小説」としても、「怪獣」という存在をいかに説明づけるかという「SF小説」としても面白い。すべて目の前のスクリーンで見ているような気がしてわくわくする。

 そして・・・やはり私は作者の小説を読むと何だかノスタルジックな気分になるらしく・・・、作中のある人物が語るとおりのことが起こるとすれば、これは「いずれ失われる過去」の(いや、もしかしたら「あらかじめ失われた過去」の)物語であるかもしれず、だとすると、ラストで交わされる「気特対」若手メンバー二人の会話はとても洒落たエンディングだなと思うと同時に、何かひどく切なく感じられるのだ。



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2014-04-12

去年はいい年になるだろう : 山本弘

『去年はいい年になるだろう』 山本弘

 山本弘氏のSF小説を読むとどうもノスタルジックな気分になるらしい。と言っても、氏の小説を読むのはこれが2作目なのだが。このエントリーを書くにあたって、以前読んだ『アイの物語』 ~本作中でも重要なアイテムになっている~の感想を読み返してみたのだが、その時も私は何やらノスタルジーにとらわれていたようだ。

 2001年9月11日、ニューヨークのワールドトレードセンタービルに民間の旅客機が突っ込んでいったその日、24世紀の未来から「ガーディアン」と名乗るアンドロイドたちがやってきて、人の傷つかない未来へと歴史を改変し始める。

 「人間を守りたい」という本能を持つアンドロイドに優しく侵略、制圧された地球。作家・山本弘の前に未来の山本弘たちからのメッセージを携えて現れる、外見も中身も100%好みのタイプの美少女アンドロイド。無数のパラレルワールド。

 物語自体の感想としては、「う~ん、そーゆーとこに落ち着くのかぁ・・・」だったのだけど、この物語を読みながら、私の思いはずっと懐かしい過去に飛んでいたのだ。

 まず、私の頭の中のスクリーンにユラユラと浮かび上がったのは、〇十年前、私の通う女子校の学園祭に遊びに来ていたSFファンらしいお兄さん方の姿。私にとっての「SF」っていうのは、あの青年たちの姿をしている。

 次に私の心をとらえたのは1章の冒頭の言葉

 『二〇〇一年 かつて、この言葉には魔法のような響きがあったのを、僕は思い出す。』

 80年代の後半、『1999年の夏休み』という映画にハマっていた私にとって、少年たちが終わらない夏休みを繰り返す「1999年」は、作中の「僕」にとって「2001年」がかつて魔法の響きを持った輝かしい未来であったのと同様に、「世紀末」という特別なファンタジーの中にあった。

 もちろん現実の1999年は一日一日過ごす日常の延長にあって、苦しい思いで見つめ、憧れていた少年たちの「1999年」を横目に過ぎて、今ここで私は2014年を迎えているわけだけども。

『アイの物語』感想http://neconohitai.blog71.fc2.com/blog-entry-266.html






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2009-01-14

アイの物語 : 山本弘

『アイの物語』 山本弘

 21世紀初頭に起きた、AIのヒトに対する反乱~ヒトとAIとの戦闘~。世界がマシンの管理下に入って久しい。ヒトはわずかに点在するコロニーに生息するのみ。

 マシンに囚われた一人の少年にAI・アイビスは語りかける。「私はあなたと話がしたいだけ」

 「これから君に、ヒトとマシンについての真実の歴史を、決して話さないと誓う」

 アイビスが少年に語り聞かせるのは、かつてヒトが記し残した物語。ヒトの想い、希望、願いが込められた数々の物語。そして、ついに『真実』に目を向けた少年に語られる、ヒトとマシンの真実の物語。

***

 空想の未来の物語なのに、ノスタルジックな気分になるのは何故か? AIと人間の相克 ~ 古くから小説やマンガで読んできたテーマだからか。それとも、人としての美しさは、すでに物語の中に封じ込められたものとしてしか存在しない・・・と思う喪失感からか。

 「理解」「許容」「希望」・・・切ない願いを物語として語ったヒト。ヒトの願いを自らの現実として生きるAI。語り継がれてゆくヒトの物語、AIの物語。


***

 作中、AIの生活実感のようなものが描かれていて面白い。SFに詳しい方なら言葉遊びや細かいニュアンスを楽しめる部分があるんだろうなぁ・・・と思うけど、残念ながら私には検知できず。

 美しく切ない物語群なんだけど、頭の中で「物語にはまってはいけない」という警告音が鳴り続ける。私はすでに『解体屋外伝』という物語の方に深くはまっちゃってるからねぇ。

 「物語」の力、その取り扱い方法については河合隼雄『おはなしの知恵』に易しく書かれている。




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