2013-04-13

王城の護衛者 : 司馬遼太郎

『王城の護衛者』 司馬遼太郎

 京都守護職に任じられ、悲壮な覚悟で動乱の都に赴いた会津藩主松平容保。人斬りが横行し、様々な政治的思惑が入り乱れる複雑怪奇な京の情勢の中、自らに政治的感覚や策謀の才のないことを知る容保は、いかなる策も用いず、何ら思想も掲げず、ただ「王城の護衛者」としての至誠を貫くことを自らの正義とした。

 しかし、王城を守護するための仕事は容保を血にまみれされ、宮廷に跳梁する過激派公卿や各藩の思惑だけでなく、藩祖以来の家訓によって守るべき宗家・将軍慶喜の度々の変心に翻弄される容保と会津藩はじりじりと窮地に追い込まれてゆく。

 時勢を読み、主義・思想を掲げ我が道を切り拓くのではなく、政治的な駆け引きのすべてを放棄して、ただ孝明帝から受けた親愛・信頼への感動の中で、己の誠を貫かんとした松平容保の生き様を、可憐なものとして書き留め、その怨念の品の存在で本作を締めくくった作者の筆には、時代の転換期をそれぞれに生き、それぞれの役を負った者たちへの敬虔な想いが満ちている。




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2012-07-21

新選組血風録 : 司馬遼太郎

『新選組血風録』 司馬遼太郎

 有能だなぁ、山崎烝。

 何かとうるさい土方のおつかいをこなしてぬかりがない。『燃えよ剣』でも、総じて活躍はデカいが問題行動も多い新選組幹部たちの中で、その確実で緻密な仕事ぶりが随所で光っていた山崎烝。その有能さ・・・ちょっと好きになりそうだったぞ、山崎烝。

 副長のご機嫌を損ねて粛清されちゃう隊士、女を愛した隊士、男に溺れる隊士、隊に入り込む長州、薩摩の間者、近藤、沖田が身に帯びた虎徹、菊一文字 ~ 日々血が流れる動乱の京で、新選組隊士たちが起こし、関わり、或いは巻き込まれた、激烈ながらもどこかさらさらとした可笑しみが漂う、妙に味わいのある大小の事件、その顛末。

 それらの事件のほとんどで土方の意図に添う“仕事”をしている監察・山崎烝。嫌味なくらい有能だな、山崎烝。「池田屋異聞」で描かれるその陰湿な一面に、芽生えかけた私の淡い思いは萎んだが、その陰湿さも有能な男にはいいアクセントだ、山崎烝。


  

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2012-07-14

燃えよ剣 : 司馬遼太郎

『燃えよ剣』 司馬遼太郎

 『まあ、小説に書くしか仕様がないか。』

 うぉぉぉぉ~ん! カッコいいよぉ、シバリョー! 描かれる土方歳三のドラマにもさることながら、作中、突然つぶやかれる作者のこの一言に・・・感動したのだ。

 時代の転換点。理屈や常識では割り切れない力によって突き動かされていく歴史。その中で、“運命”としか思えないような役割を演じる者たち。新しい時代へと大きくうねる流れの中に、ただ激しく時流に逆らう近藤や土方のような人物を生み落とし輝かせた・・・そんな不思議を起こす歴史というものへの作者の感動。

 合理的な分析ではむしろ真実味から遠ざかってしまう、そんな「なんだか変な、筋のとおらない、もやもやとしているくせに一種活性を帯びたもの」を前に、『小説に書くしか仕様がないか』とつぶやく作者の姿に、ビッキーンと痺れてしまう。

 幕末というこの上ない時と舞台を得て、思想も政治も関係なく「喧嘩」に生涯をかけた土方歳三の生き様。

 土方ひとりに焦点がしぼられているため、幕末の志士たちや新選組隊士たちの群像ドラマとしての面白さは薄いように思えるものの、砲弾と銃弾の雨を前にしてギラリと刀を抜き放つ土方の背中には、“いくらなんでもそりゃムリだろ”とつっこみたくなりながらも、やっぱり胸がすくというか、ハートが震えるというか・・・。


 

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2010-06-19

エセ竜馬かぶれ その1 ~ 竜馬がゆく : 司馬遼太郎

 竜馬に憧れているわけでも、心酔しているわけでも、竜馬を愛しているわけでもないが・・・“竜馬もの”の作品は面白いと思う。この際、竜馬ブームに踊らされてみようじゃないか。まずは、“竜馬もの”のバイブルのようなこの長編から・・・。

 司馬遼太郎がこの小説を書くまでは、坂本竜馬ってそれほど愛される存在では無かったという話も耳にするので、(と言っても、私はシバリョー以前の竜馬を知らず、何とも言えないが・・・)、おそらく発表当時、同時代の志士たちと比べても際立って斬新な価値観と時代感覚を持つ竜馬という男の存在と、その鮮やかな生き様を描く著者の筆は、奇跡のような幕末史の一幕へと読者の目を開かしめ、その胸を熱く高揚させだことだろうが・・・今となっては、何となく漂う啓蒙臭、ドラマに盛られた著者の主観や見解が少~し臭う。

 とは、言いながら・・・溢れる想いを乗せた著者の言葉には、思わず顔がほころんでしまうようなところも・・・。

 『勝には、妖精のにおいがする。』

 先進的な知識と智恵と共に、江戸っ子らしい軽やかさと悪戯っぽさを持ち、幕臣でありながら、討幕を期する竜馬を可愛がり、多くの人に引き合わせ、結果的に時代の大きな節目を演出した勝海舟。知ってか知らずか、時代の中でそういう役を振られた勝という人物への、著者の深い感嘆が、“妖精”という言葉となって溢れたのだと思うと、微笑ましいと同時に、何か厳粛なものをも感じずにはいられない。


 さて、幕末の風雲の中を“竜馬がゆく”のであるが、物語はすでに誰もが知っている通り。

 序盤・・・武市半平太、桂小五郎ら並んで、剣術使いとして名を馳せる竜馬。剣士としての竜馬の強さは凄まじく、後の激烈な世情の中、命をつないでおれたのは、この剣の腕もあってのことかと思わせる。

 中盤・・・神戸海軍塾~亀山社中の設立と、進むべき道は見つけたものの、手に入れた船を失ってばかりいる、まだ翼を持たない臥竜。

 物語半ばまでは、竜馬の活躍よりも、時流を牽引していく長州の凄まじい狂乱ぶり・暴発ぶりがドラマの中心となる。その悲壮なメチャクチャさには開いた口がふさがらない。よくまあ、この状況に一応の収拾をつけたものだ。
 
 薩長同盟のあたりからの竜馬の活躍ぶりは、人間の域を遥かに超えて神憑り、まさに鬼神の如くである。大政奉還の後、間もなく彼の命が終わったことを思うと、“いかん”と思いつつも、ついセンチメンタルになってしまう。あるいは、竜馬も天が下したいっぴきの妖精だったのか? かなり魔性めいた妖精ではあるけれど。

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2009-11-18

果心居士の幻術 他 : 司馬遼太郎

 越後の上杉、甲斐の武田に仕えたものの、謙信にはその技をむしろ気味悪がられ、信玄には結局命をとられてしまった飛び加藤(「飛び加藤」)。松永久秀の下で信長の命を狙った果心居士(「果心居士の幻術」)。石川本願寺の戦力となった雑賀の鉄砲衆(「雑賀の船鉄砲」)。信長を脅かす武田方の忍者・知道軒道人と家康が放つ服部半蔵(「忍者四貫目の死」。

 特異な戦闘力と不思議な術を持ち、戦場で活躍・暗躍する忍や鉄砲衆だが、その姿を語る話はドラマチックでもヒロイックでもなく、しょぼしょぼとして泥臭い。

 時代は戦国の乱世。戦場は血なまぐさく、残酷、非情。しかしシバリョー描く異能の忍たちには、どこかあっけらかんとした明るさ、のほほんとした可笑し味がある。白々と天日に晒されたような乾いた感触が残った。

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