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2020-05-23

人間のように泣いたのか? : 森博嗣

『人間のように泣いたのか? Did She Cry Humanly?』 森博嗣

 キョートで開かれる人工生命と人工知能に関する国際会議。その席上では、ウォーカロン・メーカの連合組織・ホワイトによる人間の生殖に関する画期的な技術についての発表が予定されていた。会議の実行委員であるハギリは、その発表を武力で阻止しようとする計画のあることを知らされる。

 人間をはるかに凌ぐ演算能力を持つ人工知能、人が作った生命であるウォーカロン、長い寿命を得た人間。すでにかなりの現実味を帯びて感じられる、それらが共存する世界、様々な共存のかたちを、いくつかのシチュエーションの中で提示してみせたWシリーズ。

 最終巻を読み終えたわけですが・・・やっぱり、色々とわからないことが残ってしまった。すべてがクリアになる結末に向かってストーリーが進んでいるわけではないなぁ・・・と途中から感じてはいたので、驚いたり、がっかりしたりはないのだけど、「あ~、やっぱり他シリーズも読まなきゃいけないんだなぁ」・・・と、そういうプレッシャーが重いです。ふぅ。

 これからボチボチとでも答えにたどり着けるといいなぁ、と思っている疑問は主に以下の4つ。

 1.シリーズ序盤でハギリ博士の前に現れた少女ミチルは何者なのか(ミチルを知るきっかけになる本に仕込まれたメッセージの謎も含め)。

 2.そもそもなぜハギリ博士は襲われたのか?(ウォーカロンを判別する技術って、あの時点でそんなにやばいものだったのか?) そして、なぜマガタ博士はハギリに接触してきたのか。

 私にとっていちばんの謎は、「なぜハギリなのか?」ってとこなんですよね。これは「ハギリ博士は何者なのか?」がわからないと解けないのかな、とも思うのだけど。読者の方々はハギリ博士が何者かわかってるもんなんでしょうか?

 ついでに言うなら、ハギリ博士というのは、この作品世界の中において割と一般的な人なのか、それともかなり稀なタイプなのか? 作中に「変わってる」とか「変人」とかいう言葉も出てくるから、後者なのかなぁと思うけど、私にはハギリ博士がそんなに変わった人とは思えなくて、それがよけいに「なんでハギリ博士なのか?」をわからなくしちゃってる気もする。

 3.マガタ博士はなぜ今になってサエバ・ミチルを取り戻そうとしたのか。

 4.キガタの容姿がクジ・アキラに似ている・・・ということは・・・?

 これは、これから書かれるのかもしれないことも含めて、他シリーズに広がっている部分を読んでいかなきゃいけないのかな。楽しみではあるけど、しんどくもある。



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2020-05-09

天空の矢はどこへ? : 森博嗣

『天空の矢はどこへ? Where is the Sky Arrow?』 森博嗣

 ウォーカロン・メーカ イシカワの社長ら関係者を乗せたチャーター機が消息を絶った。時を同じくして、九州にあるイシカワの施設がテロによって占拠されたとの情報がもたらされる。

 警察やウォーカロン・メーカの連合組織ホワイトの部隊とともに施設に突入したハギリたちが目にしたのは、施設の従業員である多くの人間、ウォーカロンの遺体と、自分自身のほとんど全てを消し去った施設のメインコンピュータ・カンナだった。

 うっすらと物悲しい気分に包まれて読んだ。この物悲しさはどこから来たのか・・・。

 あと一冊と少しでこの物語が終わってしまうという別れの寂しさか。動かなくなって打ち捨てられたロボット(とそのロボットが過ごした過去の時)のイメージに感傷のスイッチを押されたからか。何か深い欠落を感じさせた百年シリーズのミチルとロイディの姿を思い出すからか。ハギリは何者なのか? ハギリは自分が何者であるかを知っているのか?と落ち着かない気持ちになるからか。本来の多人格性を抑制されて育つ人工知能が『切り捨てられる部分に哀愁を抱く』というオーロラの言葉が刺さったせいか。
 
 さて、最後の一冊を読もう。すべてが明らかになるわけではないと思うけど。




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2020-04-18

血か、死か、無か? : 森博嗣

『血か、死か、無か?  Is It Blood, Death or Null?』 森博嗣

 フランスの修道院で発見されたベルベット ~ ハギリたちに危害を加えようとしたために停止させられたスーパーコンピュータ ~と通信した形跡のあるコンピュータ・イマンの調査のため、ボッシュ博士の要請を受け今度はエジプトへ発つハギリ。

 調査は思ったほどの成果を上げぬまま終わるかに見えたが、蘇生したナクチュの冷凍遺体、ベルベットのいた修道院のオーナの正体、百年前の殺人事件・・・様々な事柄の繋がりが見えはじめ・・・
 

 ここにきて、堰を切ったように一気に流れ込んできたなぁ、シリーズ初めの頃からチラチラと姿の見えていたあの人達の物語が。これだけ読むと百年シリーズの続編か?!と思うほど(あ~、百年シリーズ読み返さなきゃいけない)。え~っと、そうすると、ベルベットやオーロラや、アフリカのテルグのウォーカロンたちは、全体の中のどういうパーツとしてつながっていくんだ? 

 う~ん、このシリーズ、あと2冊で収束するんだろうか? いや、むしろさらに拡散するのか・・・。


 ここまで読んできて、モヤモヤする疑問がいくつか・・・

● で、結局、イマンが「人間を殺した最初の人工知能」と呼ばれた理由は? (あ~、これは今回のストーリー終盤で見せたみたいに、自己の判断でユーザーに同調しない振る舞いをすることがあるってことか・・・な?)

● ハギリ博士の夢に現れたオイルのイメージは何なの? 何かに繋がるの?

● 「デボラ」と「デボウ」の発音の違いには何か意味があるのかしらん?

● 「モラン」って誰だっけ?




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2020-04-04

ペガサスの解は虚栄か? : 森博嗣

『ペガサスの解は虚栄か?  Did Pegasus Answer the Vanity?』 森博嗣

 パリの博覧会から逃亡したウォーカロンにはクローンを産む疑似受胎機能が搭載されていた可能性がある。スーパーコンピュータ・ペガサスからの示唆を受けて、ハギリたちは、そのウォーカロンが潜んでいると思われるインドの資産家のもとを訪ねる。

 八人の夫人と三人の子を持つ資産家・ケルネィは最近生まれた三人目の子の出生に不審を抱いている。

 人間、ウォーカロン、クローン・・・どこからが人間で、どこからが人間でないものなのか? それらを区別するものは何なのか? 

 このシリーズ中、繰り返し提示されてきたこの問いの中で、今回繰り広げられるのは、この作品世界においては随分旧態依然としたものに見える血縁に絡んだ愛憎劇。合理的とは言えない行動を彼らは何故とったのか?

 肉親であるが故に生まれる感情、関係とともに、人と人が、人とウォーカロンが、人とAIが、AI同士が何等かの関係性を保つことによって生まれる様々なものが描かれる。エピローグで語られるペガサスの状況は・・・ちょっと誰か、何とかしてあげてほしい。


 ハギリ博士、何だか守られることに慣れちゃって、ちょっと駄々っ子のようになっていないか? もうちょっと、護衛の皆さんの言葉に耳を傾けるべきじゃないでしょうか? そういえば、『デボラ、眠っているのか?』でだったか、「ハギリ博士って、ひょっとしてウォーカロンなのか?」って思った瞬間があったんだけど、あれは何でそう思ったのかなぁ。




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2020-03-22

青白く輝く月を見たか? : 森博嗣

『青白く輝く月を見たか?  Did the Moon Shed a Pale Light?』 森博嗣

 長い間、人間社会のあらゆるデータを収集し、学習を積み、今や自分の思考の中に閉じこもってしまったスーパーコンピュータ・オーロラ。五千メートルの深海に引きこもってしまったオーロラとの対話を試みるべく、北極基地へと赴くハギリ。

 詩情を解する孤独なAI。AIと人間の間に生まれる友情、恋愛。氷に閉ざされた深海。青白い月。親愛なる人へ贈る花束。

 これまでになくロマンティックなお話。ちょっと感傷的な古いSFを読んでいるような感触。



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2020-03-07

私たちは生きているのか? : 森博嗣

『私たちは生きているのか?  Are We Under the Biofeedback?』 森博嗣

 ウォーカロンが大勢集まって暮らすという村の情報を得て、ハギリたちはその村~『富の谷』があるというアフリカ南端へと赴く。無邪気な案内人ローリィに連れられて『富の谷』を訪れたハギリたちの前には・・・

 様々なかたちの「生きているもの(仮)」たちが登場する。最後のページを閉じた後、改めて表紙を見て、「ああ、そういうタイトルだったのだなぁ」と気づく。

 自分を「人間ではない」「生きていない。生きているものではない」というローリィの真意、彼の生のかたちについては、もう少し考え続けてみたい。



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2020-02-22

デボラ、眠っているのか? : 森博嗣

『デボラ、眠っているのか?  Deborah, Are You Sleeping?』 森博嗣

 『存在することを、生きているというのだ、人間はね』

 フランスの古い修道院で発見されたスーパーコンピュータとそれを守って暮らすウォーカロンの一群。また、ネットに遍在し活動する「トランスファ」の存在が明かされる。

 人工知能同士の演算戦。人間が生活する場所とは異なる領域で絶え間なく続いている戦闘。・・・このシリーズ、『スカイクロラ』のイメージともつながってきたなぁ。うん、そういえばこのシリーズの最初から、ウォーカロンの在りようはキルドレを連想させるものだったな。

 ハギリ博士、ヴォッシュ博士二人は、あるものを信じて、ある選択をした。その選択は何につながっていくのか? 何をもたらすのか?

 ヴォッシュ博士が口にした情緒的とも思える言葉が印象に残った。この言葉は、この先の物語を読む中で、どのように響いてくるだろうか。




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2020-02-08

風は青海を渡るのか? : 森博嗣

『風は青海を渡るのか?  The Wind Across Qinghai Lake ?』 森博嗣

 シリーズ三作目。

 生殖による人間の誕生が限りなくゼロに近づいた今なお人間の子供がうまれている村・ナクチュ特区で、ハギリは人類の聖地ともいえる遺跡の存在を知る。また、その遺跡と関係すると思われるスーパーコンピュータの存在が明かされ・・・

 人はどのように生きたいのか。どうありたいと願うのか。人はウォーカロンに何を望むのか。ウォーカロンは何かを願うのか。人とは、ウォーカロンとはどういうものなのか。人の意志や願いは現実に何らかの影響を及ぼすのか。人は、ウォーカロンは、現実とどう向き合うのか。そんなことをまんまと考えさせられる。

 そして、マガタ・シキは何をしようとしているのか。

 早く先を読み進めないと。



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2020-01-25

魔法の色を知っているか? : 森博嗣

『魔法の色を知っているか? What Color is the Magic ?』 森博嗣

 Wシリーズ、順調に読み進めております。と同時に、マガタ・シキ博士が天才的な科学者というよりも、もうほとんど女神の如き存在感で登場するのを見るにつけ、これまで敬遠してきたS&M、V、Gの各シリーズも結局読まなきゃいけなくなるんじゃないのか? と、ちょっと恐怖しております。

 限りない寿命を得た一方で、子供を産むことができなくなった人間。『ウォーカロン』として生産される、人間とほとんど違いのない存在。・・・ハギリたちは今でも人間の子供が生まれているという地・チベットに向かう。

 物語世界の様相は割とわかりやすく提示されているし、ハギリたちを襲う事件はSFアクション映画さながらな感じだし、登場するキャラクターの造形もなんだか・・・このシリーズはエンターテイメント色濃いめなのかな。

 語り手であるハギリ博士、ご本人にあまり守られるべき自覚がない割に(なんで襲われるのかもわかんないんだから仕方ないといえばないんだけども)、随分厳重に献身的に守られてる。そのあたりの機微というか理由も、これから読み進めるうちにわかってくるのかなぁ。 




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2020-01-11

彼女は一人で歩くのか? Dose She Walk Alone ? : 森博嗣

『彼女は一人で歩くのか? Dose She Walk Alone ?』 森博嗣

 長いシリーズものを読み通す根気に自信がなくて、これまで敬遠してきたのだけれど、この後に続くらしいWWシリーズが面白そうだし、これから読もうと思っている『赤目姫の潮解』をより楽しむためにも、このシリーズは読んでおいた方がいいのかな・・・と思い、意を決してとりかかりました。読み始めてみるとページがどんどん進んで、意外と早くシリーズ読み通せそう。

 人間の細胞から培養した人工細胞の身体に神経回路を人工的にインストールして生産される『ウォーカロン』。すでに人間との判別も困難になった『ウォーカロン』が人口のかなりの部分を占める世の中。科学者ハギリは突然命を狙われる・・・。

 世の中の現状を提示し、そして事件が起こる・・・これ一冊がシリーズのイントロダクションのような印象。

 頭の中から思考の糸をぐるぐる引き出してくれるのは、森作品の常のことだが、これまでのように架空の世界の中で純粋に思考するという感覚とは少し違って、本作では思考がかなり現実に引き寄せられる感じ。

 森作品を読んでいてゾワゾワするのは、リアルとは少し質感の違う夢の中のような視覚が開かれていくこと。それ以上にゾクリとするのが、その視覚が裏切られる、または更新される瞬間があること。さあ、この作品はこれから何を見せるのか・・・。



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