2014-03-22

またお会いしましたね ~ 夢幻紳士 新・怪奇篇 : 高橋葉介

『夢幻紳士 新・怪奇篇』 高橋葉介

 『また お会いしましたね』 

 帯に書かれたこの言葉に目がとまった瞬間に本屋の棚の前で金縛りにかかってしまった。それはもう、ヘビに見込まれたカエルみたいに。あの黒衣の青年の目がこちらを見ているんですから。夢見がちな娘なら誰だって、彼が目の前で名乗ってくれるのを心待ちにしてるんだから。

 魔実也氏の設定は初期の「怪奇篇」のものに近くなってるのかな。現実世界に知人も友人もいる、この世で生活してる魔物。

 魔実也氏の往くところには、自動人形の少女、沼のまわりをぐるぐる回りづつける心中者、隠れんぼの小鬼、死体の持ち物を運ぶ鴉、吸血鬼、蟲になった兄妹・・・この世の裂け目の向こう側の、妖しい、恐ろしいものたちが姿を見せるが・・・。

 『僕と一緒にいれば まったく安全というものですよ』

 謎めいた黒衣の青年に、恐ろしい悪夢から救われた女の子たちは、いつか成長して大人になっていくけれど、魔実也氏は歳をとらない永遠に謎の青年のまま。


 『またいつか どこかでお会いしましょう』

 私がおばあちゃんになったとき、また魔実也青年に会いたいものだなぁ・・・と思う。




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2009-11-11

夢幻紳士 回帰篇 : 高橋葉介

 '80年代に「メディウム」等に連載されていた「夢幻紳士 怪奇篇」のリメイク。

 「新装版 夢幻外伝」のあとがきに

 全て今の絵で描き直してみたら、どんな作品になるか自分でも見てみたいものです。
 もっともそんな仕事は来ないでしょう。「同じアイディアで、楽にもう一仕事したいだけだろ?」と言われるだけですね。


 と冗談めかして書かれていたことを、本当にやってしまったのですね。

 同じネタで書くわけだから、かなり趣向を変えて楽しませてくれるのだろうと期待していたんだけど、絵柄以外はわりと“そのまんま”で少しがっかり。

 『吸血鬼』『木精』『蜘蛛』『幽霊船』はわずかに設定や雰囲気、話の運びを変えてあるけど、海を漂う船の幻想性を強調して、長く見てきた夢の終わりを告げるエピソードとして、巻末に置かれた『幽霊船』以外は・・・

『吸血鬼』
 「怪奇篇」・・・“吸血鬼”から、犠牲になった“ご婦人”を取り返すために、妖しげな婆さんの作った水晶玉を使用。さらに、取り返した“ご婦人”を依頼人である少女に返した後、少女から「鬼!」と言われるような振る舞いをしている魔実也氏。

 「回帰篇」・・・魔実也氏自身の能力で、“ご婦人”を取り返してます。キメ台詞「馬鹿め お前に出来る事は僕にだって出来るのだ!!」

『木精』
 木精にとりつかれた男の死の話であるけれども・・・
 「怪奇篇」・・・男と魔実也の間にほんの数回ではあるけど交流あり。

 「回帰篇」・・・男の死は、男と魔実也が出遭ったその日の出来事になってる。

『蜘蛛』
 「怪奇篇」・・・美しく怖ろしい蜘蛛女から危うく救われたいたいけな少女が、実は蜘蛛へと育っていく芽をその身に秘めている。

 「回帰篇」・・・最初から少女の方が蜘蛛女よりも一枚上手。

 ・・・どれも、リメイク前の雰囲気の方が好きなのです。

 魔実也氏のキャラクターにしても・・・「怪奇篇」の魔実也氏は、魔物に限りなく近いけれど、恩師も先輩も友人もいて、現実の青年としての存在感もある。基本的に女には甘いが、きまぐれに鬼畜である。一方、「回帰篇」では、魔実也氏の現実的な生活感を感じさせる部分がかなり削ぎ取られていて(『沼』の中で、「怪奇篇」にはあった魔実也氏と宿の女中の会話 ~沼に向かう魔実也氏は、自殺を疑われて、宿代を前払いさせられている~ が削られているのも、その為だろうな、ページ数の都合もあったかもしれないけど。)何だか実体のない、闇と夢から生まれたような男。これは好みもあるけれど、存在の色っぽさでも「怪奇篇」の魔実也氏に軍配が上がる。

 まぁ、何だかんだ言って、「メディウム」掲載当時の絵が一番好きだっていうのが、「回帰篇」に満足できない理由なんだけど。

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2009-11-07

お変わりないか お姫様たち!! ~ 夢幻紳士 迷宮篇 : 高橋葉介

 「幻想篇」の後日譚。迷宮というよりも、少々迷走しているような・・・。

 「あの男が憎い。あの男が欲しい。ああああ 憎い。生かしておけぬ。」 夢幻魔実也に向けられる激しい殺意! 感染する殺意に追い詰められる夢幻紳士! 

 夢幻魔実也の命を狙う張本人は誰なのか?! 身に覚えがありすぎて、狙われてる本人にさえその正体が分かりません。魔実也氏困惑気味。

 人の夢を渡り歩き、絡まる謎の源へ~ 夢の少女の力を借りて(裏切られたりもされつつ)遂につきとめた悪意の正体! 夢の奥底に蟠る邪悪な怪物を八つ裂きに引き裂いて、お姫様たちも大喜びのちょっとダークな大団円。

 ・・・なのだけど

 女の子たちが心の中で思いさえすれば、いつでもどこでも何度でも、彼女たちの夢に現れ、彼女たちの望む通りの振る舞いをする魔実也氏。魔実也氏が人の夢を渡り歩いているんじゃなくて・・・ 女の子たちの夢の迷宮に魔実也氏の方が閉じ込められちゃってるんじゃないか? まぁ、女性に甘い魔実也氏なら、気まぐれにそのくらいのサーヴィスはしてくれるのかしらん?


 帯に書かれた「夢幻魔実也 完結!」の文字に胸がキュンと切なくなる。女の子なら謎めいた黒衣の騎士といつまでも一緒に行きたいと思うものさ。それでも、これでしばしお別れ。次にまた、あの名乗りが聞ける時まで。

「僕の名は夢幻魔実也というのですよ」

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2009-11-04

僕の名は夢幻魔実也というのですよ ~ 夢幻紳士 逢魔篇 : 高橋葉介

 「幻想篇」のラストシーン ~ 「僕の名は夢幻魔実也というのですよ。」・・・すっかり本来の姿を取り戻した“僕”に向かって、黒衣の男が名乗りをあげる。あの、ミステリアスで美しい男が自分にも名乗ってくれないものだろうか・・・ その誘惑にひかれて、怪しのものたちが魔実也のもとに現れる。自殺女に、首かじりの妖怪に、先見をする女芸人「手の目」・・・。

 料亭の座敷にとぐろを巻いて、酒をちびりちびりとやりながら、次々とやってくる妖怪変化を“ぎゃふん”と言わす。「逢魔」の「魔」は「魔実也」の「魔」。

 いつもは妖艶な流し目か冷たい笑いで事に当たる魔実也氏が、胸ペッタンコであきらかに守備範囲外の「手の目」にペースを乱されて、人らしい表情を垣間見せるのが面白い、人でなしのくせに。


 百鬼夜行は一夜の夢。また誰かの夢の中へと、夢幻魔実也は去っていくのであります。

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2009-10-31

黒衣の守護天使 ~ 夢幻紳士 幻想篇 : 高橋葉介

 怪奇と幻想の漫画雑誌「メディウム」をリアルタイムで読んで、怪しげな力を持つ美青年・夢幻魔実也に夢中だった者にとっては、やはり嬉しい二十数年ぶりの復活。

 復活・・・とは言っても、ここに登場するのは夢幻魔実也の“影”。悪者の“毒電波”で精神を閉じ込められた主人公の“僕”の脳内に生まれた存在。次々と奇怪な事件に巻き込まれる“僕”に影のように寄り添い、絶体絶命の危機から魔法のように鮮やかに救ってくれる黒衣の守護天使。

 “いつも自分を守ってくれる危険で美しい万能の騎士”なんて、乙女にとってはいつまでも覚めたくない怖ろしくも蠱惑的な夢のようなもの。それでもいつか夢は覚める。夢幻魔実也本体の登場とともに“僕”にかかった呪いは解けて、恐怖と冒険と予感をはらんだ夢が終わる。

 幸せで、ちょっと切ないエンディング。

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