2015-10-04

泣き虫弱虫諸葛孔明 第四部 : 酒見賢一

『泣き虫弱虫諸葛孔明 第四部』 酒見賢一

 あれ? 何か孔明が常識人になってる? 第三部までは「天才」とか「腹黒」とかいう人間世界の価値基準なんて超越した不気味で変態的な人物として大活躍してきたのに、第四部では真面目に堅実に蜀の国盗り&国づくりなんかしている。まるで、ちゃんとした軍師みたいだ。

 関羽の死のくだりなんて、吉川英治の『三国志』を読んだときでさえ「孔明って煙たい関羽をあえて見殺しにしたんじゃないの?」って思いたくなるような薄ら黒さが漂っていたのに、ここでの孔明は関羽の行く末を予見できず、むざむざ死なせてしまった自分の至らなさを悔やみ反省したりして・・・。

 「ちゃんとした歴史物語」っぽくまとまったこの「第四部」の中で、巻末の劉備の死の場面だけは異様だ。

 死の床にあって、蜀の国は『孔明が運んで取らせてくれた、一種の幻のような国』『まるで魔法でつくられたような、なんだかいかがわしい国であった。』と思う劉備の虚無感のようなもの。劉備と出会った日を思い『劉備を拾って、サルを人がましくしたのは、何故だったろう。』と自問する孔明の内なる「虚ろ」。

 周瑜、曹操、関羽、張飛らスーパースターが去り、魯粛、呂蒙、荀彧、夏候惇、馬超ら名のある人物たちも死んだ後、残された孔明は最後に何をカマすのか・・・。次巻が待たれる。

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2013-02-02

泣き虫弱虫諸葛孔明 第参部 : 酒見賢一

『泣き虫弱虫諸葛孔明 第参部』 酒見賢一

 いよいよ「赤壁」! ついに「赤壁」! 美しきアニキ・周瑜とマッド軍師・諸葛孔明の激突! 何かもう・・・もう・・何かものすごいモノが炸裂するんじゃないかとワクワクしていたんだが・・・。炸裂したのは、呉国太をひと目で落とす劉備のどうでもいい中年男の色気だった・・・。

 作者は「赤壁の戦い」のアツい盛り上がりにせっせと水をかけるのである(呉軍団はあくまでもアツく男臭いが)。作者にとっての「赤壁」とは、「周瑜のオトコ気と孔明の知略が曹操の大軍を撃破するドラマティックな戦い」なんかじゃなかったのか! 「第参部」の語りのメインとなるのは、どうやら「赤壁の戦い」自体じゃなくて、その裏でめぐらされる孔明と劉備のあくどい策略と、曹操を敗走させた後の周瑜vs.孔明+劉備軍団の暗闘である。

 卑怯、そして下劣ではあるが、周瑜にとってはぐぅの音も出ない策を次々と繰り出し、まんまと成功させる孔明。不気味極まりない新型兵器。よくわかんないけど美味しい思いだけはしている劉備。怒りと屈辱に矢傷を破裂させ、血を吐いて昏倒する周瑜。

 最期までオトコらしい美周郎の死によって、その悪行と変態性が際立ってしまった孔明と劉備軍団。これからどうなる?!




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2011-03-30

聖母の部隊 : 酒見賢一

『聖母の部隊』 酒見賢一

 “敵”に村を襲われ両親を殺されたぼくたちの前に現れたきれいな女の人は、自分を“お母さん”と呼ばせて、ぼくたちにこのジャングルの中で戦う技術を教え込んだ。(「聖母の部隊」

 「地下街」「ハルマゲドン・サマー」「聖母の部隊」 三つの中・短篇を収録。(ハルキ文庫版にはもう一つ短篇が追加されているらしい)

 これは、男の子向きの作品でしょうか・・・。世界の終わりに、強気で甘えん坊な女の子から延々責めたてられた末に「ほんとは、あなたが、好きだったの・・・・・・」と告げられても、嬉しくも悲しくもないし、“敵”がうようよするジャングルで、極限状態の中“お母さん”と共に戦い抜いた少年達の恍惚なんてとてものこと理解も許容もできそうもない。

 歩く殺戮兵器のような二人のエージェントが、平和な日本の地下街に潜む“悪の巣窟”の掃討戦を繰り広げる「地下街」・・・コレは虚構か現実か、プログラムミスだらけのゲームの中か、それとも閉ざされた部屋の中で夢見る誰か妄想なのか・・・ 読み進める毎に、ヒザが“かっくん”となりつつも、これが一番楽しめた。だって二人のエージェントの無茶苦茶な設定が、ねぇ。

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2009-10-10

後宮小説 : 酒見賢一

 第1回日本ファンタジーノベル大賞受賞作

 素乾国最後の皇帝・槐宗の後宮を舞台に語られる、槐宗の正妃となった少女・銀河の波乱の物語。

 銀河ら官女候補に施される“皇帝に愛され、子をなす為”の特殊な教育。妍を競い、友情?を育む女達。若く聡明で美貌の皇帝・双槐樹。宮廷内の権力闘争。反乱軍の蜂起~王位の簒奪。官女軍を編成して反乱軍に抵抗する銀河。その中で生まれる銀河と双槐樹のロマンス。

 際限なく豪華に重厚に~ドラマティックにも、陰惨にも、ロマンティックにもなり得るのに、あえてそれをしない軽やかさ。お話しが盛り上がってくる度に、飄々と物語の筆者が表に出てきは茶々をいれ、薀蓄を語る。銀河の姿が物語の中で煌めきを発すると、すかさず筆者がその高揚感に冷水を浴びせ、たっぷりと思わせぶりに登場した若く気高き美貌の皇帝は、大した活躍もしないままに物語の舞台から降りる。

 夢のようにゴージャスで、現実のようにクール。大掛かりな世界の仕掛けに、ウェットなドラマと乾いたユーモアの配合具合が絶妙な、とびきりの偽史。


 ところで、「ファンタジー」というと、妖精さんや怪物が棲む世界で、謎と魔法と剣と冒険っていうような、ガッチガチのイメージしか持っていなかったため、第15回の同大賞受賞作である森見登美彦「太陽の塔 」を読んだ時、「これのどのあたりがファンタジー?」と、解せない気持ちになったのだった。しかし、本大賞選評の中で、「ファンタジー」に「幻想」でも「夢想」でもなく「奇想」という言葉があてられているのを見て、何かちょっと“あぁ!”と思った。

 人間や世界を、常とは違う場所から見る。そうすることで現れる、固定した観念に縛られない異次元の世界。独創的な視点を持つことで日常との間に生じる「ズレ」が「奇想」=「ファンタジー」ということか・・・?

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2009-02-25

泣き虫弱虫諸葛孔明 第弐部 : 酒見賢一

 劉備一家最大の見せ場?! 新野からの逃走劇と長坂坡の戦い。

 過激な「春秋左氏伝」原理主義者・物騒な独善イデオロギスト・関羽。新野での平和すぎる生活に、すでに精神のバランスが崩壊気味の悪獣・張飛。劉備一家の中でただ一人、まっとうな武将なんじゃないかとかすかな期待を寄せていた趙雲までが、赤い閃光を曳きながら戦場を飛ぶ人外のものに変異する。

 もう、これが本当にこの地上での物語なのかなんてどうでもいい、桁外れなダークファンタジーとなってしまった「三国志」。

 緊迫してくる事態に、“それを人前で言えるようになったら、人間として終わりだろう”というレベルの思い切ったエロ・トークで場を和ませる?簡雍。『敵の追撃を受け、脱糞しながら馬の鞍にしがみつくような目に遭う』覚悟をキメつつも、どこかを燃やしたくてウズウズしてるPyromaniac・諸葛亮。

 そんな中、親分・劉備の行動は一点の曇りもなく支離滅裂であり、『嘘偽りのない偽善』~その魔性は全開である。

 孔明「曹公の大軍の前に立ち塞がったかのように人の耳に聞こえ、華々しく一戦して命より名を惜しんだ感じが漂い、惨敗して逃げているにもかかわらずなんとなく勝ったように見え、なおかつ民衆の人望も失わず、希望の新天地に思いを馳せる・・・という、~略~ おそるべき策がわが方寸にあります」

 劉備「まさか! このわしですらもう諦めて、そんな都合のいい話はなく、うまい汁は吸えないと反省しておったのに。そんな痴人の妄夢が叶うとおっしゃるのか」



 こんな人たちに付き合い続けた曹操は偉いと思う。

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2009-02-21

泣き虫弱虫諸葛孔明 : 酒見賢一

 昨年後半数ヶ月をかけて吉川「三国志」を読んだのは、この「泣き虫弱虫諸葛孔明」が読みたかったからなのよ。外道な「三国志」を読むためには、事前に正統を押さえとかないといけないと思ったのでね。

 でも、“ちゃんとした”戦国の英雄物語だと思いこんでた「三国志」が、ちっとも“ちゃんとしてない”、常軌を逸した悪魔の所業!みたいな物語で、私、脳震盪を起こしておりました。

 吉川「三国志」の感想はこちら
 http://neconohitai.blog71.fc2.com/blog-entry-262.html


 乱世の英雄たちのやることは私の予想を超えすぎてる。しかも、背筋も凍るようなできごとの数々が、「英雄と敬う人に、自分の妻を殺してその人肉料理振舞うくらい当たり前です。」とか「地雷仕込んで南の蛮族を丘一つごと殲滅しましたけど、何か?」くらいの“平然”さ加減で書かれてるのが、ものすごく怖い。

 どう読んでも、誇大妄想狂のニートだとしか思えない劉備が、仁君ともてはやされるなんて、何がどう倒錯しているんだか、不気味きわまりない。

 そんな気持ち悪さが、吉川「三国志」読了後ずっと胸にわだかまっていたので、ふざけ倒した「三国志」だと思ってた「泣き虫弱虫~」が、すご~くまともに思えて仕方ない。「だよね、だよね~、何かこの人たち、得体が知れなくて怖いよね~」と激しく頷きながら読む。

 昨年来、私の中の劉備&孔明は、突然、“神”が降りてしまった新興宗教の教祖 & その教祖を陰で操り、自分が頭の中に描いてきた悪魔的な計画を、すべて現実の上で試してみようとしている軍事オタクにしてマッド・サイエンティストというイメージだったのだが、酒見氏の描く二人は、もう宇宙レベルにムチャクチャな男達だ。

 劉備は、関羽・張飛という義兄弟を得て、地方で暴れまわった元不良少年。そして今では、高い志というよりも妄想めいた男のロマンを抱いた、「劉備一家」の親分。その野望は随分と妄想的でありながら、幾多の修羅場をくぐって(敗走して)きた親分は、実はリアリストである。が、肝心な局面ではまともに考えがまとまらない為、つい勘に頼ってしまい痛い目を見ている。しかし、その魔性の勘に危機一髪(自分だけは)救われてきたのも事実である。

 “異様に感情的すぎる人”劉備親分は、感情の昂ぶりにまかせて、野郎どもをアツくさせてしまうクサいセリフを吐きながら、なんともいえぬ「いい顔」をしてみせるのが得意である(得意というか、オートマチックに「いい顔」「熱いセリフ」が発動してしまう体のようだ)。そんな男らしくがらっぱちな親分だが、ちょっと「カッコいいなぁ」と思う相手や、自分の得になりそうな相手に出会うと、これまたオートマチックで涙(泣き落とし用)が溢れ出し、異常なまでにへりくだった態度をとってしまう。男らしさと女々しさ、野望の大きさと能力の低さが渾然一体というか、支離滅裂というか・・・。

 親分は任侠の世界の人であり、中国社会における「侠」の何たるかなんてのも語られるのだが、それがまた、理屈無用の血も凍る怖ろしさ。 


 一方、孔明・・・その知識量、明晰な頭脳は誰もが認めるところ。しかし、人間の域を遥かに超えて明晰すぎる頭脳が思い描くのは常に「宇宙」サイズのことであり、「天下万民」などというスケールの小さいことなど、大宇宙の意志を我が物とする彼にとってはハナクソほどの価値も無い。

 孔明の行く道を邪魔する者達を次々と襲う不運。常に心は「火計上等!」(あくまでも陰湿に)。臥龍岡に蠢く不気味な自動機械。意味不明・予測不能な奇行で近隣住民を恐怖に震え上がらせ、弟・均君を神経衰弱に追い込む、イカれたサイコパス野郎ギリギリってとこだ。

 劉備 vs.孔明・・・互いに一歩も譲らぬ変奇郎ぶり。ものすごく愉快でたまらなかったんだが・・・さすがに其処まで書かれてしまうと、逆に、「いやいや、劉備も孔明もそんなにヒドくはないよ。人間誰しも、一つや二つ欠点があるよね。」・・・くらいに思えてしまうのである。

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