2010-05-12

黄土の旗幟のもと : 皇なつき

 言わずもがなではあるのだけど、皇なつきさんの絵の美麗なことにはまいってしまう。登場人物たちの細やかな表情、細部まで描きこまれた衣装や装身具、それが身体の動きにしたがって作るしわ、フォルム・・・美しすぎて溜息がでる。

 「黄土の~」は明末、李自成の乱を題材にしたお話。悪政と貧窮に耐えかねて各地で起きた農民蜂起の軍の中でも大きな力を持った李自成の軍。その反乱軍の中にあった文系男・李信(李巌)を中心にしたドラマ。

 粗野だが抜群の行動力とカリスマ性を持つ李自成。大量に殺すことで新しい国づくりをしようとする李自成に対し、誰も殺さずに平和な世の中をと、うじうじ悩み続ける李信は、日本人好みのヒーローかも。悩み、迷いながらも時代の流れに押されるように、李自成の反乱軍に身を投じる李信。最初は李信贔屓で読んでいたんだけど、広大な大陸の風景や、街、城郭の中を騎馬で駆け戦う李自成のとても絵になる男ぶりに、だんだんと惹きつけられてしまった。

 明の武将を父に持つ凛々しい女将軍、李自成とはまた別の信念に生きる明の役人・李信の親友でもある郭鵬樹ら魅力的な人物も揃い、いよいよ物語は佳境に! というところで尻切れトンボ気味にお話が終わってしまったのはちょっと残念。

 
 その他、日本の平安~鎌倉を舞台にした小品を収録。鎧武者・束帯・水干・狩衣・直垂・裲襠・・どれもこれも美しくて、“くうぅぅぅぅうっ”てなってしまいます。

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genre : 本・雑誌

2010-05-08

修善寺物語 : 皇なつき

「修善寺物語」 : 皇なつき(『李朝・暗行記』)

【修善寺物語】

 岡本綺堂の戯曲を原作とした凄艶な絵巻。

 政争に破れ、修善寺に幽閉された鎌倉二代将軍・頼家。その頼家の面を打つことを命じられた稀代の面作師・夜叉王と、貧しい暮らしに倦み、貴人の側に侍ることを夢見る夜叉王の姉娘・かつら。

 ただ貴人の豪華な暮らしを求めただけのかつらには、骨肉の争いに病み疲れた頼家の心など思いやることはできなかったが、頼家の流す涙の悲しく寂しい光を見たとき、二人の心に初めて通じ合うものが生まれる。


 毒薬によって崩れた頼家の顔。
 北条方に攻め寄せられる頼家の館。
 夜叉王が打った頼家の面をつけ身代わりをつとめる武者姿のかつら。

 凄惨な運命に翻弄される二人の悲しく、激しく、美しい姿・・・。


 小さな世俗の幸福にのみ価値を見出す夜叉王の妹娘・かえでと夫・春彦。愚かにも、憐れにも見えようとも、内なる誇りと喜びに殉じるかつら。鬼神の域に入ろうとする自らの技こそを至上のものとし、断末魔の娘の顔を写す夜叉王。それぞれの想いに生きた人々の濃密な物語。


【李朝・暗行記】

 消えることの無い「恨」を胸に諸国を廻る暗行御史(身分を隠して地方をめぐり官吏の不正監視や視察を行う国王直属の官)の物語。美しい民族衣装が彩る画面を見るのも楽しいドラマチックな韓流時代劇。

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2009-09-09

黒猫の三角 : 皇なつき・森博嗣

 1年に1度、あるルールに従って繰り返される殺人。探偵・保呂草と仲間達?の監視も空しく、今年もひとりの犠牲者が・・・。事件を結ぶ法則の意味は? 犯人の意図は?

 森博嗣の人気ミステリ小説を皇なつきさんが漫画化。原作小説は読んでいません。コミック単体でも十分楽しめますが、事件の真相が明らかになる過程で、犯人が自分の思想・行動原理を語るあたりはちょっと唐突な気も・・・。

 皇なつきさんといえば、中国、朝鮮の民族衣装も華やかな歴史絵巻・・・台詞よりは絵で読ませるという印象を持っていましたが、こういうドラマもしっかりきっちり描かれています。丁寧に作られたテレビドラマを見ているよう。

 でも、この上質かつクラシカルなテレビドラマを見ているような絵柄は、森ミステリよりも、純粋な謎解き主体の本格推理小説のようなものに向いているんじゃないかしらん? 「完全な妄想 完全な洗脳」「-その人間の証に 何の価値がありますか?」なんて森節とでも言うような台詞は何となく皇なつきさんの絵にはそぐわないような気がして・・・

 こういう台詞は、例えば「すべてがFになる」を描いた浅田寅ヲさんのようなデジタルな感じの絵と組み合わさった方が耳触りも目触りも良いように感じます。

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2008-12-27

始皇帝暗殺 : 皇なつき

 陳凱歌監督の映画「始皇帝暗殺」のコミカライズ。映画や舞台のノベライズ・コミカライズ作品では何度か痛い思いをしたことがあるけど、(独立した作品性がまったく感じられない、「あらすじをなぞっただけ」なものがあったりして、がっかりさせられてしまう。)これは皇なつきさんが描かれているということで、絶対の安心感をもって手に取った。

 絵が美しいのは言うまでもないのだけど、今作では、他の皇作品で見られる衣装の緻密な描き込みとか、繊細で柔らかな質感というのとは異なる硬質なタッチが感じられる。


 後に始皇帝となる秦王・政、政と相愛の仲である趙姫、政を憎む燕の太子・燕丹、そして暗殺者・荊軻。政治的思惑と愛憎がからむドラマ。弱さと激しさを持った登場人物たちが硬く鋭い描線で描かれる。特に燕丹の器の小ささっぷりは見事に表情なんかに表れてて素晴らしい! とびきりの美男なのに、とびきり魅力の無い男っていうのをあんなに活写できるなんて!


 私は元になった映画を見ていないので、それと比較してどうこう・・・ということは言えないけれど、中国大陸のドラマを皇なつきさんが描くことで、どこか和風なテイストを持つ話になっているのではないかと感じる。(なんてことを感じながら読んでいたのだが、あとがきに『国民性の違いか、あるいは男女の感性の違いか、人物像が、どうも感情移入しにくく、また細かな矛盾点も気になったので、それらを私なりに補正するようなつもりで、単行本一冊分のストーリーに、仕上げた。』ということ書いておられて、“なるほど”と思う。)

 日本人には納得しやすい“情”のドラマとなった感じがあるが、一方で大陸的なダイナミックさというのは減じた部分があるんじゃないかな、と思ったりもする。映画見てないから何とも言えないけどね。

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