2014-09-13

竹取物語 : 文・江國香織 画・立原位貫

『竹取物語』 文・江國香織 画・立原位貫

 先日、宇月原晴明氏による伝奇的な『竹取物語』、『かがやく月の宮』を読んでいて、改めて本来の『竹取物語』を読みたいと思ったのです。『竹取物語』を読むのにこの本を選んだのは、江國香織さんが、かぐや姫という女性をどのように書くのかということに少し興味があったからなのだけど、あまり余計な色付けはされていませんでした。

 学校の授業を離れて、「物語」として読んでみて印象に残るのは、あくまで「異界の生き物」であるかぐや姫の姿。五人の求婚者たちにはもとより、長年慈しみ養ってくれた竹取の翁とさえ、何ら心に通じ合うものがなさそうな。人と同じ姿はしていても、完全にこの世の理屈とか情といったものの外に在る生き物。

 そんな姫が帝と心を通わすようになったのは何故なんだろうなぁ? 帝、よほど美男でいらしたのだろうか。それとも、深い深い想いにほだされて? う~ん、やっぱり「帝だから」?

 ようやく人の世のあわれをも解するようになる姫であるが・・・
  

 ふと天の羽衣うちきせたてまつれば、
 翁を「いとほし、かなし」と思しつることも失せぬ。

 天人はかぐや姫に、すばやく羽衣を着せ掛けます。
 それで、姫のなかにあった翁への感謝も同情も
 消えてしまいました。


 再び、心の通じぬ異界のものとなって去っていくかぐや姫。

 この世の人々の心をあれだけ掻き乱した美しいものが、この世と通じ合うものを持たない全く異なる世界の生きものだという冷厳な事実。そう思うと、立原位貫氏の版画も雅やかなだけではなく、あやしくざわめいて見える。



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2011-12-24

夕闇の川のざくろ : 江國香織 絵・守屋恵子

『夕闇の川のざくろ』 江國香織 絵・守屋恵子

 しおんは沢山の嘘をつく。山の麓の貧しい村のお地蔵様の足元に捨てられたのは醜かったせい。漁師の夫婦にひろわれて、毎朝はだしで魚の行商に行った。何人もいるピエールたち~恋人のピエール、従兄のピエール、友達の恋人のピエール、亀のジャン=ピエール~の話は際限もなく拡散する。

 人なんてもともとほんとじゃなくて、物語だけがほんとだというしおんは、私の『きわだって孤独できわだって美しく、そしてひどい嘘つきの、ちょっと変わった友達』。しおんは『つまりちょっと嫌な感じの娘だった』。

 台所で料理を作るしおんのために蕪を買いに部屋を出る私。部屋に帰ってきた私を迎えるしおん。

 しおん : 「さっきまであなたは髪がながかったのよ」

  私 : もう十年も、私は髪のかたちを変えていません。


 「しおん」と「私」を包む、寂しくどこか冷え冷えとしているけれど美しく澄んでいた空気が、ざわりと残酷味を帯びる。

 嘘をついているのは「しおん」なのか、「私」なのか?

 しおんはたくさんの嘘を私に語る。しおんの話がほんとうでないことを私は知っている。

 しおんには、ほんとうのような顔をしている世の中のすべてのものが嘘であることが見えてしまう。しおんの話をきく私がほんとうでないことをしおんは知っている。それは、ぞっとするほどの孤独。

 そんなしおんの孤独を知っている、でもこの世の嘘の一部であるような「私」。「嘘」であることで、「ほんとう」になろうとするような・・・。




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2008-05-31

神様のボート : 江國香織

 「昔、あたしのママは、骨ごと溶けるような恋をした。その結果あたしが生まれたのだ。」


 「必ず戻ってくる。」と言って消えたあのひとを、ママは待ち続けている。

 「私はあのひとに慣れちゃったんだもの。他のものにはなじめないわ。」 


 「神様のボート」に乗った母娘は、馴染める土地を作らず、引越しを繰り返す。

 「パパの約束はね、それが口にだされた瞬間に、もうかなえられているの。」
 「ママはイカレている。パパに関して、あの人は完全にイカレている。」



 「恋はするものじゃなく、おちるもの」とは言うけれど、あることに関して、完全にダメになってしまう・・・自らのコントロールを手放してしまうことは、気持ちの良いことだろうか?

 「ダメになる」・・・決して否定的な意味で言っているのではなくて・・・あることに関して、全く何の妥協も、疑問も、折衷案も受け入れられなくなる ~ ただ、その“あること”は完全に美しく、完全に間違いのないことなのだと信じていられる、というのは幸せなことなのか、不幸せなことなのか? ・・・やっぱり幸せ・・・なのかなぁ。

 私はそういう・・・なんというか・・・恋愛に限らず、自分が自分のコントロールを離れてしまうっていうことが漠然と怖いので、そういう事態からはなるべく遠いところに自分を置いているようなとこがあります。(そんなことしなくても、恋におちるとか、おちられるとか・・・そんな事態が私を襲うとは思えませんが・・・)


 「神様のボート」に乗ってしまった母と、産まれた時から乗らされてしまっていた娘。二人の時間は静かに過ぎ、いつか別々の流れへと分かれていく。先へと流れて行く時間と、他に交わることなく閉じて充足した時間。別々の時間を刻むようになっても、互いに想いをかけあう母娘の情愛は少し切ない。

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2007-11-21

間宮兄弟 : 江國香織

 兄・明信35歳:酒造メーカー勤務。痩せ型。髪型は7・3分け。プライベートではスーツ用の白いワイシャツにチノパンを着用。細いウェストをベルトで締め上げる為、ベルトの端がだらーんと余っている。好きな飲み物・缶ビール。

 弟・徹信32歳:小学校の校務員。ぽっちゃり型。ラフな服装(ヘヴィメタ調の革ジャンなど)を好む。好きな飲み物・コーヒー牛乳。


 見た目が良いとは言えず、対人関係をさばくのも苦手な間宮兄弟は女性にモテない。自分の心の中だけに育つ恋の思いは相手にちゃんと受け止めてもらったことが無い。
 
 心優しい間宮兄弟にとって、世間には怖いことやややこしいことがありすぎる。それでも、女性と恋をすることを諦めさえすれば、すべては俄然平和になる。

 兄弟が暮らすマンションは、そんな平和な空間。二人を脅かすものは入ってこない、心穏やかに暮らせる王国。

 この夏はその王国に複数の女性がやってきた。楽しい時間と少しのときめきと苦い思いと暖かい感触を残してすぐに過ぎて行ってしまったけど。間宮兄弟にはまた、誰に遠慮することのない、二人の平和な時が戻ってきた。


 自分がありのままの姿で、楽に平和にいられる場所。・・・それホントに天国だ、夢の王国だ。間宮兄弟の暮らす部屋は憧れの空間なんだ。

 でも間宮兄弟とて、その空間に暮らすためにいくつかの手に入れたいものを諦めている、またはいくつかのするべきことに目を瞑っていることを忘れちゃいけない。

 つい、京極夏彦「覘き小平次」の中の小平次の台詞を思い出してしまう。

 「無理をして楽になるのと、無理をせずに苦しむのでは、どちらが良いのだろう。」
 
 この小説を読んで、「間宮兄弟は人としてするべき努力を放棄してる!」とお怒りになる方も、もしかしたらいるかもしれないなと思う。でも、嫌なことや面倒なことに向かっていくのを止めるっていうのは、本当に駄目なことなんだろうか?とも思う。

 困難を乗越えようとする努力は人を大きくする? それとも、報われない頑張りは人の心をゆがめてしまう? どちらの可能性が大きいのでしょう?

 そんなことを思いました。

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