2008-09-13

ハル、ハル、ハル : 古川日出男

 『この物語はきみが読んできた全部の物語の続編だ。』

 「物語」が終わった後だって、「物語」が始まる前にだって、主人公は生きている。物語には「続編」がある。もちろんその「続編」にも同様に・・・。

 人は物語を生きているわけじゃない。ただ、生きているだけだ。

 世界が変わる瞬間。「自分を中心に世界が回っている」と、力強く、または回る世界の中心で自らも目を回しながら宣言する。

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2008-05-03

アラビアの夜の種族 : 古川日出男

 ナポレオン・ボナパルトの軍勢がエジプトの地を侵そうとしていた。“破壊する機械”としての近代的な戦法・兵器を備えた数万の侵略軍は、瞬く間にアレクサンドリアを征服、蹂躙し、刻一刻とカイロへと迫っている。

 迫り来る敗北とエジプト終焉の予感の中、カイロの実力者・イスマーイール・ベイの奸智に長けた美しい奴隷・アイユーブが一つの秘策を語る。

 侵略軍の将・ナポレオンに贈る「美しい献上品」~美しく装飾された稀代の物語集・・・物語は読む者を魅了し、読む者は全てを擲って物語に耽り、その書物と「特別な関係」を結んだものは地上から忽然と姿を消すという・・・「災厄の書」を創り出すため、カイロの夜の片隅で物語は語られ始める。

 語られ、書物に書き留められる物語。
 書物に封じられた物語を読み、解き放つ者。
 語られる物語の内部でさらに綴られる物語とそれを読む者。
 物語の外側にありながら、読むことで物語そのものへと変貌する者。
 読む者は、ある時には物語の主体であり、同時に語られる者でもある。

 複雑に絡み合う物語と書物と読む者の関係。その一部にいる我々。

 
 「災厄の書」に収められる物語は、長く因縁に満ちた恐るべき年代記であるが、それ単体で「災厄の書」と成り得る程魔的なものとは思えない。そこに、その書物を「災厄の書」たらしめるだけの背景を持った、まさに千載一遇の読み手がいなければ・・・。

 それを求める読み手の前で物語は力を振るい、また新たに物語は語られ始める。

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2007-05-23

僕たちは歩かない : 古川日出男

 「僕たち」は料理人で、学校を出た後海外での修行も経験したりしていて、野心もあるし、努力も研究も怠っていない。それでも僕たちは、シェフにはなれていない。それぞれに得意なことは違うけれど、それでも「僕たち」という言葉でひとまとめになってしまえるほど、まだ何者でもない若者達だ。

 そんな何者でもない僕たちが、引き合うように「1日が26時間制の東京」に集まってくる。26時間制の東京の余分な2時間、僕たちは料理の腕を磨きあう、語り合う、不幸に見舞われた仲間のために冥界へまでも旅をする。

 僕たちは常に注意深くなくてはいけない。自分たちに与えられた“素材”に、自分たちの行動に。何かを為すために。


 「僕たち」という名のまだ何者でもない一群・・・彼らが「僕たち」として過ごす一つの時間が、「26時間制の東京」での出来事として切り取られ描かれる。そこは繭の中のようで、成虫になる前の僕たちが真摯な努力を重ね、自分に注意深く、準備を整えている。

 幻想的な中にも、リアルな力強さと緊張感のある、良い感触のお話だった。ただ、私は「僕たち」の気分にも、「26時間制の東京」という空間にも、最後までシンクロ出来なかったのだけど・・・。


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