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2010-06-12

ボタニカル・ライフ : いとうせいこう

『ボタニカル・ライフ-植物生活』 いとうせいこう

 ベランダー(※)の一人称は「俺」である。
  ※ベランダで植物を育てる都市生活者。広々とした庭で植物を丹精するガーデナーとは一線を画す者。

 「俺」は植物を愛でる“いい人”でもなければ、植物たちにとって優秀な育成者でもない。『山賊が美女でもかっさらってきたかのように不器用に、そしておどおどと植物を見つめる』無骨かつ未完成な自分の在り様を「俺」という一人称で表明する。

 都会暮らしのベランダの上で、鉢植えたちのわがままな王であり、同時に下僕でもある「俺」。気が付いたら植物たちに夢中な日々を、ハードボイルドな諧謔味をもって綴ったベランダーの手記。


 植物と暮らす日々の驚き、不測の事態を前にした戸惑い、奔放な植物達への苛立ちと妬み、自らの無力さ、こみ上げる感動、降りそそぐような悦び ~ 何より魅力的なのは、それらのことを一気呵成に書いていく言葉のリズム。ほとばしる言葉の疾走感に、あっと思う間もなく“ぶぅんっ”と意識を持っていかれている。そして、『ノーライフキング』で、現実と小説の区別がしばしつかなくなってしまったように、『見仏記』で一緒に旅したように、今回もまた、せっせと鉢植えの世話をするいとう氏の背中をずっと見ていた。

  

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2010-06-09

アタとキイロとミロリロリ : いとうせいこう

『アタとキイロとミロリロリ』 いとうせいこう

 アタちゃんは2歳の女の子。

 私は、小さな子どもと一緒に暮らしたことはないけれど・・・突然くるっと回ってみたり、大っきな声を出してみたり、何かをじ~っと見ていたり、よくまわらない舌で止まらないおしゃべりを始めたり・・・ちっちゃな子がアウトプットするものって何だか突拍子もなくて、そのアウトプットに到る回路を想像しては、不思議に思う ~ 「ん~ この子の中は今、いったいどんなパラダイスな状況になっているんだろう?」って。(頭の中にパラダイスがあるのは、小さな子に限ったことじゃないかもしれないけど・・・)

 そんな、アタちゃんの中のパラダイス ~ ママと一緒に、ネコのキイロや携帯ラジオのミロリロリを連れて遊びに行く昼の公園と、お家の中でぎゅっと目をつむると見えてくる“夜の公園”での色んな出来事。

 大人にも見える“本当のこと”しか起こらない昼の公園でも、アタちゃんはキイロとお話ができるし、ミロリロリはアタちゃんに歌を歌ってくれる。“本当のこと”は入ってこれない、アタちゃんにだけ見える“夜の公園”では、シャボン玉になって飛んでいったアタちゃんのタマシイをキイロが追いかけていたり、ミロリロリとウサギのチロに囃されながらキイロが初めてのすべり台に挑戦していたり。

 昼の公園の出来事も、夜の公園で起こることも、アタちゃんの世界では全部本当のこと。でも、アタちゃんにはちょっとだけわかってる。大好きな“夜の公園”と、もうすぐお別れすること。アタちゃんは大きくなって、みんなが小さくなっていくこと。
 
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2010-04-28

見仏記 ゴールデンガイド篇 : いとうせいこう・みうらじゅん

 久しぶりの『見仏記』。マイナーには走らず、マニアックを封印し、メジャーどころにしぼる「ゴールデンガイド篇」・・・と、奈良・京都からスタートした旅だけど、そんな看板を放り出して?お二人は曇天の会津若松を実にしんみりと彷徨ったりするのだ、結局。

 そして、今回の見仏はこれまでになく宗教的。かつてのハシャギっぷりは影をひそめ、男40代、それぞれに噛みしめるものがありながらの旅。

 とめどない妄想も暴走するイメージもやや抑え気味。己が思考渦巻く世界から仏を見るのではなく、ただ仏の世界に身を委ねる。見仏スタイルも、発想・発信から受信へとシフトしているようだ。

 旅の終わり、黄金の夕日に照らされる二人。次の旅はどんなものになるのかなぁ。

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2009-06-24

去勢訓練 : いとうせいこう

 それぞれのやり方で、それぞれの形のセックスに耽る男女。それは限りなくエロティックで、忘我の快楽をもたらす行為。

 しかし・・・。最上の快楽を得るための「奮闘ぶり」は、悲しいほどに珍妙でもある。

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2008-12-13

見仏記3 海外編 : みうらじゅん・いとうせいこう

 このシリーズを読むと旅に出たくてうずうずしてしまう。いつも二人の後について一緒に歩いているような錯覚におちいってしまう。

 でも、海の外に出て行かれてしまってはお手上げなのだ。私の想像力が及ばない。置いて行かれたようでかなり寂しい。でも、私には「海の外の仏を見たい」という欲求は・・・無い。

 「ああ、遠くへ行っちゃったなぁ・・・」と旅人の背中を遥か彼方に眺める。

 高所恐怖・閉所恐怖と戦いながら。見知らぬ土地で夜行列車に揺られる不安に震えながら。小さな車で10時間以上の道のりを運ばれる苦痛にさすがにどんよりしながら。どうして二人は行くのか、そんなにしてまで?

  ハードで不安な長旅のせいか、たまに情緒不安定になったりする。もはやこの度は苦行なのか? 脳内から何かしら化学物質が出始めてるんじゃないかと思われる男二人。辛い旅にあって確かめ合う互いのかけがえなさ。めぐり合えてホント良かったね、いとうさん、みうらさん。

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2008-03-29

見仏記-仏友編・親孝行編 : みうらじゅん・いとうせいこう

「見仏記2-仏友篇」「見仏記4- 親孝行篇」 : みうらじゅん・いとうせいこう

 いつもの旅の出発地点「東京駅銀の鈴」に二人がやってくると、私も無性に旅支度を整えたくなる。この「見仏記」シリーズは私の旅情を今一番そそる読み物なのだ!

 まず、目的地が(「海外篇」を除いては)ちょっと思い立ったら行けちゃう所なのがいい。みうら氏が直感的一言とイラストで、いとう氏がひねりぬいた描写で見せてくれる仏(ブツ)たちのヴィジュアルが脳内を彩ってくれて楽しい。タクシーを利用しての忙しい旅であるにもかかわらず、広がる妄想と浮遊する思索、深いリラックス状態に落ち込んでいく二人がいい。仏たちが見てきた長い長い時間の前に、人間の孤独を見ちゃってちょっぴり無口になったりするのがいい。二人のアツい友情にたまにホロリとさせられるのがいい。

 シリーズ4冊目まで読んできて、最近気になるのが十一面観音。十一面観音について語るときには決まって、みうら・いとう両氏が、色っぽいだの、フェロモンだの、悩ましいだのといった言葉を吐くのだ。宝冠や胸元に装身具を垂らし、腰を心持ちひねり右手を下に垂らし、左手に蓮の花を差した宝瓶を持つ独特のポーズには、確かにドギマギさせられるような色気が漂っている。いずれ両氏にならって、十一面が密集しているという琵琶湖・湖北を訪れたいものである。

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2007-04-28

文芸漫談 - 笑うブンガク入門 : いとうせいこう・奥泉光

 むむ、やたらと勉強がしたくなる本。

 文学とは何か? 文学はどうあるべきか? という啓蒙的なことを漫談として人前で語ってみようという試みを書き物としてまとめたのがこの一冊。(“フルートを吹く奥泉光氏”がやたらといじられてます。)所々わからない言葉はありつつも、楽しく読めます。

 私たちが大体において「小説」と思って手に取っているものは「活字」=「紙についたインクのしみ」の集積である。それなら「小説」はどこに存在するのか? とか、「読む」上での文化的コードの問題とか小説の中の「私」とは何者か? とか、「小説」と「物語」の違いは? とか・・・こ難しいことだけど、語り手の二人はあくまで漫談でやっているから客を“ひかせない”。お二人の痛々しいまでのウケ狙い、ネタの仕込みを楽しみながら最後まで読めば、上記の問題が不思議と分かるようになってるんです。
(「小説」と「物語」の違い・・・っていうのは「ノーライフキング」あとがきの「僕は呪われ続けたのだ。『小説を書くな。お話を書け。』と」っていう一文を読んで以来ずっと私の頭の隅にひっかかってることなので、この本でのお二人の話も食付くように読みましたよ。まだまだその違いを自分の感覚として実感するところには到りませんが。)

 この本の三人の語り手・書き手は、親切であり、挑発的でもあるので、わかる快感と共に、まだまだ分からないことがあるという悔しさも残してくれます。この快感と悔しさの絶妙なバランスによって、勉強しようという気をかきたてられるんですね。

 しかしまぁ、「人生には文学が必要だ。」「生きていれば『文学』に直面する瞬間がある。」とは言っても、“「文学」について考えてこなかったから生活に困ってしまった・・・”なんてことはまず無いわけで、それでも“ちょっと「文学」勉強してみようかな♪”と思わせてしまうこの本は、とても「娯楽的な本」と言っていいのだろうな・・・。

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2007-03-07

岩だらけの懐かしい星 : いとうせいこう

 何かに導かれるように、明治時代ペルー移民として海を渡った一人の女性の姿を追うことになったいとうせいこう氏。

 彼女の子孫達、家族、親族、愛した人々・・・彼女に繋がる人々の記憶や想い出を聞き歩き、書き留め、彼女も立ったペルーの地を旅したいとう氏が描き出す物語は日本とペルーの過去と現在に渡りどんどんと広がってゆく。
 
 物語を書き進めながら、いとう氏は明治~平成という時間、日本とペルー(彼女が移民として渡った当時は船旅で1ヶ月を要したという)という距離を越えてそこここに現れる彼女の姿を幻視する。

 いとう氏の幻視したイメージと、彼女を追う旅の記録とで綴られる長い物語。結局多くの謎を含んだまま、彼女は真実の姿をいとう氏の前に現すことなく・・・しかし確かな存在として彼の中に根を下ろす。

 謎が謎を呼ぶスリリングな展開とともに、暴走気味に広がるいとう氏のイメージの世界も刺激的な作品。

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2007-03-03

職人ワザ! : いとうせいこう

 町の職人たちの下をいとうせいこうが訪ねた聞き書き。「下町の職人」対「いとうせいこう」・・・さぞかしクセのある仕上がりになっているんだろうと予想していたが、予想に反して“何て清々しい!”というのが読んだ後の感想だった。

 自分の満足いく仕事をすることで人に認められてきた職人たち。やたらとこだわりを前面に出すわけでなく、世間に苦言を呈するでもなく、声高に成功哲学を語るでもなく・・・自分のするべき事をする、その肩肘はらない当たり前さ。それでも言葉の端々からこぼれてくる知識の深さ。

 いとう氏がどのように職人たちに相対するのかというのも興味の一つだったが、負けず嫌いの男の子が毎日暗くなるまで人知れず走りこみをして運動会のかけっこに臨むような、こちらも何とも気持ちの良い聞き手ぶり。

 気持ちよく、清々しく、爽やかで、力あふれる一冊。

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2007-02-21

ハプニングみたい : いとうせいこう

 マンガ家は1枚のイラストとそのイラストの製作途中のコピー数枚を作家に渡す。そのイラストの意味を説明することなしに。

 作家の手にあるのは、作成途中の状態や、一部分だけを抜き出してコピーした、謂わば解体されたイラスト数枚と、完成したイラスト1枚。作家はそれらに言葉を贈る。イラストの意図を聞くことなしに。

 絵を生業とする人と言葉を生業にする人の共同作業によって、互いの意図を超えたところでの絵と言葉の融合を図った作品・・・というところか・・・。岡崎氏が狙ったという“テレビの音を消して、CDを聴いているような”不一致の効果は出ていると思う。ただ、それが面白いとか心地良いとか・・・そういう風には私には感じられなかったなぁ。帯には「言葉と絵のメイク・ラブ」とあるけど、ホントにこれは漫画家、作家ともに気持ちの良いメイク・ラブだったんでしょうか?

 残念ながら“実験的作品”以上には思えなかった。いとうせいこう好きとしては無念。

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