2011-10-22
四畳半王国見聞録 : 森見登美彦
『四畳半王国見聞録』 森見登美彦
う、うぅ、う・・・苦しい。四畳半に立てこもり妄想を縦にする腐れ大学生たちの姿は、森見作品では見慣れた阿呆なものに変わりはないのだが・・・どういう案配なのだろう? その阿呆ぶりが滑稽というには何か切実で痛々しい。
こんな言葉をつきつけられては・・・青春の日の不安、焦燥、満たされない自尊心、孤独、恐怖~記憶の向こうに押し遣っていたそんなものたちが、ひたひたと逆流してくるようで、とても平静ではいられない。
四畳半に淋しく立てこもり続けた“俺”が、行く先々でそっけなくあしらわれながらも、別れを告げるべく友人、知人たちをたずねて回る「グッド・バイ」では、ついにたまらず、胸の奥に塗り込めた古傷から、ちょっとだけ血を噴き出してしまった。
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う、うぅ、う・・・苦しい。四畳半に立てこもり妄想を縦にする腐れ大学生たちの姿は、森見作品では見慣れた阿呆なものに変わりはないのだが・・・どういう案配なのだろう? その阿呆ぶりが滑稽というには何か切実で痛々しい。
一人孤独にあるときにこそ、余は完全に己が欲する自己になることができるのである。
「一人でいる時はこんなにステキな俺なのに、なぜ他人が目の前にいるとヘンテコになるのであるか!」
「一人でいる俺を考慮に入れて評価せよ!」
こんな言葉をつきつけられては・・・青春の日の不安、焦燥、満たされない自尊心、孤独、恐怖~記憶の向こうに押し遣っていたそんなものたちが、ひたひたと逆流してくるようで、とても平静ではいられない。
四畳半に淋しく立てこもり続けた“俺”が、行く先々でそっけなくあしらわれながらも、別れを告げるべく友人、知人たちをたずねて回る「グッド・バイ」では、ついにたまらず、胸の奥に塗り込めた古傷から、ちょっとだけ血を噴き出してしまった。
![]() | 四畳半王国見聞録 (2011/01/28) 森見 登美彦 商品詳細を見る |
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2011-09-10
ペンギン・ハイウェイ : 森見登美彦
『ペンギン・ハイウェイ』 森見登美彦
小学四年生の「ぼく」が住んでいる郊外の街には、コンクリートで四角く区切られた土地にレゴブロックで作ったような家が並び、まだ家が建っていない空き地では草が風になびいてサバンナのようだ。「ぼく」が通う歯科医院の待合室は宇宙船の発着所のようで、「ぼく」と仲の良い歯科医院のお姉さんには謎が多い。
そんな「ぼく」の住む街にある日突然ペンギンが現れた。しかも、そのペンギンたちは、歯科医院のお姉さんと関係があるらしい。日々世界について学び、将来きっとえらい人になるであろう「ぼく」は、ペンギンの謎について研究を始める。
田圃のあいだを縫い雑草の茂る空き地を通過して小学校の裏の小さな藪まで続く道や、川を渡る鉄橋の脇についた作業員用のものであろう金網製の通路、そこから先には歩いて行ったことのない道の向こう~もう随分昔、小学生の頃に見たそんな風景が脳裏をよぎる。小学生の頃の私は、「ぼく」のように世界の果てについて思いを巡らせることはなかったし、色んなことについて自覚的ではなかったけれども、当時の私は、多分「ぼく」が見ているのに似た、一つ一つがとても瑞々しい「世界」を見ていた。それは今の私が見る風景とは何か決定的に違う。
そんな瑞々しい世界のただ中にいる「ぼく」をまぶしく眺めた。
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小学四年生の「ぼく」が住んでいる郊外の街には、コンクリートで四角く区切られた土地にレゴブロックで作ったような家が並び、まだ家が建っていない空き地では草が風になびいてサバンナのようだ。「ぼく」が通う歯科医院の待合室は宇宙船の発着所のようで、「ぼく」と仲の良い歯科医院のお姉さんには謎が多い。
そんな「ぼく」の住む街にある日突然ペンギンが現れた。しかも、そのペンギンたちは、歯科医院のお姉さんと関係があるらしい。日々世界について学び、将来きっとえらい人になるであろう「ぼく」は、ペンギンの謎について研究を始める。
田圃のあいだを縫い雑草の茂る空き地を通過して小学校の裏の小さな藪まで続く道や、川を渡る鉄橋の脇についた作業員用のものであろう金網製の通路、そこから先には歩いて行ったことのない道の向こう~もう随分昔、小学生の頃に見たそんな風景が脳裏をよぎる。小学生の頃の私は、「ぼく」のように世界の果てについて思いを巡らせることはなかったし、色んなことについて自覚的ではなかったけれども、当時の私は、多分「ぼく」が見ているのに似た、一つ一つがとても瑞々しい「世界」を見ていた。それは今の私が見る風景とは何か決定的に違う。
「世界の果てを見るのはかなしいことでもあるね」
そんな瑞々しい世界のただ中にいる「ぼく」をまぶしく眺めた。
![]() | ペンギン・ハイウェイ (2010/05/29) 森見 登美彦 商品詳細を見る |
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tag : 森見登美彦
2010-08-28
宵山万華鏡 : 森見登美彦
『宵山万華鏡』 森見登美彦
古の百鬼夜行の都だもの。祇園祭の宵山だもの。何が起きたって変じゃない。通りにひしめく露店。山鉾を飾り、露地を照らす駒形提灯。祭りの賑わいの中から、ふと異次元の不思議な「宵山」に足を踏み入れた人たち。
京都の町を摩訶不思議な妄想空間に変えてしまうことにおいては当代随一ではないかと思われる森見氏の手によって溢れ出す奇天烈な「宵山空間」。めくるめく色彩、化け物めいたモノども、もがいても抜け出せない、美しくも怖ろしい夢を見ているような光景が眼前に繰り広げられる。ストーリーはさておき、この溢れ出るイメージに身を浸すのが良かろう。
信楽焼の狸。招き猫。金太郎の張りぼて。空を泳ぐ巨大な鯉。生きた金魚を封じた金魚玉。羽子板を振り回す舞妓に髭もじゃの大坊主。雑居ビルや町屋の屋上を回廊がめぐり、「超金魚」を奉った「金魚鉾」が町を睥睨する「偽祇園祭」と、この世のどこかでいつまでもいつまでも“永遠に繰り返す宵山”。
色とりどりに賑やかな祭りの喧騒の中の、どこか物悲しく怖ろしい薄闇。大切な人の手を放さないように、気をつけてお行きなさい。
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古の百鬼夜行の都だもの。祇園祭の宵山だもの。何が起きたって変じゃない。通りにひしめく露店。山鉾を飾り、露地を照らす駒形提灯。祭りの賑わいの中から、ふと異次元の不思議な「宵山」に足を踏み入れた人たち。
京都の町を摩訶不思議な妄想空間に変えてしまうことにおいては当代随一ではないかと思われる森見氏の手によって溢れ出す奇天烈な「宵山空間」。めくるめく色彩、化け物めいたモノども、もがいても抜け出せない、美しくも怖ろしい夢を見ているような光景が眼前に繰り広げられる。ストーリーはさておき、この溢れ出るイメージに身を浸すのが良かろう。
信楽焼の狸。招き猫。金太郎の張りぼて。空を泳ぐ巨大な鯉。生きた金魚を封じた金魚玉。羽子板を振り回す舞妓に髭もじゃの大坊主。雑居ビルや町屋の屋上を回廊がめぐり、「超金魚」を奉った「金魚鉾」が町を睥睨する「偽祇園祭」と、この世のどこかでいつまでもいつまでも“永遠に繰り返す宵山”。
色とりどりに賑やかな祭りの喧騒の中の、どこか物悲しく怖ろしい薄闇。大切な人の手を放さないように、気をつけてお行きなさい。
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2010-04-03
新釈 走れメロス 他四篇 : 森見登美彦
新釈 走れメロス 他四篇 / 森見登美彦
読む毎に“一筋縄じゃいかんなぁ”という思いが強くなる森見登美彦氏。
『山月記』『薮の中』『走れメロス』『桜の森の満開の下』『百物語』・・・すべて、京都に住む腐れ大学生の話として書き直される。各話に登場する学生たちは互いにいくつかの出来事を共有する、うっすら顔見知りな間柄である。
そんな学生達の極小の世界のふとした暗がりに、果てしない宇宙が口をあけているのがちらりと見えるような気にさせる。う~ん、森見マジック。
自負と懐疑の中で大文字山へ走り、遂には天狗へと姿を変じた孤高の学生。自主制作映画「屋上」の真相は薮の中。二人の偏屈者の間の阿呆すぎる友情。満開の桜の下の何やら正体の定かでない怖ろしさ。百物語に集まった人々を見る血走った目。
苦悩、絶望、焦燥、友情、滑稽、孤独、恐怖。
文豪たちの短篇より森見氏が抽出したエッセンスが偏屈学生たちの七転八倒にまみれて、口あたりは優しいが味は濃厚。
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読む毎に“一筋縄じゃいかんなぁ”という思いが強くなる森見登美彦氏。
『山月記』『薮の中』『走れメロス』『桜の森の満開の下』『百物語』・・・すべて、京都に住む腐れ大学生の話として書き直される。各話に登場する学生たちは互いにいくつかの出来事を共有する、うっすら顔見知りな間柄である。
そんな学生達の極小の世界のふとした暗がりに、果てしない宇宙が口をあけているのがちらりと見えるような気にさせる。う~ん、森見マジック。
自負と懐疑の中で大文字山へ走り、遂には天狗へと姿を変じた孤高の学生。自主制作映画「屋上」の真相は薮の中。二人の偏屈者の間の阿呆すぎる友情。満開の桜の下の何やら正体の定かでない怖ろしさ。百物語に集まった人々を見る血走った目。
苦悩、絶望、焦燥、友情、滑稽、孤独、恐怖。
文豪たちの短篇より森見氏が抽出したエッセンスが偏屈学生たちの七転八倒にまみれて、口あたりは優しいが味は濃厚。
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2010-02-13
恋文の技術 : 森見登美彦
恋文の技術 / 森見登美彦
京都の大学から、やわらかすぎる気骨を叩き直すため、能登の臨海実験所に送り込まれた男子大学院生・守田一郎。
寂しさにまかせ、守田一郎は手紙を送り続ける ・・・ 恋に悩み“外堀を埋める友”へ、守田を苛め倒す先輩“私史上最高厄介なお姉様”へ、かつて家庭教師をしていた“みどころのある少年へ”“偏屈作家・森見登美彦先生”へ、兄を心配する“心やさしき妹”へ。友には恋のアドバイスを、最凶の先輩には一矢報いんとの心意気を、少年には大人の知識と良識を、作家には小説のネタを、妹には兄の大きさを・・・。
守田一郎は決して弱音を吐かない。この大量の手紙による『文章武者修行』は、いつの日か『恋文代行ベンチャー企業』オーナーへと成り上がるための布石なのだ。
・・・などと・・・大言壮語を吐きながら、文通相手の阿呆さ加減に怒りながら・・・ 守田一郎は途方に暮れている。
途方に暮れる自分に密かに抱く忸怩たる思い。
この忸怩たる思いを気取られまいと、なにしろ強がりながらも、ぽろぽろ漏れ出してしまう守田一郎の心に、その途方に暮れっぷりに、きゅ~んとくる小説である。
半年間、能登の地で迷走に迷走を重ね確立した「恋文の技術」は、十一月十一日大文字山に奇跡を起こすのか?
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京都の大学から、やわらかすぎる気骨を叩き直すため、能登の臨海実験所に送り込まれた男子大学院生・守田一郎。
寂しさにまかせ、守田一郎は手紙を送り続ける ・・・ 恋に悩み“外堀を埋める友”へ、守田を苛め倒す先輩“私史上最高厄介なお姉様”へ、かつて家庭教師をしていた“みどころのある少年へ”“偏屈作家・森見登美彦先生”へ、兄を心配する“心やさしき妹”へ。友には恋のアドバイスを、最凶の先輩には一矢報いんとの心意気を、少年には大人の知識と良識を、作家には小説のネタを、妹には兄の大きさを・・・。
守田一郎は決して弱音を吐かない。この大量の手紙による『文章武者修行』は、いつの日か『恋文代行ベンチャー企業』オーナーへと成り上がるための布石なのだ。
・・・などと・・・大言壮語を吐きながら、文通相手の阿呆さ加減に怒りながら・・・ 守田一郎は途方に暮れている。
夜に不安になって眠れなくなると、商店街の書店でおじいさんから借りてきた古い映画のビデオを見たりします。映画が終わると、いっそうやりきれない気持ちになる。寝ようとしても、いろいろとよけいな考えが湧き上がってきて困ります。未来が見えない。 ~『偏屈作家・森見登美彦先生へ』
途方に暮れる自分に密かに抱く忸怩たる思い。
この忸怩たる思いを気取られまいと、なにしろ強がりながらも、ぽろぽろ漏れ出してしまう守田一郎の心に、その途方に暮れっぷりに、きゅ~んとくる小説である。
でも世の中には、こういう切ない思い出をもつ人がたくさんいる、ということを知っているだけで何だかホッとしませんか。少なくとも、先生はそういうお話をたくさん知っていて、それは先生の財産です。 ~ 『続・見どころのある少年へ』
半年間、能登の地で迷走に迷走を重ね確立した「恋文の技術」は、十一月十一日大文字山に奇跡を起こすのか?
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2009-08-19
美女と竹林 : 森見登美彦
美女と竹林 / 森見登美彦
いったい、この人は・・・臆病で繊細な兎ちゃんなのか、大胆で人を食った狸なのか・・・。両者ミックス・・・なんだろうな。ふるふると震えているかと思うと、意外に狡賢い手で打って出る兎。楽しげに浮世を渡っているかに見せかけて、自分で自分の首を絞めたりしてる狸。
机上で事件を起こし続けた妄想家・登美彦氏は、遂に現実世界に事件を起こし人気文士となる。妄想家の人気文士は、自らの将来を見据えた「多角的経営」~「竹林経営+美女」のあらましをエッセイにしたためることを計画。
しかし、氏が現実世界に起こした事件の数々およびその余波 ~ 文学賞受賞、マスコミの取材、サイン会、テレビ出演、締切、締切、締切・・・ ~ は、ご本人の管理能力をはるかに超えた荒々しさで襲ってくる。なす術もなく押し流される登美彦氏。
竹林経営どころか、まったくもって、大好きな竹林に赴く暇も無い始末。(それでも、美女にはちゃっかり会ってる人気文士。意図したのとは違う形だったかも知れないけど。)
「美女と竹林」がテーマであったはずのエッセイは、早々と行き詰まり&破綻寸前の様相を呈してくるが、人気文士はそこを何とか妄想と詭弁でカバーしようとじたばたしてみる。
汗をかきかき奮闘する痩せぎすな文士の姿が見えるようだが、既に破綻が見えている「竹」テーマで、あくまでも話を続けようとする(「美女」テーマは早い段階で放棄されている。もしくは巧妙にすり替えられている。)依怙地さは、文士精一杯の誠意なのか?
それとも、この“あきらかに行き詰まってる風な感じ”すらフェイクであって、自虐的トーンで読者を魅了する文士の術中にまんまとはめられているんだろうか?
ま、いずれにしても面白かったからいいか・・・と思う。
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いったい、この人は・・・臆病で繊細な兎ちゃんなのか、大胆で人を食った狸なのか・・・。両者ミックス・・・なんだろうな。ふるふると震えているかと思うと、意外に狡賢い手で打って出る兎。楽しげに浮世を渡っているかに見せかけて、自分で自分の首を絞めたりしてる狸。
机上で事件を起こし続けた妄想家・登美彦氏は、遂に現実世界に事件を起こし人気文士となる。妄想家の人気文士は、自らの将来を見据えた「多角的経営」~「竹林経営+美女」のあらましをエッセイにしたためることを計画。
しかし、氏が現実世界に起こした事件の数々およびその余波 ~ 文学賞受賞、マスコミの取材、サイン会、テレビ出演、締切、締切、締切・・・ ~ は、ご本人の管理能力をはるかに超えた荒々しさで襲ってくる。なす術もなく押し流される登美彦氏。
竹林経営どころか、まったくもって、大好きな竹林に赴く暇も無い始末。(それでも、美女にはちゃっかり会ってる人気文士。意図したのとは違う形だったかも知れないけど。)
「美女と竹林」がテーマであったはずのエッセイは、早々と行き詰まり&破綻寸前の様相を呈してくるが、人気文士はそこを何とか妄想と詭弁でカバーしようとじたばたしてみる。
汗をかきかき奮闘する痩せぎすな文士の姿が見えるようだが、既に破綻が見えている「竹」テーマで、あくまでも話を続けようとする(「美女」テーマは早い段階で放棄されている。もしくは巧妙にすり替えられている。)依怙地さは、文士精一杯の誠意なのか?
それとも、この“あきらかに行き詰まってる風な感じ”すらフェイクであって、自虐的トーンで読者を魅了する文士の術中にまんまとはめられているんだろうか?
ま、いずれにしても面白かったからいいか・・・と思う。
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2009-03-07
有頂天家族 : 森見登美彦
有頂天家族 / 森見登美彦
この話、何か感覚的に物凄くかぶる。若い頃、私の支えであったあの曲と。
♪ 人~生~は 大~はしゃ~ぎ 子~犬のように~ 無力~ ♪(筋肉少女帯『人生は大車輪』)
何か哀しいんだけど、ポカンと明るい。
「狸であったらだめですか」
狸に生まれたとて、人間の娘に恋をすることもあり、狸に生まれた以上、鍋の具材となることもある。まさに狸生は大はしゃぎ、毛玉のように無力・・・。
狸界を束ねてきた偉大な父・下鴨総一郎の想いと、母の大きな愛に包まれ、天狗を師匠として育った、矢一郎・矢二郎・矢三郎・矢四郎の下鴨四兄弟。責任感が強く真面目だが土壇場になるとメンタル面の弱さを露呈する長兄。引きこもりで蛙に化けたきり元に戻れなくなった次兄。史上未曾有に化け力がお粗末な「尻尾丸出し君」である末弟。「高杉晋作ばりのオモシロ主義者」である私・矢三郎。
父の偉大さを受け継ぎ損ねた、ちょっと無念な四兄弟。無念だとて、無力だとて、今日も都の空の下でコロコロと生きている。
この世は、人間と狸と天狗の三つ巴でグルグル回る大車輪。思うに任せぬ浮世だけれど、身体に流れる阿呆の血の欲するところに従って、面白おかしく生きるに如かない。目の端に困難を捕まえていたって、僕らはブーツをピカリと磨いて、笑って行くしかないのだ。
ちょっと哀しい。ポカンと明るい。何だか泣き笑い。
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この話、何か感覚的に物凄くかぶる。若い頃、私の支えであったあの曲と。
♪ 人~生~は 大~はしゃ~ぎ 子~犬のように~ 無力~ ♪(筋肉少女帯『人生は大車輪』)
何か哀しいんだけど、ポカンと明るい。
「狸であったらだめですか」
狸に生まれたとて、人間の娘に恋をすることもあり、狸に生まれた以上、鍋の具材となることもある。まさに狸生は大はしゃぎ、毛玉のように無力・・・。
狸界を束ねてきた偉大な父・下鴨総一郎の想いと、母の大きな愛に包まれ、天狗を師匠として育った、矢一郎・矢二郎・矢三郎・矢四郎の下鴨四兄弟。責任感が強く真面目だが土壇場になるとメンタル面の弱さを露呈する長兄。引きこもりで蛙に化けたきり元に戻れなくなった次兄。史上未曾有に化け力がお粗末な「尻尾丸出し君」である末弟。「高杉晋作ばりのオモシロ主義者」である私・矢三郎。
父の偉大さを受け継ぎ損ねた、ちょっと無念な四兄弟。無念だとて、無力だとて、今日も都の空の下でコロコロと生きている。
この世は、人間と狸と天狗の三つ巴でグルグル回る大車輪。思うに任せぬ浮世だけれど、身体に流れる阿呆の血の欲するところに従って、面白おかしく生きるに如かない。目の端に困難を捕まえていたって、僕らはブーツをピカリと磨いて、笑って行くしかないのだ。
ちょっと哀しい。ポカンと明るい。何だか泣き笑い。
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2008-07-09
夜は短し歩けよ乙女 : 森見登美彦
夜は短し歩けよ乙女 / 森見登美彦
ふはふはした存在への憧憬で頁が桃色に染まってしまいそう。
白状すると、読み始める前は、“また、脳内世界に現実がついてこない男の妄想が書き連ねられるのだろう。”と侮っていたところがある。ところが、読んでみると、ほかほか可愛く、わくわく楽しいお話であったよ。はぁ~、はふはふ、はふはふ・・・
黒髪の乙女が、己の心の欲するところに従ってふわふわと歩き回り、乙女を慕う男がそれを追いかけると、それに従って彼らの背景もくるくると動いていく~夜の街路を、古本の森を、奇妙な物体や団体が出現する学園祭最中の大学構内を、風邪の神がのし歩く師走の町を、彼らは歩く。現実と幻想(妄想?)をごちゃまぜにしながら、移り変わっていくその背景を眺めているのがなんとも楽しい。
森見氏の小説については、ストーリー云々というよりも、登場人物たちの背景に舞台としてある街や路地の描写・・・そっちの方にどうも私は惹かれているんだなぁと気付いた。
特に夜。人々は眠りにつき、わずかな人間だけが街を徘徊する夜。路地の先にぽつんと自動販売機の電気が点り、雑居ビルや民家がしん・・・と連なる町並の所々にネオンや街灯の明りが見えるリアルな風景の中を、すうっと気味悪いケモノや摩訶不思議な電車が走り抜ける、「きつねのはなし」や「太陽の塔」で描かれた夜。読んでいると、“ほぅっ”と胸に風が吹いて、ざわざわっと皮膚が興奮する。
森見氏の描く風景には詩情が漂っている。ともするとそれは滑稽さに覆い隠されてしまうのだけど・・・。
詩情を隠してしまおうとする滑稽、そこに男の含羞が見え隠れするのも好ましい。
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ふはふはした存在への憧憬で頁が桃色に染まってしまいそう。
白状すると、読み始める前は、“また、脳内世界に現実がついてこない男の妄想が書き連ねられるのだろう。”と侮っていたところがある。ところが、読んでみると、ほかほか可愛く、わくわく楽しいお話であったよ。はぁ~、はふはふ、はふはふ・・・
黒髪の乙女が、己の心の欲するところに従ってふわふわと歩き回り、乙女を慕う男がそれを追いかけると、それに従って彼らの背景もくるくると動いていく~夜の街路を、古本の森を、奇妙な物体や団体が出現する学園祭最中の大学構内を、風邪の神がのし歩く師走の町を、彼らは歩く。現実と幻想(妄想?)をごちゃまぜにしながら、移り変わっていくその背景を眺めているのがなんとも楽しい。
森見氏の小説については、ストーリー云々というよりも、登場人物たちの背景に舞台としてある街や路地の描写・・・そっちの方にどうも私は惹かれているんだなぁと気付いた。
特に夜。人々は眠りにつき、わずかな人間だけが街を徘徊する夜。路地の先にぽつんと自動販売機の電気が点り、雑居ビルや民家がしん・・・と連なる町並の所々にネオンや街灯の明りが見えるリアルな風景の中を、すうっと気味悪いケモノや摩訶不思議な電車が走り抜ける、「きつねのはなし」や「太陽の塔」で描かれた夜。読んでいると、“ほぅっ”と胸に風が吹いて、ざわざわっと皮膚が興奮する。
森見氏の描く風景には詩情が漂っている。ともするとそれは滑稽さに覆い隠されてしまうのだけど・・・。
詩情を隠してしまおうとする滑稽、そこに男の含羞が見え隠れするのも好ましい。
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2007-07-28
四畳半神話大系 : 森見登美彦
四畳半神話大系 / 森見 登美彦
事によると私は、幻と言われる「薔薇色のキャンパスライフ」を手に入れることも出来たかもしれないのに・・・。大学三回生の春までの二年間、実際私が狙い澄ましたように行ってきたのは社会的有為の人材となる為には不要なことばかりであり、私の横には人の不幸でご飯が三杯いける、悪意いっぱいの妖怪めいた男がへばりついている。
なぜ私は斯くも呪われた状況にあるのか? 私は何を間違えたのか? もしもあの時違う選択をしていたとしたら・・・?
時空を超えて増殖する、誇り高くも滑稽で、そこはかとなく哀しくも愛しい男子大学生の四畳半世界。
果てしない四畳半一周の旅から生還した男は、彼を呪われた生活に引き込んだ、妖怪めいた男の正体が実は愛情溢れる友人であったことを知る。ああ、これは『青い鳥』のお話か・・・。
・・・何ともむさくるしく、痛々しい男の話で、現実で彼に出会ったら、上手く対処できるかどうか自信は無いけれど・・・やはりどこか愛しく思うところはあるんですよ。願わくは、大変な旅を終えた彼を、大いなる愛情をもって過去の過ち込みで抱きしめてくれる、黒髪の乙女の現れんことを。
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事によると私は、幻と言われる「薔薇色のキャンパスライフ」を手に入れることも出来たかもしれないのに・・・。大学三回生の春までの二年間、実際私が狙い澄ましたように行ってきたのは社会的有為の人材となる為には不要なことばかりであり、私の横には人の不幸でご飯が三杯いける、悪意いっぱいの妖怪めいた男がへばりついている。
なぜ私は斯くも呪われた状況にあるのか? 私は何を間違えたのか? もしもあの時違う選択をしていたとしたら・・・?
時空を超えて増殖する、誇り高くも滑稽で、そこはかとなく哀しくも愛しい男子大学生の四畳半世界。
果てしない四畳半一周の旅から生還した男は、彼を呪われた生活に引き込んだ、妖怪めいた男の正体が実は愛情溢れる友人であったことを知る。ああ、これは『青い鳥』のお話か・・・。
・・・何ともむさくるしく、痛々しい男の話で、現実で彼に出会ったら、上手く対処できるかどうか自信は無いけれど・・・やはりどこか愛しく思うところはあるんですよ。願わくは、大変な旅を終えた彼を、大いなる愛情をもって過去の過ち込みで抱きしめてくれる、黒髪の乙女の現れんことを。
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2007-07-07
太陽の塔 : 森見登美彦
太陽の塔 / 森見 登美彦
青春の蹉跌も随分と軽やかになったものだ。肥大する自尊心に現実がついていかない孤高の男子学生の悶々が、ファンタジーとなってしまう日が来るとは! (まぁ、彼らの悶々はクリスマスの街についに小さな奇蹟を起こすのだが・・・)
『何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。なぜなら、私が間違っているはずがないからだ。』と言い切ってしまう傲慢。そして、同じクラブの女子学生の視線(真実を見透かすかのようなその視線・・・彼はそれを「邪眼」と呼ぶ)にさえ耐えられない程の恥じらい。その二つの間で分裂する我が身と精神を持て余しながら、端から見れば“何もしていない”としか見えない高尚な精神活動の結果を垂れ流す。
・・・で・・・それはそうと、日本ファンタジーノベル大賞受賞作だというが、いったいどのあたりからファンタジーになるのよ? と思っていたら・・・今まで読んでいたもの、それこそがファンタジーだった、という・・・。
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青春の蹉跌も随分と軽やかになったものだ。肥大する自尊心に現実がついていかない孤高の男子学生の悶々が、ファンタジーとなってしまう日が来るとは! (まぁ、彼らの悶々はクリスマスの街についに小さな奇蹟を起こすのだが・・・)
『何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。なぜなら、私が間違っているはずがないからだ。』と言い切ってしまう傲慢。そして、同じクラブの女子学生の視線(真実を見透かすかのようなその視線・・・彼はそれを「邪眼」と呼ぶ)にさえ耐えられない程の恥じらい。その二つの間で分裂する我が身と精神を持て余しながら、端から見れば“何もしていない”としか見えない高尚な精神活動の結果を垂れ流す。
・・・で・・・それはそうと、日本ファンタジーノベル大賞受賞作だというが、いったいどのあたりからファンタジーになるのよ? と思っていたら・・・今まで読んでいたもの、それこそがファンタジーだった、という・・・。
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