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2010-02-13

恋文の技術 : 森見登美彦

 京都の大学から、やわらかすぎる気骨を叩き直すため、能登の臨海実験所に送り込まれた男子大学院生・守田一郎。

 寂しさにまかせ、守田一郎は手紙を送り続ける ・・・ 恋に悩み“外堀を埋める友”へ、守田を苛め倒す先輩“私史上最高厄介なお姉様”へ、かつて家庭教師をしていた“みどころのある少年へ”“偏屈作家・森見登美彦先生”へ、兄を心配する“心やさしき妹”へ。友には恋のアドバイスを、最凶の先輩には一矢報いんとの心意気を、少年には大人の知識と良識を、作家には小説のネタを、妹には兄の大きさを・・・。

 守田一郎は決して弱音を吐かない。この大量の手紙による『文章武者修行』は、いつの日か『恋文代行ベンチャー企業』オーナーへと成り上がるための布石なのだ。

 ・・・などと・・・大言壮語を吐きながら、文通相手の阿呆さ加減に怒りながら・・・ 守田一郎は途方に暮れている。


 夜に不安になって眠れなくなると、商店街の書店でおじいさんから借りてきた古い映画のビデオを見たりします。映画が終わると、いっそうやりきれない気持ちになる。寝ようとしても、いろいろとよけいな考えが湧き上がってきて困ります。未来が見えない。 ~『偏屈作家・森見登美彦先生へ』


 途方に暮れる自分に密かに抱く忸怩たる思い。

 この忸怩たる思いを気取られまいと、なにしろ強がりながらも、ぽろぽろ漏れ出してしまう守田一郎の心に、その途方に暮れっぷりに、きゅ~んとくる小説である。

 でも世の中には、こういう切ない思い出をもつ人がたくさんいる、ということを知っているだけで何だかホッとしませんか。少なくとも、先生はそういうお話をたくさん知っていて、それは先生の財産です。 ~ 『続・見どころのある少年へ』



 半年間、能登の地で迷走に迷走を重ね確立した「恋文の技術」は、十一月十一日大文字山に奇跡を起こすのか?

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genre : 本・雑誌

2009-08-19

美女と竹林 : 森見登美彦

 いったい、この人は・・・臆病で繊細な兎ちゃんなのか、大胆で人を食った狸なのか・・・。両者ミックス・・・なんだろうな。ふるふると震えているかと思うと、意外に狡賢い手で打って出る兎。楽しげに浮世を渡っているかに見せかけて、自分で自分の首を絞めたりしてる狸。


 机上で事件を起こし続けた妄想家・登美彦氏は、遂に現実世界に事件を起こし人気文士となる。妄想家の人気文士は、自らの将来を見据えた「多角的経営」~「竹林経営+美女」のあらましをエッセイにしたためることを計画。

 しかし、氏が現実世界に起こした事件の数々およびその余波 ~ 文学賞受賞、マスコミの取材、サイン会、テレビ出演、締切、締切、締切・・・ ~ は、ご本人の管理能力をはるかに超えた荒々しさで襲ってくる。なす術もなく押し流される登美彦氏。

 竹林経営どころか、まったくもって、大好きな竹林に赴く暇も無い始末。(それでも、美女にはちゃっかり会ってる人気文士。意図したのとは違う形だったかも知れないけど。)

 「美女と竹林」がテーマであったはずのエッセイは、早々と行き詰まり&破綻寸前の様相を呈してくるが、人気文士はそこを何とか妄想と詭弁でカバーしようとじたばたしてみる。

 汗をかきかき奮闘する痩せぎすな文士の姿が見えるようだが、既に破綻が見えている「竹」テーマで、あくまでも話を続けようとする(「美女」テーマは早い段階で放棄されている。もしくは巧妙にすり替えられている。)依怙地さは、文士精一杯の誠意なのか?

 それとも、この“あきらかに行き詰まってる風な感じ”すらフェイクであって、自虐的トーンで読者を魅了する文士の術中にまんまとはめられているんだろうか?


 ま、いずれにしても面白かったからいいか・・・と思う。

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2009-03-07

有頂天家族 : 森見登美彦

 この話、何か感覚的に物凄くかぶる。若い頃、私の支えであったあの曲と。
 
 ♪ 人~生~は 大~はしゃ~ぎ 子~犬のように~ 無力~ ♪(筋肉少女帯『人生は大車輪』)

 何か哀しいんだけど、ポカンと明るい。

 
 「狸であったらだめですか」

 狸に生まれたとて、人間の娘に恋をすることもあり、狸に生まれた以上、鍋の具材となることもある。まさに狸生は大はしゃぎ、毛玉のように無力・・・。

 狸界を束ねてきた偉大な父・下鴨総一郎の想いと、母の大きな愛に包まれ、天狗を師匠として育った、矢一郎・矢二郎・矢三郎・矢四郎の下鴨四兄弟。責任感が強く真面目だが土壇場になるとメンタル面の弱さを露呈する長兄。引きこもりで蛙に化けたきり元に戻れなくなった次兄。史上未曾有に化け力がお粗末な「尻尾丸出し君」である末弟。「高杉晋作ばりのオモシロ主義者」である私・矢三郎。

 父の偉大さを受け継ぎ損ねた、ちょっと無念な四兄弟。無念だとて、無力だとて、今日も都の空の下でコロコロと生きている。

 この世は、人間と狸と天狗の三つ巴でグルグル回る大車輪。思うに任せぬ浮世だけれど、身体に流れる阿呆の血の欲するところに従って、面白おかしく生きるに如かない。目の端に困難を捕まえていたって、僕らはブーツをピカリと磨いて、笑って行くしかないのだ。

 ちょっと哀しい。ポカンと明るい。何だか泣き笑い。

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2008-07-09

夜は短し歩けよ乙女 : 森見登美彦

 ふはふはした存在への憧憬で頁が桃色に染まってしまいそう。

 白状すると、読み始める前は、“また、脳内世界に現実がついてこない男の妄想が書き連ねられるのだろう。”と侮っていたところがある。ところが、読んでみると、ほかほか可愛く、わくわく楽しいお話であったよ。はぁ~、はふはふ、はふはふ・・・

 黒髪の乙女が、己の心の欲するところに従ってふわふわと歩き回り、乙女を慕う男がそれを追いかけると、それに従って彼らの背景もくるくると動いていく~夜の街路を、古本の森を、奇妙な物体や団体が出現する学園祭最中の大学構内を、風邪の神がのし歩く師走の町を、彼らは歩く。現実と幻想(妄想?)をごちゃまぜにしながら、移り変わっていくその背景を眺めているのがなんとも楽しい。

 森見氏の小説については、ストーリー云々というよりも、登場人物たちの背景に舞台としてある街や路地の描写・・・そっちの方にどうも私は惹かれているんだなぁと気付いた。

 特に夜。人々は眠りにつき、わずかな人間だけが街を徘徊する夜。路地の先にぽつんと自動販売機の電気が点り、雑居ビルや民家がしん・・・と連なる町並の所々にネオンや街灯の明りが見えるリアルな風景の中を、すうっと気味悪いケモノや摩訶不思議な電車が走り抜ける、「きつねのはなし」や「太陽の塔」で描かれた夜。読んでいると、“ほぅっ”と胸に風が吹いて、ざわざわっと皮膚が興奮する。

 森見氏の描く風景には詩情が漂っている。ともするとそれは滑稽さに覆い隠されてしまうのだけど・・・。

 詩情を隠してしまおうとする滑稽、そこに男の含羞が見え隠れするのも好ましい。

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2007-07-28

四畳半神話大系 : 森見登美彦

 事によると私は、幻と言われる「薔薇色のキャンパスライフ」を手に入れることも出来たかもしれないのに・・・。大学三回生の春までの二年間、実際私が狙い澄ましたように行ってきたのは社会的有為の人材となる為には不要なことばかりであり、私の横には人の不幸でご飯が三杯いける、悪意いっぱいの妖怪めいた男がへばりついている。

 なぜ私は斯くも呪われた状況にあるのか? 私は何を間違えたのか? もしもあの時違う選択をしていたとしたら・・・?


 時空を超えて増殖する、誇り高くも滑稽で、そこはかとなく哀しくも愛しい男子大学生の四畳半世界。

 果てしない四畳半一周の旅から生還した男は、彼を呪われた生活に引き込んだ、妖怪めいた男の正体が実は愛情溢れる友人であったことを知る。ああ、これは『青い鳥』のお話か・・・。

 
 ・・・何ともむさくるしく、痛々しい男の話で、現実で彼に出会ったら、上手く対処できるかどうか自信は無いけれど・・・やはりどこか愛しく思うところはあるんですよ。願わくは、大変な旅を終えた彼を、大いなる愛情をもって過去の過ち込みで抱きしめてくれる、黒髪の乙女の現れんことを。

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2007-07-07

太陽の塔 : 森見登美彦

 青春の蹉跌も随分と軽やかになったものだ。肥大する自尊心に現実がついていかない孤高の男子学生の悶々が、ファンタジーとなってしまう日が来るとは! (まぁ、彼らの悶々はクリスマスの街についに小さな奇蹟を起こすのだが・・・)

 『何かしらの点で、彼らは根本的に間違っている。なぜなら、私が間違っているはずがないからだ。』と言い切ってしまう傲慢。そして、同じクラブの女子学生の視線(真実を見透かすかのようなその視線・・・彼はそれを「邪眼」と呼ぶ)にさえ耐えられない程の恥じらい。その二つの間で分裂する我が身と精神を持て余しながら、端から見れば“何もしていない”としか見えない高尚な精神活動の結果を垂れ流す。

 ・・・で・・・それはそうと、日本ファンタジーノベル大賞受賞作だというが、いったいどのあたりからファンタジーになるのよ? と思っていたら・・・今まで読んでいたもの、それこそがファンタジーだった、という・・・。

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2007-05-26

きつねのはなし : 森見登美彦

 京都~入り組んだ細い路地、雨の降り出しそうな気配、真っ暗な夜の通りにぽつんとただ一つ灯りをともす自動販売機、狐の面、坂の上の古い屋敷と陰気な主人、古道具屋、そして・・・白い歯を剥きどこか人間臭い顔でふりかえる、妙に胴の長い四足のケモノ。

 古道具屋『芳蓮堂』と、この正体のわからないケモノを接点に、ゆるやかに世界を共有する4つのお話。

 白黒のつかない不思議。決して激しくはない、しかし無防備な背中にぽつんと冷たい水滴が垂れ落ちたような恐ろしさ。4つの話の主人公~語るのはすべて大学生だ。

 
 深夜の路地を、何の企みも衒いもなくぶらぶらと歩けるのは、大学生という身分・年齢・時期・・・そういったものの持つ特権だと思う。(もう少し年齢が低かったり、高かったりすると『深夜の徘徊』って少し特別な意味とか意図を帯びてくると思うんですよね。) そういう大学生の目で見て語ったお話だからこそ、不思議は不思議のまま留め置かれ、恐怖は嫌悪や憎悪に変わっていくことなく、『恐怖』として純粋に在りつづけている・・・という気がする。

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