2018-04-14

小川洋子の陶酔短篇箱 : 小川洋子編著

『小川洋子の陶酔短篇箱』 小川洋子編著

 人にはその人にしか見えぬそれぞれの世界がある。

 世界とは、

 ノートに書いたばかりの文字が吸取紙に吸い取られる瞬間の形態を想像し、石油を喰うという微生物の名『プシュウドモナス・デスモリチカ』を呪文のように唱えつつ「俺は早く土星に行かなくちゃ」と思う青年の頭の中であったり(「牧神の春」中井英夫)、

 『ひとつひとつはただ意味なく狂奔しているように見えるけれど、誰がなんでそんなことをするのか知らないが、どこかで牛耳っているものがあって、それで全体が一糸乱れず狂奔している』ような電車たちの世界に魅入られた生活であったり(「雀」色川武大)、

 友人から贈られた一匹の真っ白な鯉であったり(「鯉」井伏鱒二)、

 あるいは一人の女が〝たいてい午前零時をまわったころに帰ってくる夫”を待ち続けるマンションの一室(「流山寺」小池真理子)だったり。

 世界の箱庭のような作品たちを小川洋子氏がまた丹念に箱詰めしたアンソロジー。それぞれの世界に感応し滲みだした小川氏の世界がエッセイとして作品ごとに添えられている。



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2018-03-31

我等、同じ船に乗り 心に残る物語―日本文学秀作選 : 桐野夏生編

『我等、同じ船に乗り 心に残る物語―日本文学秀作選』 桐野夏生編

 アンソロジーを読む場合は、自分の好みに合うテーマに沿って編まれたものや、好きな作家が編んだものを選ぶことがほとんどなのだけど、作品を読んだことのない桐野夏生氏の編んだものを今回手に取ったのは、どこか共犯関係を感じさせるタイトル~『我等、同じ船に乗り』~が気になったから。

 アンソロジーを読む楽しみは、これまで触れる機会のなかった、そしてこれからもなかなか手に取ることはないかも知れない作品や作家に出会うことだったり、自分とは異なる編者の視点を知ることだったりしたのだが、本アンソロジーの収穫は、他の収録作品を交えて読むことで、これまで何度も読んできた作品の今まで感じたことのない味わいを知ったことであった。

 乱歩の「芋虫」・・・これまで何回も読んだ作品ではあるが、須永中尉が柱に刻んだ「ユルス」という文字がこれまでになく哀しく、美しく見えたのは、前後に配された作品~島尾敏雄の「孤島夢」、島尾ミホの「その夜」、林芙美子の「骨」、坂口安吾の「戦争と一人の女」など戦争の中の人の生を描いた小説~があったからであろう。

 その他・・・ 

 編者が「忠直卿行状記」の本歌取りのような作品と紹介した太宰治の「水仙」。滑稽味を漂わせながらもグルグルと渦巻く感情を描きつくす太宰治の凄まじさったらない。どうしても血まみれの(もしくは紫色に腫れ上がった)笑顔を連想してしまう。

 それぞれの思惑と計略を秘めて認められる夫婦の日記~谷崎潤一郎「鍵」。私にとってはさして興味も関心もなく、むしろ退屈に感じられる家族の粘っこい駆け引きが執拗につづられていて・・・辟易した。

【収録作品】
島尾敏雄「孤島夢」
島尾ミホ「その夜」
松本清張「菊枕」
林芙美子「骨」
江戸川乱歩「芋虫」
菊地寛「忠直卿行状記」
太宰治「水仙」
澁澤龍彦「ねむり姫」
坂口安吾「戦争と一人の女」「続戦争と一人の女」
谷崎潤一郎「鍵」 



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2017-10-21

謎の物語 : 紀田順一郎編

『謎の物語』 紀田順一郎編

 結末が語られる前にプツリと断ち切られる物語。何故? 何が? 不条理、不可思議、不可解・・・様々な謎を含んだ物語。

 物語の中で起こるべき「もっとも怖ろしい出来事」「想像を絶する災難」、「断ち切られた物語の結末」「謎の答え」をそれぞれの読者の心の中に求めるスタイルの物語群。しっかりとその効果を計算して書かれたと思しき緊迫感溢れるものから、作者が自らの着想に振り回されたまま放り出したような印象の作品まで、色んなタイプの物語が並ぶ。海外作品については翻訳文体にも味があって、その部分でも楽しめる。

 収録作の中では、木々高太郎「新月」の古風とモダンの混ざりあった香りの高さと、ザワザワするような余韻が印象に残る。稲垣足穂の「チョコレット」は「謎の物語」というのとは趣が違うが、ユーモラスかつ硬質な幻想世界が心地良い。

【収録作品】
「女か虎か」 F.R.ストックトン
「謎のカード」 C.モフェット
「穴のあいた記憶」 B.ペロウン
「なにかが起こった」 D.ブッツァーティ
「茶わんのなか」 小泉八雲
「ヒギンボタム氏の災難」 N.ホーソーン
「新月」 木々高太郎
「青頭巾」 上田秋成
「なぞ」 W.デ・ラ・メア
「チョコレット」 稲垣足穂
「おもちゃ」 H.ジェイコブズ



文庫版は収録作品にかなりの変更があるようです。



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2017-01-07

人生は賢書に学べ  読み切り 世界文学 : 著・山本史郎 イラスト・大竹守

『人生は賢書に学べ  読み切り 世界文学』 著:山本史郎 イラスト:大竹守

 この本を読むべきか否か、かなり迷ったのだ。世界の名作をあらすじで読んでしまっていいものか? だから、手に取って読み始めた後もずっと言い訳を考えていた。

 なにごともやらないよりは、やった方が得るものがある(多分)・・・よね?
 
 そもそも私は、外国文学なんて小さい時分にお子様向け世界名作全集的なものを読んで以来ほとんど読んでこなかったんだから、たとえあらすじだけでも読んでおくにこしたことはない・・・と思う。

 ゆるぎない世界的名作といっても、若いうちに読んでこそ大きく響くものがある作品ってのはあるはず。今さら読んでも遅そうな作品をあらすじだけ読んですましちゃうってのもいいんじゃない? 残りの人生で読める本の冊数なんて限られてるんだしさぁ・・・。

  ・・・とか何とか。

 実際、あらすじだけで何かをキャッチするためにはかなりの想像力が必要なわけで、「グレート・ギャッツビー」なんかは、あらすじを読んだだけではいったいなにが何なんだか、どのあたりがいいとこなんだかちんぷんかんぷん。「異邦人」や「百年の孤独」や「戦争と平和」のように、あらすじを読むだけでそれぞれに、すべてに倦んだような気分や、なんだか過剰に溢れ出るもの、大河ドラマのようなスケールの大きさと重層的なストーリーの厚みを感じさせるものもあったけど。 

 「若きウェルテルの悩み」「白鯨」「ライ麦畑でつかまえて」「百年の孤独」「戦争と平和」「ホビット」「神曲」「レ・ミゼラブル」他、18篇を収録。「読んだ方がいいんだろうな。」と思った作品はいくつかあった。でも、実際に読めるかどうかは・・・わからない。




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2015-03-07

『ホビット 決戦のゆくえ』設定画集

 気が付いたときにはもうどうしようもなく好きになってしまっていた、ということはあるもので・・・。


 昨年末、映画『ホビット 決戦のゆくえ』を見た直後は、「面白かったけど、期待したほどではなかったなぁ~」くらいにしか思っていなかったのだ。

 それが、お正月を迎えるころになって・・・ふと目の前をトナカイ(と思っていたがヘラジカらしい)、つづいて太い眉毛がよぎるようになり、「あれ?」と思ったときにはもう寝ても覚めても闇の森のエルフ王・スランドゥイルのことが頭からはなれなくなっていた!

 白金の豊かな髪、優雅な物腰、ノーブルな太眉、鹿、二刀を振るっての鬼神の戦いぶり、不敵な微笑み、傲然とした冷たい表情とその下に隠した愛情深いハート。ああ、もう、スランドゥイル王、闘いの時にはあんなに獰猛な武闘派エルフの王のくせに、あなた、なんでそんなに傷つきやすいんだ。

 「もう一度、王を見たい」「ああ、まだ足りない」・・・と、同じ映画を繰り返し見ることなんてほとんどない私が、スランドゥイルのために4回も劇場に通ってしまった。

 映画公開も終わった今、止まらないスランドゥイル愛を持て余しているっ!!! DVDを入手するまでの間(プレーヤー持ってないのにDVD買う気満々)何か王を思うよすがが欲しい・・・というわけで、本画集を購入。

 結構な大判だし値段も張るし、収納場所もお小遣いも乏しい私にとっては悩ましい買い物だったのだけど、届いた画集にはお値段以上の価値があった。実際に映像に使われたものだけでなく、映像には映らない部分のディティール、世界観を構築していく過程をスケッチやイラスト、デザイン画で見ることができ、そこに注がれた愛情、熱意、おしみなく出されたアイデアに感動する。

 何より嬉しかったのは、デザイナーたちによるスランドゥイル王の妄想戦闘シーンのイラストが収録されていること。映像化はされなかったほどの超人的な戦いぶりが素敵すぎる。添えられるデザイナーたちの言葉も熱い。

 映画にはレゴラスとタウリエルの参戦に加え、戦闘に備えて甲冑に身を固めたスランドゥイルが登場し、観客は怒りと凶暴さをまとい、輝くような真のエルフ王の姿を目にすることができます。


 ピーターから、スランドゥイルの戦闘シーンを大渦巻きのように見せたいというリクエストがありました。彼を「死の渦巻き」に見立てようというわけです。そこで彼の周りに舞い散る雪を動かして、戦いながら突き進む彼の剣が閃光を放ちながら雪と血の渦を巻く様子を描きました。


 こうした(スランドゥイルの戦闘シーンの)アイデアは現れては消えていきましたが、心の目ではこれらが上映されているところを見ることができました。





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2015-01-24

エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談-憑かれた鏡 : エドワード・ゴーリー編

『エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談-憑かれた鏡』 エドワード・ゴーリー編

 このブログへのコメントで紹介して頂いた一冊。どんより曇った冬の日に読む怪談も乙なもの。

 禍々しいものが棲みつく曰くつきの家、呪いやまじない、つきまとう亡霊、不吉な夢、謎の影、恐ろしい言い伝え。どれもクラシックな味わいのある12の怪談。各作品の扉をエドワード・ゴーリーの挿絵が飾り、白と黒で描かれたの深い陰影に、じくじくと暗鬱な気分、不吉な予感がしみだしてくる。

 因縁や真相めいたものを語ることなくポンと放り出された怪異に震える。雨模様の湿って陰鬱な町の様子、森や岩場に蟠る闇、郊外の丈高い草が生い茂る丘や林の木々をざわめかせる風・・・描かれる風景の不穏さにも気分がざわめきます。

 しかし、超常的な怪異そのものよりも、怪異に関わる人たちの異様さの方が恐い。自分から嬉々として幽霊屋敷に乗り込んでおきながら、振り切れた怖がりっぷりを見せる「空家」のジュリア叔母とか、「信号手」の男の沈みっぷり、「判事の家」に棲むものの度外れた邪悪さ、「古代文字の秘法」カーズウェル氏の逆恨み具合と恐るべき偏執ぶりとか・・・。




この本を紹介していただいたリネさま

ゴーリーの挿絵や翻訳の良さもあるのでしょうが、とても雰囲気を楽しめる短篇集でした。
ありがとうございました。

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2014-12-27

忘れられない一冊 : 週刊朝日編集部・編

『忘れられない一冊』 週刊朝日編集部・編

 三浦しをんさんが異彩を放っている!

 主に文筆を生業とする著名人たちの「忘れられない一冊」。多くの人が人生の節目節目で出会った本や、忘れがたいシチュエーションで読んだ本、大切な人や時間の記憶と分かちがたく結びついている一冊を挙げている中で、しをんさんが披露するのは「ウン○を食べる話」の話である。

 小学生の頃に読んで感銘を受けた(感銘を受けたのか?!)、平安貴族の男が恋しい女のウン○を食べる話について、「あれは何と言う作品だったか?」と首をひねるしをんさん。しんみりと感動的なエピソードが並ぶ中に「ウン○を食べる話」の話とは! 一瞬言葉を失ってしまう。

 しをんさんほどの読み手ともなれば、「忘れられない一冊」なんてたくさんあるだろうに、よりによって、よりによって・・・(笑)。でも・・・ここにしをんさんの「ウン○を食べる話」が収録されていることを思うと、じんわりとお腹の中から力がわいてくるような気がするのだ。

 人生なんて何もそんな深刻なばかりのモンじゃない。「ウン○を食べる話」のことが気になって仕方がない、昔読んだ「ウン○を食べる話」について〝あれは何であったか・・・”と時折思い出しては考えている、そんな一時もある。人生ってそんなもんだよって・・・。


 それから・・・「夢の中で手に入れた本」について、まるでそれが実在するかのようにありありと語ってみせた吉田篤弘氏の「思わぬ収穫-夢の中の古本屋で」も、奇妙で面白い話であった。



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2014-10-18

リテラリーゴシック・イン・ジャパン 文学的ゴシック作品選 : 高原英理編

『リテラリーゴシック・イン・ジャパン 文学的ゴシック作品選』  高原英理編

 「リテラリーゴシック」~「文学」の形をとって具現化された「ゴシックなるもの」。中世風の怪奇趣味に彩られた「ゴシックロマンス」の枠組みにとらわれず、「暗黒」「不穏」「残酷」「耽美」「可憐」を重要な要素とし、『人間の持つ暗黒面への興味』『恐怖や残酷さへの思惟』から生まれた短篇作品を集めたアンソロジー。

 日本文学における「ゴシック」の黎明期の作品として泉鏡花、他。猟奇と怪奇を語る戦前ミステリの中から乱歩、横溝、小栗虫太郎。『血と薔薇』の一群から澁澤、三島、塚本邦夫、中井英夫、他。60~90年代の幻想文学から須永朝彦、葛原妙子、赤江瀑、山尾悠子、古井由吉、皆川博子、久世光彦、他。そして、乙一、伊藤計劃、桜庭一樹、京極夏彦、小川洋子、大槻ケンヂ、編者である高原英理らによる「ゴシック」の現在。

 錚々たる名前が連なる中で、石の都の廃墟と化した世界で愛の内に閉じて歩き続ける二人の男女と二人を囲んで行軍する死の群れを語る、絵画的あるいはある種の舞踏的な山尾悠子の『傳説』~美しくも恐ろしげなヴィジョンをともなって想念が自在にうねる古井由吉『眉雨』と続くあたりが圧巻だった。

 実は古井由吉の『眉雨』は収録作品中いちばん訳のわからない作品だったのだが、いちばん酷く私を引っ掻いていったのもこの『眉雨』だった。

『いよいよ間近に迫った事態を、実現するよりも先に、現実よりも生々しく聞き取り、聞き奪って、阻止する。身の内の恐怖を、血のにおいよりも濃く煮つめて凝固させ、その中に敵の来襲を封じる。』

『厄災の到達をぎりぎりまで、見ることの恐怖、見る側の恐怖の力によって押し留め、その猶予の間に、寄せる敵勢の源にあるはずの、攻めの恐怖を鼓舞する熱狂に、なろうことなら、ひとすじの太い視線の針を立てる。』


 恐れること~恐怖する力を極限まで高めることで、恐るべきもの、厄災の到来を阻止するという着想に震えた。

 世界と自分自身の奥底にある暗がりを見つめ続けるものだけが「ゴシックなるもの」を作品として取り出すことができる。暗がりを見つめ続ける熱狂と、暗がりにあるものを見極め、暴く明晰さ。その明晰さが残酷・・・であるような気がする。


 ところで、本アンソロジーのおかげで気になっていた謎が一つ解けた。

 以前、こちらのエントリーにも書いたのだけど、梶井基次郎の「Kの昇天」について私は「Kが月へ登っていった後の浜辺には、Kの義眼が残っていた」という妙な記憶違いをしていた。

 なんでそんな記憶違いを? と思っていたのだけど・・・

 海辺の別荘に病身を養う青年、月、砂浜・・・そんな共通するイメージのせいで、「Kの昇天」と横溝正史の「かいやぐら物語」が綯交ぜになっていたらしい。「かいやぐら物語」の最後に描かれる月光を透かしたガラスの義眼が、私の記憶の中でKの義眼になっていたのだ。



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2012-08-04

まさかジープで来るとは : せきしろ・又吉直樹

『まさかジープで来るとは』 せきしろ・又吉直樹

まさかジープで来るとは


 まずはシンプルな驚き。次いで、思わず漏らす失笑と同時にこみ上げる嘲りとも、憧れとも、尊敬とも、畏れともつかないこんがらがった感情。「ジープ」があけた風穴を抜けて、引き出された色んな想いが広がっていく。人は「花」や「月」にだけでなく「ジープ」にまで、様々に物想うようになったんだなぁ。

 じわりと内省的な共感を呼ぶ言葉が多い中で、タイトルにもなっているこの句は、ジープという車両の底抜けのワイルドさのせいか、何か、パカンと“開いた”感じがする。

 ここに収められている言葉たちが、自由律俳句なのか、それともリズムにのった自虐的なあるある、もしくはシュールな一言ネタなのか、それはよくわからないけれど、「ネタ」か、「詩」「句」かを分けるのは、この“開いた”感覚なんじゃないかと思う。

 言葉によって呼び起こされるものが内向きな共感に留まらず、喜びにせよ、悲しみにせよ、怒りにせよ、羞恥にせよ、恐怖にせよ、驚きにせよ、そこに“開かれた”何かが感じられた時・・・何かちょっと、ふるえる。




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2011-08-27

実は平家が好き。-目からウロコの「源平」、その真実

『実は平家が好き。―目からウロコの「源平」、その真実』

 昨年『平家物語』を読んだんだけども、清盛はじめ平家の人たちって、まぁ多少の奢りはあったにせよ、そんなに悪人とは思えないのよねぇ。色んな政治の局面ではなかなか大人な対応もしているし。それにひきかえ源氏の武将たちは、卑怯で残忍で野蛮なケダモノのよう。特に義経なんて、手柄に汚く、卑怯な手を使うのが得意で、正々堂々と戦うなんてはじめからアタマに無い。自分の思い通りにならないとすぐキレて、部下とマジ喧嘩。とても大将の器とは思えない実に残念な男。

 源氏方に悪評がたちこそすれ、平家が悪人に貶められるような内容ではなかったと思うんだけどなぁ~『平家物語』って。奢り昂ぶった極悪非道の悪人。貴族かぶれして猛々しさを失った情けない武士。そういうイメージってどこから出てきたんだろう。

 そういう悪評にさらされる平家の人々を弁護する。国際感覚に長け、合理的な精神と卓越した政治的センスと行動力を持った清盛の実績を再評価し、重盛、知盛、教経、敦盛、忠度、経正、惟盛ら魅力的な平家の男たちの死に様、生き様を見ることで、華麗なる一族・平家の姿を浮き上がらせる。

 内容は歴史雑学的な軽いものだけど、『平家物語』の名シーンを反芻しながら読むとちょっと感動。




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