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2009-02-18

ケッヘル : 中山可穂

 海に向かって一心不乱に指揮棒を振る男。

 印象的かつ、どこかアンバランスで、こちらの胸に不穏な黒雲が広がるのを感じさせる冒頭のシーンに摑まれてからは、前につんのめるようにして、長いストーリーを読み終えた。

 生きる上での全てをモーツァルトに支配された男・遠松鍵人。心の壊れてしまった恋人を捨て、逃亡の旅を続ける木村伽椰。英仏国境の町での二人の出会いから、遠松の過去、伽椰の現在を交互に描いてストーリーは進む。

 遠松との出会い以来、伽椰の目の前で次々と死んでいく男たち。男たちの死の前後に必ず開かれているオールモーツアルトプログラムのピアノコンサート。美しい獣のようなピアニストに伽椰は激しく恋をする。

 すべての出来事の裏に働いているのは、誰の意思なのか?

 
 モーツァルト狂の遠松。恋愛のケモノ道に、一切の冷静さを失って踏み込んでいく伽椰。その他にも過剰な情熱で一線を越えてしまた者たちの異様さが際立って、読んでいて少々、人あたり・・・というか、狂気と熱気と毒気にあてられてフラフラになってしまった。

 中山可穂の小説を全部読んでいるわけではないけど、作中で描かれる人物が変化してきているのかな・・・と感じる。

 例えば、「猫背の王子」の王寺ミチルは、ぐるぐると猛スピードで渦巻く、生死に関わるほどの情熱を、何とか自分の薄い皮膚一枚の内に留めて、孤独に耐えていた。ギリギリの一線上を物凄い精神力で歩こうとしているミチルの、ヒリヒリとした切実さには何度も泣かされた。

 『ケッヘル』の登場人物たちは、皮膚にいくつもの綻びがあって、渦巻く情熱はその綻びから外へと漏れ出してしまう。意識的にしろ、無意識にしろ、身体の内に留められなくなった狂気のような情熱は、自分だけでなく周囲の人たちを巻き込み、傷つけ、損なってしまう。

 激しすぎる情熱に、自分以外の者とともに巻かれたことのある彼らは、犯罪者であったり、社会的な規範に照らして、“ど~よ?”と思わせる人物であったりするのだけど、少なくともミチルさんのように孤独ではない。

 ・・・もしかして、その、「孤独ではない」ってことが、「愛」っていうもんだったりするんだろうか?

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genre : 本・雑誌

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