FC2ブログ
2020-04-04

ペガサスの解は虚栄か? : 森博嗣

『ペガサスの解は虚栄か?  Did Pegasus Answer the Vanity?』 森博嗣

 パリの博覧会から逃亡したウォーカロンにはクローンを産む疑似受胎機能が搭載されていた可能性がある。スーパーコンピュータ・ペガサスからの示唆を受けて、ハギリたちは、そのウォーカロンが潜んでいると思われるインドの資産家のもとを訪ねる。

 八人の夫人と三人の子を持つ資産家・ケルネィは最近生まれた三人目の子の出生に不審を抱いている。

 人間、ウォーカロン、クローン・・・どこからが人間で、どこからが人間でないものなのか? それらを区別するものは何なのか? 

 このシリーズ中、繰り返し提示されてきたこの問いの中で、今回繰り広げられるのは、この作品世界においては随分旧態依然としたものに見える血縁に絡んだ愛憎劇。合理的とは言えない行動を彼らは何故とったのか?

 肉親であるが故に生まれる感情、関係とともに、人と人が、人とウォーカロンが、人とAIが、AI同士が何等かの関係性を保つことによって生まれる様々なものが描かれる。エピローグで語られるペガサスの状況は・・・ちょっと誰か、何とかしてあげてほしい。


 ハギリ博士、何だか守られることに慣れちゃって、ちょっと駄々っ子のようになっていないか? もうちょっと、護衛の皆さんの言葉に耳を傾けるべきじゃないでしょうか? そういえば、『デボラ、眠っているのか?』でだったか、「ハギリ博士って、ひょっとしてウォーカロンなのか?」って思った瞬間があったんだけど、あれは何でそう思ったのかなぁ。




FC2 Blog Ranking
スポンサーサイト



theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

2020-03-22

青白く輝く月を見たか? : 森博嗣

『青白く輝く月を見たか?  Did the Moon Shed a Pale Light?』 森博嗣

 長い間、人間社会のあらゆるデータを収集し、学習を積み、今や自分の思考の中に閉じこもってしまったスーパーコンピュータ・オーロラ。五千メートルの深海に引きこもってしまったオーロラとの対話を試みるべく、北極基地へと赴くハギリ。

 詩情を解する孤独なAI。AIと人間の間に生まれる友情、恋愛。氷に閉ざされた深海。青白い月。親愛なる人へ贈る花束。

 これまでになくロマンティックなお話。ちょっと感傷的な古いSFを読んでいるような感触。



FC2 Blog Ranking

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

2020-03-07

私たちは生きているのか? : 森博嗣

『私たちは生きているのか?  Are We Under the Biofeedback?』 森博嗣

 ウォーカロンが大勢集まって暮らすという村の情報を得て、ハギリたちはその村~『富の谷』があるというアフリカ南端へと赴く。無邪気な案内人ローリィに連れられて『富の谷』を訪れたハギリたちの前には・・・

 様々なかたちの「生きているもの(仮)」たちが登場する。最後のページを閉じた後、改めて表紙を見て、「ああ、そういうタイトルだったのだなぁ」と気づく。

 自分を「人間ではない」「生きていない。生きているものではない」というローリィの真意、彼の生のかたちについては、もう少し考え続けてみたい。



FC2 Blog Ranking

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

2020-02-22

デボラ、眠っているのか? : 森博嗣

『デボラ、眠っているのか?  Deborah, Are You Sleeping?』 森博嗣

 『存在することを、生きているというのだ、人間はね』

 フランスの古い修道院で発見されたスーパーコンピュータとそれを守って暮らすウォーカロンの一群。また、ネットに遍在し活動する「トランスファ」の存在が明かされる。

 人工知能同士の演算戦。人間が生活する場所とは異なる領域で絶え間なく続いている戦闘。・・・このシリーズ、『スカイクロラ』のイメージともつながってきたなぁ。うん、そういえばこのシリーズの最初から、ウォーカロンの在りようはキルドレを連想させるものだったな。

 ハギリ博士、ヴォッシュ博士二人は、あるものを信じて、ある選択をした。その選択は何につながっていくのか? 何をもたらすのか?

 ヴォッシュ博士が口にした情緒的とも思える言葉が印象に残った。この言葉は、この先の物語を読む中で、どのように響いてくるだろうか。




FC2 Blog Ranking

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

2020-02-08

風は青海を渡るのか? : 森博嗣

『風は青海を渡るのか?  The Wind Across Qinghai Lake ?』 森博嗣

 シリーズ三作目。

 生殖による人間の誕生が限りなくゼロに近づいた今なお人間の子供がうまれている村・ナクチュ特区で、ハギリは人類の聖地ともいえる遺跡の存在を知る。また、その遺跡と関係すると思われるスーパーコンピュータの存在が明かされ・・・

 人はどのように生きたいのか。どうありたいと願うのか。人はウォーカロンに何を望むのか。ウォーカロンは何かを願うのか。人とは、ウォーカロンとはどういうものなのか。人の意志や願いは現実に何らかの影響を及ぼすのか。人は、ウォーカロンは、現実とどう向き合うのか。そんなことをまんまと考えさせられる。

 そして、マガタ・シキは何をしようとしているのか。

 早く先を読み進めないと。



FC2 Blog Ranking

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

2020-01-25

魔法の色を知っているか? : 森博嗣

『魔法の色を知っているか? What Color is the Magic ?』 森博嗣

 Wシリーズ、順調に読み進めております。と同時に、マガタ・シキ博士が天才的な科学者というよりも、もうほとんど女神の如き存在感で登場するのを見るにつけ、これまで敬遠してきたS&M、V、Gの各シリーズも結局読まなきゃいけなくなるんじゃないのか? と、ちょっと恐怖しております。

 限りない寿命を得た一方で、子供を産むことができなくなった人間。『ウォーカロン』として生産される、人間とほとんど違いのない存在。・・・ハギリたちは今でも人間の子供が生まれているという地・チベットに向かう。

 物語世界の様相は割とわかりやすく提示されているし、ハギリたちを襲う事件はSFアクション映画さながらな感じだし、登場するキャラクターの造形もなんだか・・・このシリーズはエンターテイメント色濃いめなのかな。

 語り手であるハギリ博士、ご本人にあまり守られるべき自覚がない割に(なんで襲われるのかもわかんないんだから仕方ないといえばないんだけども)、随分厳重に献身的に守られてる。そのあたりの機微というか理由も、これから読み進めるうちにわかってくるのかなぁ。 




FC2 Blog Ranking

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

2020-01-11

彼女は一人で歩くのか? Dose She Walk Alone ? : 森博嗣

『彼女は一人で歩くのか? Dose She Walk Alone ?』 森博嗣

 長いシリーズものを読み通す根気に自信がなくて、これまで敬遠してきたのだけれど、この後に続くらしいWWシリーズが面白そうだし、これから読もうと思っている『赤目姫の潮解』をより楽しむためにも、このシリーズは読んでおいた方がいいのかな・・・と思い、意を決してとりかかりました。読み始めてみるとページがどんどん進んで、意外と早くシリーズ読み通せそう。

 人間の細胞から培養した人工細胞の身体に神経回路を人工的にインストールして生産される『ウォーカロン』。すでに人間との判別も困難になった『ウォーカロン』が人口のかなりの部分を占める世の中。科学者ハギリは突然命を狙われる・・・。

 世の中の現状を提示し、そして事件が起こる・・・これ一冊がシリーズのイントロダクションのような印象。

 頭の中から思考の糸をぐるぐる引き出してくれるのは、森作品の常のことだが、これまでのように架空の世界の中で純粋に思考するという感覚とは少し違って、本作では思考がかなり現実に引き寄せられる感じ。

 森作品を読んでいてゾワゾワするのは、リアルとは少し質感の違う夢の中のような視覚が開かれていくこと。それ以上にゾクリとするのが、その視覚が裏切られる、または更新される瞬間があること。さあ、この作品はこれから何を見せるのか・・・。



FC2 Blog Ranking

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

2019-12-14

謎手本忠臣蔵 : 加藤廣

『謎手本忠臣蔵』 加藤廣

 赤穂浪士の吉良邸討入りの裏には「ある筋」の思惑が動いていた。

 討入り計画の最初から最後まで、その裏に潜み動いていたにもかかわらず、大石初め赤穂の浪人たちにも、また世間にも覚られることのなかったその秘められた思惑を「謎手本」と洒落て、『忠臣蔵』の物語の様相を書き換えようとした作品なのだろうが・・・。そんな作者の作意&作為が見えてしまって物語としては弱い。

 「謎」のネタとして投入された「幕府と朝廷間の確執」とか「福島正則が秘蔵したといわれる家康の密書」についても十分に描き切れておらず、『忠臣蔵』を書き換えるどころか、庶民が愛する従来の『忠臣蔵』の物語を御しきれず呑み込まれてしまっているように見える(その「庶民の愛する『忠臣蔵』こそ、作中の“ある筋”の意図によるもの・・・といいたいようだが)。

 また、内蔵助たちのあまりに現代的な口調はおいておくとしても、明々快々と開陳される登場人物たちの思考や言動ばかりを連ねてドラマを展開する語り口には時代味がなく、巨大権力 vs. 窮地に立った中小企業!的な企業小説でも読んでいるような気分になる。

 『忠臣蔵』を書き換えようというなら、それなりの圧力のある物語を読みたかった。


  

FC2 Blog Ranking

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

2019-12-07

決算! 忠臣蔵

『決算! 忠臣蔵』 監督:中村義洋

 なによりまず、この時期に『忠臣蔵』の映画を見られるのが嬉しい。

 今朝ちょうど、三田村鳶魚翁の本で、火消しの演習に際して『一つ間違えば手討ちにでもしそうな様子』で薙刀の抜き身を携え号令をかける長矩公の話を読んだとこで、冒頭から「あははぁ、これはまさに」とニヤニヤできたのも良いめぐりあわせだった。

 「病身の老父」のイメージしかない矢頭長助(岡村隆史)が算盤と帳面を手にイキイキと働いていて、何かもうそれだけで不思議に可笑しい。でも、お父さんがそんなに元気じゃ、右衛門七は?とか心配したけど、やっぱりお父さん、討ち入りを前に無念の死を遂げるのね。その長助の死にざま・・・しまり屋でいつも徒歩の長助があの時ばかりは駕籠を呼んだ、その心を思うと泣ける。

 堤さんの内蔵助、軽みと重みのバランス、ユルさと熱さの塩梅が絶妙。そして、山田風太郎の短編「俺も四十七士」では、「どうやってもスポットライトから外れてしまう男」だった貝賀弥左衛門が、算盤のできる男として時に頼もしく見えてしまうのも味わい深い。

 気持ちよく泣き笑い、身も心もスッキリと清々しく映画館を出た。が、どんな紆余曲折があったとしても、この後起こることは決まっているわけで、私も含めて帰途につく人たちの目や胸には、きっとそれぞれに討ち入り当夜の光景が浮かんでいる。やっぱり『忠臣蔵』 強いよなぁ・・・。


 ところで、内蔵助が吉良邸で打ち鳴らしたのは山鹿流の陣太鼓じゃなくて銅鑼だったの?


 

FC2 Blog Ranking

theme : 映画感想
genre : 映画

2019-11-23

夜行 : 森見登美彦

『夜行』 森見登美彦

 『春風の花を散らすとみる夢は
     さめても胸の騒ぐなりけり』

 夜行・・・永遠に続く夜。


 森見登美彦の物語は風景の中から生まれる。

 森見登美彦が語る怖い話は、忘れ難い大切な人、過ぎ去ってしまった時間、ここではない何処か、目を背けつづけてきた胸をざわめかせるもの、本来共にあるべきはずなのに私たちが生まれながらに失ってしまった何か・・・そういった手の届かないものたちへの憧れ、怖れ、愛しさ、悲しみ、喪失感を湛えて、ひどく切ない。

 森見氏の中にはそういう想いを掻き立てる風景が、夢も現実も含めて沢山、沢山、しまわれているのだろう。

 そして、森見登美彦の物語は、実際に見たこともないのに胸をしめつけるように懐かしい私の中の風景に根をおろし棲みつく。




FC2 Blog Ranking

theme : 読書メモ
genre : 本・雑誌

プロフィール

やぶからねこ

Author:やぶからねこ

FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

ブログランキング
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村 漫画ブログへ
カテゴリー
最近の記事
最近のコメント
最近のトラックバック
検索フォーム
カレンダー
03 | 2020/04 | 05
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
魂に喰い込んでます
月別アーカイブ
Powered By FC2ブログ

Powered By FC2ブログ
ブログやるならFC2ブログ